2015年7月に発売された『手塚治虫キャラクターのクロスステッチBOOK』(辰巳出版)。注目のクロスステッチデザイナー・大図まことさんによって、おなじみの手塚キャラクターが懐かしくて新しいクロスステッチとして表現され、見ているだけでなんとも楽しい図案集となっています。
虫ん坊2015年7月号 クロスステッチデザイナー 大図まことさんインタビュー!!
虫ん坊では今月号より新企画として、実際に“やってみた!”シリーズがスタート!
第1回目のお題は「クロスステッチ」に決定。作業は1日1時間、6日間の間で作成することというルールのもと、手先がまったく器用ではない初心者3人が即席で「手芸部」を結成、それぞれ好きな手塚キャラクターに挑みます!
物語はここから始まるのだ—— by手塚治虫
オオヤマ
虫ん坊スタッフ。手塚作品で一番好きな作品は『七色いんこ』。
今回は同作品から「いんこ」にトライ。
リーダー
エクセルマスター。4月に誕生日を迎えた『鉄腕アトム』の「全身アトム」に挑戦。
カニミソ
虫ん坊スタッフ。手塚作品では『火の鳥』が一番好き。
『ユニコ』40周年を記念して、「チャオ」をチョイス。
まず、今回クロスステッチをはじめるにあたり、著者の大図まこと先生から特別にアドバイスを頂戴しました。
<大図まこと先生より「手芸部」の皆さんへ>
クロスステッチは数ある刺しゅう技法の中でも一番簡単だと言われています。
とても地味な作業なので一度に全部仕上げようと思うと疲れてしまうかもしれません。
疲れたら手を止めて休みましょう。
初心者の方はまず1つ小さな図案を選んで実際に本を参考に刺しゅうしてみるのが良いかと思います。
白いキャンバスが糸でだんだん埋まっていき形になっていく様子を見るとなんともいえない達成感が味わえます。
これは自分でやった人しかわからない楽しみです。
刺し方は簡単、×で布目を埋めていくだけ。難しいことは1つもありません。
さあ一緒にクロスステッチを楽しみましょう!
貴重なアドバイスを胸にいよいよ部活動がスタート!!
——あらかじめ揃えた基本の道具をセッティングするところからはじめるもクロスステッチ専用の布を刺しゅう枠にはめるのに手こずるなど、準備段階ですでに20分が経過……。
: 布に刺す時の糸の本数って何本が基本なんですかね?
: 本数によって、太さが違ってくるから仕上がりや雰囲気が変わるけど、図案集では3本取りを基本に仕上げているみたいですね。
: ここは基本にのっとって、3本からはじめよう。まず、はじめに切ってから1本ずつ引き抜いて3本揃える。
: 針も糸の本数に合わせて変えるみたい。普通の針と違うのは、先がとがってなくて丸みがありますね! これなら、指に刺さらない!
: 針に糸を通す時に2つ折りにして平らにつぶしてからって書いてあるんですけど、できました?
: すみません、糸通しを使ってしまいました!(※初心者丸出しです)
: 刺しはじめは玉結びがいらないってことだけど、刺した時に裏側で糸をちょっと残してあとは巻きこんで行けばいいんだよね。
: はい、2〜3cm残して巻き込むみたいです。
: あ!!
: どうしたんですか?!
: からまった〜〜〜!!
: 早速ですね(笑)
: それ、糸が長すぎるんじゃないですか(笑)。あまり長いと絡まりやすいから、30〜40cmがベストみたいですよ!
※以降、多発するこの糸が絡まるという現象を通称「絡まリング」と呼び合うことに。
<POINT!>
・使用する糸はあまり長いと絡まってしまうので30〜40cmに切って使うのがベストです。
・×の糸の重なりが一定方向になるように注意して。バラバラだと完成したときに見た目が悪くなります。
・どこから刺しゅうしても構いませんが図案を見て色が密集しているところから刺しゅうすると良いです。
・小さいモチーフの場合は一色終わったら次の色を刺していくと効率よくできます。
・糸を留める際はギリギリの部分で切ってしまうと、裏が絡まったりせずにきれいに仕上がります(※『手塚治虫キャラクターのクロスステッチBOOK』P.9の24の写真を参照)。
: 実際、刺してくと、実物は予想より小さい感じですね。しかも、表ばかり見ながら刺すせいか、裏側がどうなるのか良く分からない!
: 裏側は見えないから、多少縫い目が汚くても大丈夫なんじゃないの?
