8月22日(土)ダイエー成増店で、手塚プロダクション漫画部OBによる「マンガの描きかた教室」が開催されました。このマンガ教室は、流通大手のイオングループが今年の4月に開校した、イオン放課後教室の一環で、”子どものカラダとココロとアタマを育みミライを拡げる”をコンセプトに、学童保育と総合学習をプラスした新しいスタイルの教室です。
講道館や日本体操協会、日本フェンシング協会、日本レスリング協会などが協力して、学校では体験できないユニークなプログラムが展開され、そこに手塚プロダクションも参加し、「マンガの描きかた教室」を実施する運びになったのです。
講師は手塚プロダクション漫画部OBの、三浦みつる先生、堀田あきお先生、石坂啓先生で、いずれも手塚治虫のアシスタントを経験した後、プロのマンガ家として活躍されています。未来の手塚治虫を目指す原石を磨くために、快く講師を引き受けてくださいました。
さて、「マンガの描きかた教室」ですが、事前にOB先生たちと打合せを繰り返した結果、参加者の年齢が低いことも考慮して、マンガ家のアシスタント体験に決まりました。努力なくしてマンガ家への道は開けず! ここはキッチリ基礎を学んで将来に役立ててもらおうと、少々厳しく、ベタ塗り→ホワイト修正→スクリーントーン貼り→ペン入れを体験するカリキュラムを組みました。ここで使用する教材用に、三浦先生が事前に原稿も描き起こしてくださいました。
そして迎えた当日、午前の部には小学校4年生が6名、午後の部には小学1年生から3年生7名が参加し、1講義90分の教室がはじまりました。
設定は、都内某所にある三浦みつるプロダクション。三浦先生がこのプロダクションを主宰するマンガ家で、堀田先生と石坂先生がチーフアシスタント、参加した子どもたちは新米アシスタントです。新米アシスタントの最初の仕事はベタ塗り。堀田チーフアシスタントの実技指導を受けた後、三浦先生から原稿に赤鉛筆でアトムの頭やレオの耳、サファイアの髪などベタ塗りする場所を指示されて、自分の机に戻って作業します。
ちなみに、今回使用した画材は株式会社G-Tooの協力により、プロのマンガ家が使用しているものと同じ道具を提供していただきました。
ベタ塗りが終わると原稿を手に三浦先生の元へ。そこでチェックを受け、はみ出した箇所を青鉛筆で指定され、ホワイトでの修正作業に入ります。
この赤鉛筆と青鉛筆の使い分けは、赤色は印刷すると黒く写り、青色は印刷機で拾われず実際のマンガになったとき見えなくなることから、指示出しに使われていると教えられ、ちょっとした業界の裏知識に子どもたちも感心するばかりでした。
ホワイト修正した原稿を先生にチェックしてもらい、今度はスクリーントーンの指示をもらいます。アトムのブーツやレオの耳にトーンを貼り、はみ出した部分をカッターで丁寧にカットするのですが、これが一苦労。カットしやすいように原稿をクルクル回すことがコツだと教えられ、新米アシスタントたちは真剣に取り組んでいきます。
そして最後の課題が、空いているコマに自分の好きな絵を描くこと。鉛筆で下絵を描いて、アイシーのコミックペン先とブラックインクを使ってペン入れに挑戦です。三浦先生から、ペン先にインクのつけ方、描くときの力の入れ具合、原稿を汚さないための手の置き場所など細かく教えられ、はじめて使うペンとインクに緊張ぎみの子どもたち。石坂チーフアシスタントの優しい励ましの言葉を受けて、動物だったり、ロボットだったり、妖怪だったり…それぞれのオリジナルキャラクターを描き込んでいきます。
そして完成した原稿を手に、最後は先生の机に座って記念撮影。マンガ家アシスタントの1日体験の終了です。ずっと真剣な顔をしていた子どもたちも、記念撮影になってやっと笑顔がこぼれました。
満足げな子どもたちに今回の感想を聞くと、「マンガを簡単に読んでしまうけど、描くのにこんなに時間がかかって大変だと思わなかった」、「これからはマンガのスミからスミまで見るようにします」など、マンガ制作に携わるものを泣かせる言葉が次からつぎへと発せられました。
終了のタイミングを見計らって、見学していたお母さんたちから色紙が差し出され、急遽マンガ家先生たちによるミニサイン会もおこなわれました。
手塚プロダクション漫画部OBの三先生にも終了後の感想を聞くと、「ちょっぴり手塚マンガのDNAを伝えられた。これからもこうしたイベントを続けていきましょう!」と力強いお言葉! ありがとうございます。
お言葉に甘え、子どもたちにもっともっとマンガが好きになってもらえるように、今後も手塚プロダクション漫画部OBによる「マンガの描きかた教室」を開催していきますので、みなさん応援よろしくお願いします。
三浦みつる
1976年手塚プロダクション入社。2年後に独立。
代表作「The・かぼちゃワイン」など。
堀田あきお
1978年手塚プロダクション入社。2年7ヵ月後に独立。
代表作「夫婦でインドを旅すると」など。
石坂啓
1978年手塚プロダクション入社。1年後に独立。
代表作「キスより簡単」など。