クリスマスやお正月、子どもが心待ちにしているパーティーシーズンがやってまいりました! 一年に一度のこの季節の目的はもちろん、「欲しかったあのおもちゃが欲しい!!」 ところが……
そんなストーリーにピッタリハマるあのロボ、ザリガニワークスの「コレジャナイロボ」と『鉄腕アトム』がついにコラボレーションしますよ!
12月号・まさにクリスマスに相応しいこの企画について、ザリガニワークス・代表取締役 武笠太郎さん、同じく代表取締役 坂本嘉種
——今回の『コレジャナイアトム』誕生のきっかけを教えて下さい。
武笠太郎さん(以下、武笠):ギフトショーの際に、僕達の『コレジャナイロボ』を展示していたマインドワークス(※ザリガニワークスのキャラクターライセンスを手がけるエージェント)に手塚プロダクションの内藤さんがいらっしゃって、アトムとコレジャナイロボのコラボに関する熱い思いをお話しいただきました。
——すでに「ジャスティス・リーグ」とのコラボレーションも発表されていますし、他のキャラクターからもたくさんのオファーがありそうですね。
坂本嘉種さん(以下坂本):『コレジャナイロボ』は特にいま多いですね。ただ、ご提案が上手くハマるかどうか、というところで検討していまして、すべてのご提案をお受けしている、というわけではないのですが。
——今回は幸いにして、ぴったりきた、という。
坂本:それ以前に、「アトム」といったらまさに日本人にとっては国民的ロボットといえるわけで。もう、「コラボしても良いんですか!?」っていう気持ちが先に立っちゃって。内容を考える前に、「やります」って感じでしたね。
——ありがたいです!
——『鉄腕アトム』のコレジャナイ化に取り組んでみて、難しかったところはありましたか?
坂本:武笠がアートワークを起こすのは、さして難しくはなかったと思いますが、僕が担当したコンセプトの部分、——なぜ、「コレジャナイロボ」と「鉄腕アトム」がくっつくのか、というところがむしろすごく難しくてですね。
必然性については全然、心配なかったのですが、僕の方でアトムを愛しすぎちゃっていましてですね(笑)、すごく、掘り下げて考えすぎちゃって。それをユーザーに「このコンセプトで」と言って届けたところで伝わるのか? とか。ついてきてもらったとしてもあまりハッピーじゃない方向になっちゃうんですよ。そもそもアトム自体が天馬博士にとっての「コレジャナイトビオ」でしょ?! っていうところから入ってみたり、100万馬力への改造っていうのは『鉄腕アトム』のテーマに対してどうだったのか? とか、手塚先生にとっての『アトム』とはなんだったのか、そんな真っ直ぐなものじゃなかったんじゃないか、みたいないろいろな思いが頭の中に渦巻いてしまって。
「コレジャナイ」とリンクする部分はものすごくあるけれど、リンクする部分すべてを必ずしもユーザーに届けていくべきものじゃないな、ってなったので、それで悩んじゃって。
そのあたりはとりあえず置いておいて、とりあえずキービジュアルを作ろう、と。
武笠:それももう、ごく最近の話ですね。
坂本:『そうなんですよね。で、上がってきたビジュアルを見たら、「あ、なんか、そういうややこしいのはいいや!」って。原作の世界観との必然性を求めるのはやめよう、と。さっき言ったような「国民的ロボット」、つまり「日本のロボットです!」っていう感じでいいじゃないか、と。
——なるほど。
坂本:「富士山、新幹線、アトム」とか、「東京オリンピック、アトム」とか。
そういう、ちょっとぶきっちょだけど夢がある日本の昭和のロボット像と、コレジャナイロボがくっつくことで、素直に出て行ったらいいのかな、って、アートワークを見た中でそう感じるようになりました。
——いろいろ、アトムについて深くご存知だからこそ、「アレもいける、コレもいける」と。
坂本:でも、なんとなくこれじゃ重たくなるよな、ユーザー的には……ってなっちゃって。最終的には、「すんなりわかる」っていう我々のコンセプトにたどり着いたのですが、そこに至るまでにいろいろ、悩んじゃいましたね。僕自身、アトムで育っている、と言っても過言でないので。
今のアトムって、活躍し過ぎていて、なんだかこう公の感じになっていますが、一緒に育った僕らのころには、もっと一緒に悩んだりしたよなぁ、っていう気持ちがあるんですよね。
武笠:例えるなら、そうですね……超大物俳優と言われる方を、バラエティ番組に出すみたいな感じなんですよね。そうすることで改めてその方を身近に感じたり、という。でも、そのバラエティ番組を作る側は、とっても慎重に事を進めると思うんですよね。そんな感覚がちょっとありますよね。
坂本:意味合いは全く違うかも知れないけど、タモリ的変化をしているかもしれないですね。
——タモリ!
