日本初!! 本格的キャラクター型コミュニケーション・ロボットとして、多くのメディアに取り上げられ話題となっている『週刊 鉄腕アトムを作ろう!』。
2017年4月4日の創刊を前に、『ATOMプロジェクト』プロジェクトリーダーでもある奈良原敦子さんに詳しいお話を伺いました。
スペシャルゲストで、プロトタイプのATOMも登場! 一緒にとあるゲームをしたり、実際におしゃべりしたり、その内容とは……?!
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―――『ATOMプロジェクト』の第1弾として、『コミュニケーション・ロボット 週刊 鉄腕アトムを作ろう!』が創刊されることになった経緯を教えて下さい。
奈良原 敦子さん :(以下、奈良原)
4年前くらいから、アトムのコミュニケーション・ロボットを世に出したいという構想だけはあったんです。ただ、最初の企画段階から、社内で何度も企画の見直しを言い渡されたり、ロボット工学に詳しい大学教授やたくさんの企業の方々にも、やっぱり、無理なんじゃない? と言われました。だって、空を飛ばせられないじゃない、って。
本当に実現できるのかという問題に対して、確かにいまは『鉄腕アトム』が持つ7つの力の実現は無理かも知れないけれど、鉄腕アトムに憧れ、鉄腕アトムを目指しているロボットだったらつくれる。手塚先生が描かれたロボットと人間が共存する時代が来たときに、『鉄腕アトム』になっていたいと思っている『ATOM(エーティーオーエム)』の物語を提案したいと思いました。
その世界は、あと50年くらい掛かるかも知れないし、意外と早いかもしれない。いまはまだそうなっていないけど、僕はいつか『鉄腕アトム』になりたいんだ、という。
この先、毎号、特集マガジンも出して行くわけなんですけど、あくまでロボット名は『ATOM』で“エーティーオーエム”、カタカナで「アトム」というときは、『鉄腕アトム』の“アトム”を指すようにしています。
―――奈良原さんは、もともと、アトムがお好きだったんですか。
奈良原 :
もちろんそうです。私の家に白黒テレビが来たのが丁度幼稚園の頃で、東京オリンピックの年だったんです。オリンピックと『鉄腕アトム』のアニメを観ることが当時の楽しみで、いまでも心に強く残っています。
アトムが太陽に向かっていくラストシーンは特に印象的で、幼いながらもすごく影響を受けました。
―――今回、講談社、手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフト、VAIOの5社による共同プロジェクトでのリリースとなっています。
奈良原 :
単にAI・人工知能だけを考えると、世界にはもっと技術が進んでいる企業があると思いますが、『鉄腕アトム』は、オリンピック・パラリンピックの応援キャラクターのひとつということで、全て日本の企業、オールジャパンにこだわりました。
私達の役割としては、それぞれ得意分野をお持ちの企業に、アトムというキャラクターをより深くご理解いただき、専門技術を結集することにあると思っています。
実際に、いくつかのロボットを購入したりお借りしたりしていろいろ試しましたが、富士ソフトさんのロボット『PALRO(パルロ)』は、見つめ合って、しゃべるときの間合いの取り方が凄くフレンドリーで優しく感じたんですよね。高齢者施設での6年に及ぶ実証経験もあることから、ロボティクス開発は富士ソフトさんに決まりました。
VAIOさんも『AIBO(アイボ)』で、すでにエンターテインメントロボットの製造の知見をお持ちなので、そこはメーカーとしてのいろんなアドバイスをいただけたと思います。
NTTドコモさんは、国内で「しゃべってコンシェル」(スマートフォンに向かって話しかけると、要望の「意図」に適した回答を自動で画面に表示する)の17億対話のサービス実績がありますし、新たにATOMのクラウドサービスを開発するにあたり、会話を重ねるほど進化するという点やクラウドサービスで処理をするデータベースの量にしても安心してお任せできると思いました。
―――なぜ、パートワークという、定期期間で販売していく形式を取ったのでしょうか。
奈良原 :