: 裏側も本来は縫い目が整っていて綺麗みたいですよ! あと、2段目に行く時に訳が分からなくなりませんか? 順番に刺していくと、糸が抜けちゃうんですよ。
: そうそう! 順番に刺して行くと、2段目になった時に同じ穴から針を入れて出すことになってしまうから、糸が抜けるんだよね。
: 確かに。別のマスにずらして刺しているけど、2段目から繋げ方が適当になって一気に自己流になっている気がする……。
<POINT!>
2段目から刺しゅうする時に抜けてしまう場合は、すぐ上ではなく、隣の穴にずらしましょう。
確かに初心者の人にはわかりづらいかもしれませんね。
重なる糸が一定方向になるように刺しゅうするということがクロスステッチの基本です。
針の進み方は使用する図案によっても変わってくるので一概にどれが正しいとは言えませんが裏を渡る糸が短くなるようにと考えると分かりやすいと思います。
針の進み方を考えながら刺すのもクロスステッチの楽しみの1つです。
: あーーーー!!!!
: どうしました?!(※本日2回目)
: アトムの腕の位置を刺し間違えた!! あと、緑色のベルトのところも指定の色を間違えて肌色で刺してしまった……!!
: そのまま糸を取り外してやり直しじゃないですか?
: いや、大丈夫。このまま進めて、刺し間違えた片腕は腕を上げるポーズに変えてアレンジしてみようと思う。
: まさかのアレンジ! 斬新ですね!!
: リーダー、なんだかんだ言って、だいぶアトムの形になってきているじゃないですか! もう、アトムだって分かりますよ! 胴長ですけど……。
: 間違いからのアレンジもきくってことでよしとしよう。(※大図先生、ごめんなさい)
最初はなかなか進まなくてキツかったけど、進めていくうちにキャラクターの面影が見えてくるとすごく楽しくなってくる。
: それに、もっと慣れたらどんどん早くできそうな気がしますね。
——初日、あっという間の60分が終了。
——引き続き、前回の作業を思い出しながら図案を元に進めていく。
リーダーはこの日はおやすみ。
: 刺し終わりの時、玉留めはしないんですよね。
: 裏に渡っている糸の下に針を通してくぐらせるみたいなんだけど、やっぱり、裏側が汚いと刺しにくい……。方向を刺し間違えて一旦糸を抜く時も抜きにくくなるし。
: あ、まずい! 糸の本数、3本取りで統一しなきゃいけないのに、いつのまにかサングラスの部分を2本取りで刺していました!
: 集中しているとついやりがちだよね。
: どうりでスカスカだと思いましたよ!
: チャオの頭の部分だけど、顔の周りを右側から縦に1列ずつ刺していったのはいいけど、このまま一周したら、一番左下まで行った時に飛ばしてからしか頭上に戻れない気がする。
: 本当だ! どうやって進めていくのが正解なんですかね。
: 顔の部分を挟んで横に1列ずつやっていくべきだったのかな。
: 図案表の針の進め方を見ると、横1列に刺していって、一旦途中で刺し終わりにしていますよ。パーツに分けて刺していくようです。
: なるほど! じゃあ、左下まで行って、一度刺し終わりにしよう。
: どこから刺しはじめてどこで刺し終わるのかも重要なのかもしれない。きちんと考えなくてはいけませんね。
<POINT!>
色が飛び飛びで配色されている図案の場合、裏に渡る糸がどうしても長くなってしまうのでぐちゃぐちゃになりがちです。
離れた所にある場所に同じ色を刺しゅうする場合は面倒でもその都度糸を始末して新たに進めると綺麗になると思います。
チャオの左右の耳については一番上の段で黒色が6マスも離れているので
片耳ずつ分けて刺しゅうすると裏に糸が渡らず綺麗です。
: ああ、15分でも良いから作業時間を延長したい……。
: 全然、時間が足りなく感じますね!
——ほどなくして60分終了。
——リーダーも合流、再び作業開始。
: 糸を刺していて思ったけど、力が強すぎるのか、×(クロス)の部分が凄く目立つんだよね。あまり見えない方がふっくらしてかわいらしく見えるじゃない? 力を加減してやわらかめに刺していった方が良いのかなあ。
: 「基本の刺し方」(※『手塚治虫キャラクターのクロスステッチBOOK』P.6〜7に載っています)を見ると、糸の引き加減が同じになるように意識しましょうって書いてありますね。
: あとは、布をすくって縫うように刺すのではなくて、布の表・裏に針を出すたびに糸を引き抜きながら刺すと良いみたいです。
: そっか、刺して引く時の力が強すぎるのかもしれない。糸の本数でも印象が変わるけど、力の加減でも違うってことだね。
——それぞれ、糸が絡まったり、刺す箇所を間違えたりしながら刺し進めること30分が経過。
: できた!!