坂本:僕らは、アトムのことを子どもの漫画として楽しんで来たわけですよ。それが例えばタモリで言えば、「タモリ倶楽部」とか、イグアナのモノマネの人だったのが、もう、なんか金融機関のコマーシャルに出ていいのか!? みたいな感じになっちゃった。
え、だってあの人、イグアナのモノマネする人だよね、という変化を、今アトムもしているような気がしますね。
そこのところで、僕らが本当に触れ合ったアトム像を今の人に感じてもらえたらな、というのが最終的なコンセプトになっていますね。
——「コレジャナイアトム」の楽しみ方は? どんな人に薦めたいですか?
武笠:商品がまだ具体的に決まっていないので、ちょっとお答えが難しいんですが、……まさに、昭和の時代に、著作権の概念がまだ日本の社会に浸透していなかった時代に、パチもんがたくさん出ていたりしたころのキャラクター、というようなところがコンセプトの中心になるかもしれませんね。
表面的にはすごく可愛く仕上げていくと思うんですが、その奥に、実はアトムそのものにも「トビオじゃない」というような「コレジャナイ」っていう感情面での強い結びつきというか、リンクがあるんだ、っていうところをもやもや楽しんでもらうといいかな、と。
坂本:オトナの人には、そういう感じかもね。
——「コレジャナイロボ」も「コレジャナイアトム」も、子どもにもぜひ手にとって欲しい商品ではありますよね。
坂本:そうは言ってもやっぱり、「コレジャナイロボ」は大人の間で「あるある」的に楽しむもので、見ている方向はやっぱり“当時”なわけですよね。
「コレジャナイアトム」もやっぱり、——ノスタルジーとはまた違うんですけれども、すごく“当時”的感覚のアートワークにはなっていくでしょうね。
絵的に、目先が変わった感じ、とか可愛らしい感じ、というところでそれなりに受け入れてもらえるとは思うんですが、もっと突っ込んだところで、製作者の思いとしては、アトムの時代をもう一回やりたい、というか。
科学に夢が見られなくなったのは、やっぱり、心を亡くした科学だからであって!……あっ、これは『ミクロイドS』になるんですけれども……。
武笠:そのまんま言いましたね!
坂本:夢のある、こころのある科学っていうのは肯定されて良いはずで。そういう、夢であるとか、高度成長期の前向きな気持ちであるとか、もう一度、そういう夢を見られないかな、っていうところを、絵がそういう感じがする、というところから喚起して貰えたらな、という思いはあります。
——みんなが「将来アトムを作りたい!」って言っていたころのアトムに戻るという。
坂本:たくさんの子供達が、アトムを作りたい、って思っていましたよね。あの頃は。
——ところで、お二人にとって『鉄腕アトム』で一番好きなエピソードは?
