特集2でもご紹介しましたが、今月から手塚治虫記念館で見られるようになった短編アニメ『ガロン』。今月号では、その原作となった作品『魔神ガロン』をご紹介します!
(『魔神ガロン』秋田書店 サンデーコミックス 作者のコメントより)
ぼくは、ずいぶんいろんな怪物をつくってきましたがこのガロンも好きな怪物の一つです。32年ころまでは、ぼくはわりとかわいらしい主人公たちをうみだすのに専念していました。
0マンやアトムなどがそうです。ガロンは、ぼくのはじめての悪魔的なスターです。
侵略ものというかたちのSF物語は、今ではずいぶんありますが、このガロンは、そのはしりの一つではないかと思っています。
『魔神ガロン』は、手塚キャラクターの中でも、『マグマ大使』や『ビッグX』とならぶ、巨大SFヒーローの代表作品です。ロボット、怪獣、巨人など、さまざまな魅力を兼ね備えたガロンは、知名度では劣るものの、重厚な存在感で人気があります。
ある日、宇宙からの飛来物が後楽園球場(現・東京ドーム)の真ん中に落下しました。東大の俵教授と助手の敷島が調べたところ、巨大な人工物をバラバラにした物であることが判明。さっそく組み立ててみると、なんと人型の怪物ができあがりました。実はこの怪物は「ガロン」といい、ある宇宙人がわざわざ地球へ送り込んだものだったのです。地球人がこの怪物をどのように利用するかをテストして、仲良くするか滅ぼすかを決める、という狙いなのでした。
やがて目を覚ましたガロンは、「ピック」を探して暴れまわります。「ピック」とは、ガロンと同時に地球に送られてきた少年の事で、ピックが一緒にいる間は、ガロンも大人しくなり、人間の言う事をきくのです。が、それを知った悪の組織は、ガロンを我が物にするため、ピックを奪おうとします。そして、ピックを守ろうとするガロンや敷島たちと、悪人達との攻防戦がはじまったのでした。
良いも悪いも○○次第…といえば、かつて『アトム』と人気を二分したロボット漫画『鉄人28号』を思い出しますが、リモコン一つで操縦者の意のままになる鉄人同様、まさにガロンの行動はピック次第(ただしガロンは鉄人に比べ、かなり生物的ですが)。悪人に利用されたガロンが、人間から誤解され、攻撃されるもどかしさは、連載当時に読者をひきつけておくための、手塚治虫のテクニックだったのかもしれません。