オリジナル原稿から製版したオールカラー完全新版での復刻や8月からはヴィレッジヴァンガード限定でスペシャルコーナーが巡回されるなど、「ユニコ」ブームが起きつつある?!
今回のオススメデゴンスではそんな「ユニコ」をフィーチャー!『ユニコ 小学一年生版』をご紹介します!
まほうのつのの力でどんな願いも叶えちゃうけど、ちょっぴりドジで一生懸命なユニコ。少女向け雑誌連載時のファンタジーな世界観から一変するも、ユニコの可愛らしさは健在です。
「ユニコ 小学一年生版」は、昭和55年から59年にかけて、小学館の学年誌「小学一年生」に連載された作品です。サンリオの少女向け雑誌「リリカ」に、昭和54年3月号まで連載されていた人気作品「ユニコ」が同誌の休刊により完結しなかったため、掲載誌を変えての再スタートとなりました。
読者の対象年齢を考慮したためか、主人公のユニコが「記憶を失ったまま放浪の旅を続ける」という悲劇的な設定から、「現代の少年の家に居候する」という親近感のある設定に変更されています。日常に巻き起こるトラブルを魔法で解決するという、一話完結のドタバタ・ギャグ物で、「リリカ版」とは世界観が全く違う作品です。
同一の登場人物(ヒゲオヤジ等)を様々な作品に登場させる「キャラクターシステム」は、手塚作品独自の物として有名ですが、この「ユニコ 小学一年生版」は、作品タイトルと主人公をそのままに、全く異なった雰囲気に仕上げた珍しいパターンの作品です。
「リリカ」の休刊により、中途半端なまま終了してしまった「ユニコ」ですが、早くもその翌年に復活させた事を考えると、手塚治虫はユニコというキャラクターに対して、かなりの自信と思い入れがあったのでしょう。何しろ連載開始前に「こりゃあいけるぞ」と、ヒットを確信したぐらいですから(ユニコ誕生のいきさつについては、全集版『ユニコ』第2巻の後書きに詳しく書かれています)。
ユニコのパートナー兼トラブルメーカーとして登場する竜の子ども・ラゴンも、彼だけで一つ作品が作れそうなほど、非常に魅力的なキャラクターです。また、後半では「リリカ版」の代表的脇役であるネコのチャオが登場する読者サービスも!
物語は毎回巻き起こるトラブルを、ユニコが魔法で解決するというシンプルな構成の物ですが、登場人物のワガママがトラブルを引き起こすなど、子どもに向けての教訓めいた作品も多く、手塚治虫の教育者としての姿勢も垣間見る事ができます。
劇場アニメ化の影響もあり、一般的には「リリカ版」の方が有名ですが、時には死の陰すら感じさせる「リリカ版」とは違い、ひたすら無邪気な雰囲気を持つ「小学一年生版」も、まぎれもなくもう一つの手塚治虫ワールドなのです。