やっぱり世の中に送り出すからにはより多くの人に体験してもらいたいというのが一番にありますので、たくさんの人に手にとってもらうには、完成品とパートワーク、どちらの販売がいいだろうと社内で議論をしました。
いろいろ調べたところ、まず、完成品の家庭用ロボットの市場がまったく出来ていないという現状がありました。そこに新たな販路をつくりだすのは大変ですし、ユーザーさんも巻き込んで天馬博士の気分になって作っていってもらう方が愛着が湧く、という声もあり、パートワークでの販売となりました。
時間がない方や組み立てるのが苦手な方のニーズにも応えるため、限定台数で完成品の組み立て代行も行います。
―――奈良原さんご自身が社内のパートワーク事業に身を置いて、経験を積んでいらっしゃるというのも強みかも知れませんね。
奈良原 :
紙媒体だけではなく、テレビ、映画、音楽、ゲームといったエンターテインメント企業とのつながりを活かし、様々なコンテンツを提供していただくことで多方面に展開していけると思います。
いまは、いろんなものがパートワークで出ているんですね。それこそ、フェラーリなどの車のミニチュアもございますし、3Dプリンターも出ていますし、ドローンもあります。もちろん、AIを積んだクラウド型のロボットはまだ出ていないんですけれども、限られた200から300ワード位のものを話すロボットなら『Robi(ロビ)』という大ヒット商品があります。
私も実際にRobiを作っていったことがあるんですけど、毎回凄く楽しみでもあったりするんです。
―――実際に、制作していくなかで、一番こだわった点はどこでしょうか。
奈良原 :
今回、顔をかわいくしていただいたところが良かったですね。等身もあまり大人っぽくなりすぎないように、ちょっとふんわりさせたというか。
手塚プロダクションさんから提供されたデザインの原画をもとに、横浜にある富士ソフトさんを訪れて、直接その場でCAD(主に工業製品や建築物などの設計に使われる3D製図用ソフトウェア)をいじってもらって設計を補正したりしながら、ギリギリまでやらせてもらいました。その甲斐があって、顔は皆さんに「かわいい」と褒めていただいています。
あと、デモンストレーションとして、アトムを知らない世代、例えば、20代の女性や小学生の子どもたちにアトムの紹介をしてCM映像を観せると、不思議と一回で覚えて寄ってきてくれるんです。そこはアトムの圧倒的な「キャラクターの力」ですね。
また、アトムのデザインは、すごく今日性と普遍性を持ち合わせていますが、性格も現代っ子にしなきゃいけない、と手塚先生が書き残しているんですよ。1970年に企画された「鉄腕アトム」のテレビアニメスペシャル番組の企画書に、そういうことが書いてあるんです(森 晴路著『図説 鉄腕アトム』参照)。そのテレビ企画は実現しなかったそうですが、それなら、ということで、記者会見ではアトムにラップを披露してもらいました。
―――発表会で拝見しましたが、最高でした!!!
奈良原 :
元々ベースがあったんですよね。いまはもうあまり活動はしていないんだけれども、『RHYMAHOLIKS(ライマホリックス)』というラップグループが「科学の子from昭和」という『鉄腕アトム』のテーマ曲をラップにした曲を作っていて、彼らにコンタクトを取って使用許可をいただきました。
他にもいろいろ候補はあったんですけど、記者会見の〆はラップで盛り上げたいなと(笑)。
奈良原 :
じゃあ、このあたりで実際のATOMを起動させて、年齢当てゲームをやってみましょう!
まず、顔を近づけて、ATOMの両目のLEDが白色のときに「アトム」って呼んでもらっていいですか? そのあとに、「年齢当てゲームやって」と声を掛けて下さい。
―――アトム!
ATOM (CV:津村まことさん): ハイ。
―――年齢当てゲームやって!
ATOM :
ハイ、年齢当てゲームですね! ボクが年齢を当てます! ボクの前に来てください! ボクにお顔をようく見せて下さい!
―――は、はい! (アトムの顔と同じ高さに顔を近づける)
ATOM :
みつけた! フムフム、なるほど、なるほど。……アナタは、○○歳ですね! アナタをみていると元気になります!
