あけましておめでとうございます!
今年は午年ということで、今回のオススメデゴンスでは『走れ! クロノス』をご紹介します。
寒い日が続いておりますが、クロノスと至のお互いを思いやる友情の物語、読むと心が温かくなります!
『走れ! クロノス』は、「中一時代」の昭和51年4月号から9月号まで連載された(以下は講談社手塚治虫漫画全集の『タイガーブックス』あとがきからの抜粋)。
旺文社の雑誌連載のときは、こんなSF作品にする気はなかったのです。ウエルズの「神々の食糧」を読んで、巨大化する動物の話はいつかやってみたいと思っていましたが、こんな作品ができるとは……。だから前半と後半がひどくちぐはぐです。単行本化したときに、かきたして、ひと思いにSFにしてしまいました。
地球に不時着した宇宙人がミスで引き起こした火山の噴火により、父以外の家族を失い、自分自身も足が不自由になった少年・至(いたる)。罪の意識を感じた宇宙人の一人は、至の子馬に知能強化剤を食べさせます。「クロノス」と名づけられたその子馬は、やがて大きく、かしこく成長し、至の良い友達となったのでした。
『ジャングル大帝』に代表されるように、動物と人間との友情物語は手塚治虫の得意とする題材の一つであり、さらに宇宙人との交流ときくと、あの『W3(ワンダースリー)』を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか(そういえば、高い文明を誇る異星人との交流も、手塚作品によくあるパターンの一つです)。それにしても、鳥、ネコ、ナメクジと、作品中で様々な生き物を進化させた手塚治虫ですが、馬顔の宇宙人とは何とも珍しい発想のキャラクターを造形したものです。
そしてもちろん、この作品にも、手塚治虫らしい社会への警告が含まれています。地球人を一方的に未開の低級な生物とみなし、至たちに対して「償いの必要などない」と主張する宇宙人たちの姿からは、様々な社会の矛盾・不正に対する風刺を読み取ることができますし、逆に自分が処罰されるのも省みず、至の面倒を見る宇宙人の姿からは、誠実に生きること、そして文明の中でも人間性を失わないことの美しさを知ることができるのです。