: リーダー、早い! 手が間違っているけど……。
: 次の作品は文字にも挑戦したいから、アトム繋がりで色数の少ない天馬博士にトライしてみよう。
——手を動かしながら、架空のクロスステッチマンガについて盛り上がる3人。
: クロスステッチで刺しゅうを縫う人を “クロスステッチャー”というらしいけど、呼び方が格好良いよね。
: そういえば、クロスステッチを題材としたマンガってまだないですね。
: 目指せ、伝説のクロスステッチャー的なね。
: マンガ原作と作画担当に分かれているみたいに、図案を描く人と刺しゅうを縫う人に分かれている設定にしても面白いかもしれない。(※実際、そうみたいです)
: おまえが図案を作り、俺が縫う! 最高のコンビだ!!
: まるで、『バ●マン』みたいですね(笑)
: うおおおおおおおお!(※突如、マンガの主人公風に叫びだすリーダー。でも、動きはスローリーです)
: (笑)
——そうこうしているうちにいよいよ他の作品も完成!
: 予想以上にかわいい!!
: 慣れなくて大変だった分、達成感があるよね!
: はじめは図案を見ながら刺しゅうすることで精一杯だったけど、やっと、刺す時の力の強さを均等にできるようになった気がする!
——確かな手応えを感じながら、60分が終了。
——残すところあと2日。
: 折角だし、抜きキャンバスを使って専用の布以外にも刺しゅうしてみたいよね。
: 今日着ている無地のカーディガンのワンポイントとして、スパイダーを刺しゅうしてみます!
: (抜きキャンバスの生地を手に)専用の布と違って、糊がきいていて生地がすごく固い!
: 図案より大きめに切って、しつけ糸か両面テープで留めるって書いてありますが、留める時に曲がらないよう気をつけないといけませんね。
——無言で作業に没頭し、30分経過。
: できた!!
: なぜ、注射器……。
: あーーーーー!!!!
: どうしたの?!
: 絡まリングしました……。絡まったまま、ほどけないです。やり直しですね。
: だいぶ進んでから間違えた時は、そのまま抜いていくよりハサミで切ってやり直した方が早いかもしれないね。
: ある程度進めて、後から間違いに気づいてもすぐ戻れないし、糸が結ばれてほどけないと取り返しがつかないというのが怖いです。気をつけないと!
——遂に最終日。
その後、順調に文字の部分が完成したリーダーと“抜きキャン”こと抜きキャンバスに大苦戦の2人!
悪戦苦闘の模様をご覧ください。
<POINT!>
刺し終えた後に固い生地をやわらかくするため、霧吹きで濡らし、
上下、左右、抜きやすい所を選んで、端から1本ずつ丁寧に抜いていきましょう。
抜きキャンバスを使用する場合でも刺しゅう枠に挟むと、生地がゆがまなくなりますよ。
——怒涛の6日間を乗り越え、無事完成した作品は、折角なのでくるみボタンを使ってバッジにしたり、メモ帳に貼ってオリジナルグッズにしました。
: 実際にクロスステッチをやってみて思ったのは、昔のような、おばあちゃんが縫いものをしているイメージではないなってことかな。刺しゅうを縫っているというよりは絵を描いている感覚に近いような気がする。
: 確かに、図案がドット絵なのもあって、すごくポップに感じます。親しみがあって、とてもかわいいですよね。どんどん、色が入ってきて、キャラクターの形になっていく過程がたまらないです。
: 例えば、みんなでアトムを絵で描くとしたら個性もでるからバラバラになってしまうけど、クロスステッチだったら、誰でも同じ絵柄で簡単に作ることができるよね。
: 1年間くらい時間を掛けて、『ブラック・ジャック』の表紙のような大作を作るのも良いなあ。
: 有言実行でお願いします!!!
——後日、完成品を見た大図先生から感想が届きました。
みなさん完成おめでとうございます!
とてもかわいくできたなというのが第一印象です。
よく見ると糸の重なる向きがちぐはぐだったり
糸の引き具合が均一ではなかったり少し気になるところはありますが
慣れてくるとそういういわゆる”味”的な物も
出なくなって来てしまうので
僕は迷いながらも頑張って作ったこの作品がとてもかわいく見えます。
スパイダーのモコモコした雰囲気とか最高じゃないですか!
『手塚治虫キャラクターのクロスステッチBOOK』には小さな図案から
大きな図案までたくさん掲載されているので虫ん坊読者の皆さんにも
是非チャレンジしてもらえたらなと思っています。
——素敵な感想をいただき、すっかり”味”をしめた3人。
クロスステッチャーへの道はまだまだ続く……!?
『手塚治虫キャラクターのクロスステッチBOOK』
は辰巳出版より好評発売中!
4月26日〜旭屋書店天王寺MIO店(@asahiya_mio)にて掲載作品を一挙に展示中!!