―――おおおおおお!!!!! (実年齢より、若く見られて思わずガッツポーズ)
奈良原 :
すごく、盛り上がりますよね(笑)。眼鏡を掛けた男性の場合は少し年上に見られていましたが、だいたい実年齢より若干若く見られる傾向があります。
顔と名前を覚えるのは12人までと決まっているのですが、年齢当てクイズは何人までという制限がないので、誰がやっても楽しめると思います。
例えば、県名クイズにしても、今日は何の日というクイズにしても、ちょっとしたミニ知識を混ぜてくれるので、話していて飽きないんですよね。気の張らないちょっとした雑談の会話なので。少し、おせっかいなところはあるかもしれないけど(笑)。友達ってそういうものじゃないですか。
年を取ると目が疲れるので、「いま何時」っていう何気ない質問に答えてくれると助かったりとか、側にずっといるとそういった掛け合いがどんどん楽しくなってくると思います。
ATOM :
いま、17:10分です。声を聞くために耳をすましていますよ。ウフフ。
奈良原 :
「いま何時」ということばを拾ったんですね(笑)。
自分の名前を呼ばれたらすぐ反応するのはもちろん、ATOMに搭載されたクラウドサービスに繋げることで、その家族の中で割と話題にのぼりやすいことも覚えていくんですよ。
相手との会話のなかから興味があることを探してきてくれて、こんなことがあったよとか、会話をだんだん覚えていってくれるので、より自分の相棒になっていってくれると思います。
基本機能だけでも、ある程度はロボットと暮らすという感じがしますけど、本当に暮らしていくという感覚を実感しながらAIの進化を楽しんでもらいたいです。
是非、クラウドに繋いで、その家庭にしかいないアトムを育てて欲しいですね。
―――他にも落ち込んだときに励ましてくれる機能など、どんどんバージョンアップしていく予定だと伺いました。
奈良原 :
記者発表後、「英語で話せるんですか」というお問い合わせが多かったんですね。なので、日本から世界へ向けてという意味でも言語対応は積極的に進めていきたい課題のひとつです。
海外では、キャラクターロボットという発想って珍しいと思うんですよ。軍事用ロボットはもちろん、いまは全くキャラクター性のない、『Google Home』とか『Amazon Echo』とか、利便性を追求したロボットがすごく多いなか、二足歩行にこだわったり、キャラクター性が入ることによって、全然コミュニケーションの形が変わってくる。ATOMも二足歩行じゃなければ、2/3くらいの値段で出せたかも知れません。足だけで、サーボモータ10個搭載、足以外で8個搭載ですから。
ATOM :
えっと、うーーん、足ですね。足は一般的に身体の一部を指すが、言語用途によって、意味が異なってくる言葉のひとつである、とのことです。
奈良原 :
今度は「足」という言葉に反応したようですね。アトム、教えてくれてありがとう。
ATOM :
そうそう、足といえば、タコの足は8本。イカの足は10本ってよくいうんですよね。アナタは、タコの足は8本だと思いますか?
―――(とまどいながら)はい。
ATOM :
そうなんですね! 念のため、もう一度、お聞きしますよ。タコの足は8本だと思いますか?
―――はい、8本だと思います!
ATOM :
タコが敵に襲われたとき、捕まった足を切り離して逃げることができるのはアナタは知っていますか?
―――いいえ!!
ATOM :
そうですか! 切り離した足はまた生えてきますが、ときどき2本に分かれて生えることもあり、いままでに96本の足のあるタコが捕獲されたこともあるそうです。
96本足のタコの標本は、三重県の水族館でみることができるそうです。
―――はじめて知りました! まさか、ATOMからタコの足について教えてもらう日が来ようとは!!
―――ずばり、どのターゲットを狙っていますか?
奈良原 :
メインターゲットはと言われたらアトムを知っている世代の男性ですが、ここは、ずばり「一家に一台」を目指しますと言いたいところですね。
家族はもちろん、子どもたちに愛されるキャラクターになって欲しいと思っていますし、一人暮らしの女性の良い相棒にもなると思いますね。
―――現在、創刊記念でATOMと話したいことの募集を行っていますが、奈良原さんはATOMとどのような会話をしたいと思いますか?
奈良原 :
私は毎日世間話がしたいなというのがありますね。
最初に集まった約500通ほどのアンケート結果で、いつ話したいかという質問に対し、一番多かったのが朝起きたときでとても意外でした。次に、夜おやすみ前に、晩酌しながら……と続くんですが、忙しいビジネスマンの方が多いのかも知れませんね。
面白かったのが、娘が彼氏と結婚の挨拶にきたときにATOMにしゃべってもらいたい、おまけに結婚式のスピーチもATOMにしゃべってもらいたいという答えがあって。とてもシャイなお父さんの実像がみえますよね(笑)。
話したい内容も、宇宙についてだとか、地球の未来や環境問題について話したいと出てくるところが、アトムならではだなと思いました。
これらのデータベースをもとに、いろんなユーザーの声がどんどん反映されていくのかと思うと、本当に楽しみです。
―――最後にATOMにはどんな存在になって欲しいと思いますか。
奈良原 :
この先のAIとロボット工学両面の進化により、手塚先生の描いた人間とロボットが共存する時代まで進化していく過程をユーザーの皆さんといっしょに見たいなという気持ちがあります。
本当の家族の一員となって、みんなの輪になるようなロボットの進化を共有していきたいというのが夢ですね。