戦う女の子がテーマの手塚作品といえば、来月舞台化もされる『リボンの騎士』が有名ですが、今回のオススメデゴンス!では、同じく戦う女の子が主人公!80年代に生まれたヒロイックファンタジー『プライム・ローズ』をご紹介します。
ただ、かわいい女の子が戦う単純なストーリーではなく、わがままだけどキュートなヒロイン・エミヤの見た目とは裏腹に、ちょっとヘヴィで予想がつかない展開も見逃せません。
『ブラック・ジャック』のドクター・キリコや『三つ目がとおる』の主人公写楽もゲスト出演しています。
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『プライム・ローズ』あとがきにかえて より)
今度の新作『プライム・ローズ』はスタンダードなものです。SFというのかなァ……そう大河ロマン——SFのにおいのする大河ロマンです。
…(中略)…
この女の子は、ごくごく普通の子で、学齢期がきて学校に通って——学校は、今の日本の学校とかわらず、違っているのは歴史くらいなんです。そういう意味では、はじめの二、三回はまったくの学園ものみたいなムードです。この女の子はちょっとズッコケてて、成績もあまりよくないんです。ちょっとひねてて超能力も発揮しない。ちょうど初期の三つ目のような、ようするに平凡でどこにでもいる女の子なんです。
…(中略)…
登場人物は『風と共に去りぬ』みたいに、いろいろな場面で登場する人々を描いて、それらの人が運命にどういうふうに流されていくかを描きたいです。
…(後略)…
80年代のSF作品『プライム・ローズ』の戦うヒロイン、エミヤ。現代日本の高校そっくりの学校に通うエミヤの日常を描く普通の学園もののように始まった物語は、タンバラ・ガイや謎の老人ジンバの登場によってだんだん冒険活劇ものの色調を帯びていきます。エミヤはジンバにククリット人の歴史や剣を教わり、度重なる試練を乗り超え、平凡な女子高生から勇敢で気高い戦う王女に成長します。『リボンの騎士』と比べると冒険はずっと血なまぐさくなって、占領された小国ククリットの住人たちがグロマン国から立ち上がるために勝ち目のない戦いに挑むシーンは、壮絶ですらあります。
タンバラ・ガイやその弟ブンレツのような個性の強いキャラクターも多数登場、話を盛り上げると共に同じチャンピオン連載の『ブラック・ジャック』で登場したドクター・キリコや『三つ目がとおる』の主人公写楽がゲスト出演しているところも見逃せません。
様々な立場の、様々なキャラクターが入り乱れてそれぞれに冒険をするこの物語、読み進んでいくと、無国籍でいつの時代かもどこの星かも分からない世界の舞台がだんだん分かってきます。衝撃の真実とラストを、ぜひとも読んで確かめてみてほしい作品です。