手塚治虫デビュー70周年を記念し、誕生日である11月3日(木・祝)午後9時より、NHKFMにて「手塚治虫 自身が語ったルーツと音楽」が放送されます。
詳しくはコチラ⇒11/3オンエアFM番組にて手塚治虫の肉声がたっぷり紹介されます!
「マンガ」「音楽」「SF」の3つのテーマに沿って、NHKに複数保存されている手塚治虫の出演番組から自身の声を紹介。豪華ゲストの証言を交えながら、人物像や創作の秘密、音楽とのかかわり、魅力に迫るとのことで必聴です!
虫ん坊10月号のコラムでも、手塚作品における音楽表現について取り上げました。こちらもお読みいだだくと、より楽しめるかもしれません!
詳しくはコチラ⇒手塚マンガあの日あの時第48回:手塚マンガの音楽表現を斬るっ!!
また、11月9日にはCD-BOX5枚組で「冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集」がリリースされるなど、音楽の秋到来?!
オススメデゴンス! でも、この波に乗っかり、胸アツ系音楽ものマンガ『てんてけマーチ』をお届けします!!
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『タイガーブックス8』あとがき より抜粋)
「雨ふり小僧」(第3巻)「はなたれ浄土」(第8巻)「てんてけマーチ」(第5巻)「いないいないばあ」(第7巻)は、柳田国男氏や、そのほかの著者の民話から変形させた作品で、もとの話をご存じのかたは、その手塚流味つけをご賞味ください。
手塚治虫は「音楽」を題材にした作品を数多く残していますが、今回おすすめする「てんてけマーチ」も、そんな「音楽もの」の一つです。
三兵は、和ダイコの名手だった祖父から、後を継いでタイコ打ちになるよう命じられます。お国のために兵隊になろうと思っていた三兵は、最初は逃げていましたが、ある晩枕元にあらわれたタイコの精霊に懇願され、しぶしぶながら練習を始めました。やがて時は過ぎ、三兵は立派なタイコ打ちとなり、もう兵隊になる気はなくなっていましたが、皮肉にもそんな彼の元へ届いたのは、一通の召集令状でした。
この「てんてけマーチ」は、さまざまなジャンルの顔を持った作品です。タイコの練習に打ち込む三兵の姿は「根性もの」のようであり、女性の姿をしたタイコの精霊との関係は「民話もの」や「ラブロマンスもの」のようでもあります。そして、三兵を襲う戦争の悲劇は、明らかに「反戦もの」です。手塚治虫が、この短編の中に様々なシチュエーションを持ち込んだことによって、私達読者は、あたかもタイコを狂言回しとしたオムニバス作品を読んでいるかのような感覚にとらわれます。そして、めまぐるしい展開を見せる作品の根底を、変わることなく流れているテーマが「音楽の素晴らしさ」であることにやがて気づくことでしょう。
それと、重要なテーマがもう一つ。それは「家族のつながり」です。この作品、三兵の息子が物語に絡むことで予想外の展開をしていくのですが、音楽、そして家族の素晴らしさを高らかに謳いあげたエンディングは、タイコのリズムのように、心弾むような感動をきっとあなたに与えてくれます。
戦争がはじまり出征した三兵は、戦場で偶然原住民のタイコを発見します。タイコ打ちとして素通りはできなかったのでしょう。敵がいつ攻めてくるかわからない状況にもかかわらず、タイコを打ちはじめます。
戦地に来てからタイコに触れられていなかったのもあり、力いっぱいタイコを打つ三兵。
打ち終わって、外に出た瞬間、なんと国を掛けて争っている敵兵から「ブラボーッ」と拍手喝采の嵐で出迎えられます。
実は、終盤、三兵はもう一度、全く違うシチュエーションではありますが、異国の地で拍手喝采を聞くことになります。
どちらのシーンにも、共通している点がひとつ。
「音楽に国境はない」。
この普遍のメッセージが深く強く込められています。
「鳴れ!! 鳴れ!!
鳴りひびけ!!」
ネタバレになってしまうので多くは語れませんが、物語の全てを集約していると言っても過言ではない三兵のセリフです。
本編未読の方は是非とも御一読いただきたいと本当に心からオススメデゴンスしたい本作。
戦争を体験した彼だからこそ、ニューヨークの空に高らかに鳴りひびくタイコの音と共に、よりいっそう気持ちが宿り、胸にも熱くひびく言葉となっています。