坂本:難しいですね……。実は結構ぼんやりしていて、……でもやっぱり、めちゃめちゃ読んだのは、「地上最大のロボット」なんですよね。でも、……あれを、「イイ」って言っちゃうのはなんだか悔しいんですよ(笑)。良い話はもっと他に絶対にあって、でもあれがキャッチーだからつい何回も読んじゃってるんですよね。アニメ世代的には「アトラス」とかも気になるけど、やっぱりなんか、キャッチーな方に行っちゃう。でも、良い話は絶対他にたくさんあるから(笑)、そう答えたくない。
——自分だけが好きな作品、みたいなものをつい押したくなりますよね。
坂本:手塚先生的にも、「これを評価してほしい!」っていう話があるんじゃないか、とも思うんですが、やっぱり、それで育った子どもとしてはキャッチーなのを押したくなりますよね。
——世代のお話で言うと、お二人はアニメの世代ということになりますでしょうか。
坂本:そうですね。僕は80年代のカラー作品をかなりみていましたね。
武笠:僕は、あんまりテレビを見せてもらえない家だったんですよ。どちらかというと漫画で読んだほうになりますね。
——そうすると、むしろアトムよりも『ブラック・ジャック』とか。
武笠:手塚作品、ということであればそうですね。
坂本:僕も、手塚作品、という括りにすると、もっといろいろ思い入れのある作品があります!
——今のお話ですと、武笠さんはあまりテレビ番組に親しんで来られなかった、ということですが、そのフラストレーションが今のアートワークに生かされてる、なんていうことはあったりしますか?
武笠:そこは、実はそれほどでもないですね。やっぱり、こういう仕事を選ぶくらいですから、小さい頃からテレビ見ているよりも物を作ったりするほうが好きで。
でもやっぱり、同世代での話題の共有としてなんか、ひょうきん族の話とかしたいんですけどね……。ひょうきん族はもう最高レベルに見せてもらえなかった番組でしたからね(笑)。そういうのはちょっとありますね。
——では、アニメ番組もあんまりご覧になっていない?
武笠:そうですね。うちで見られる番組って言うと、NHKスペシャルとかそういうやつですよね。今見ると面白いんですけれどもね。子どもにはちょっと退屈なんですよね。そういう意味では、アトムは見せてくれても良かったんじゃないか、と思うんですけどね。
坂本:アトムはその頃のアニメの中でも教育にも良い感じですよね。手塚作品の中でもかなり、「見て良い」ほうの部類ですよ。
——正直なところ、アトムじゃなくて、もっと他の作品でのコラボでもできるぞ! っていうところはありますか?
坂本:いや、……やっぱり、「コレジャナイ」的にはやっぱりアトムですよね。でも、もっと単純に、クリエイター的に、って言えばいろいろありますよね。
武笠:そうですね。
坂本:僕と武笠両方が好きな作品なら例えば、「三つ目がとおる」なんて良いですよね。
——時代で言えば、70年代後半から80年代前半の空気感ですかね。やはりその頃の影響は色濃く受けていらっしゃるのでしょうか。
坂本:僕は少なくとも凄まじく受けてますね! 80年代に入った時に、子供心に「なんて時代が来てしまったんだろう!」って思いましたもんね。80年代後半ぐらいですかね。「つまんなくなっちゃったな」ってかなりうんざりしていて。やっぱり、70年代がすごく好きだったんですよね。目にするものもみんな、カッコイイな、と思っていたし、やんちゃだったし。漫画もそうだったと思うんですが、作品の送り手たちがみんな社会派だった。
俗悪極まりないと言われていた子供向けの物を作っていた人たちが、彼らを俗悪と呼ぶ世間に戦いを挑んでいったじゃないですか。そういう軋轢のところに、なにか良いエネルギーが発生していたんだと思うんですよね。今や漫画なんかも文化として確立してしまって、認められちゃっていますが、その中になんかちょっと、いけない要素があるような気がするんですよね。これを、最初に子どもに見せちゃっていいの? とか。駄目だ、って言われるには言われる理由があるはず、というところがあまり叫ばれなくなって、反対に肯定されすぎちゃってて、そんなところに毒が潜んでいるような気がします。
戦っている状態そのものが、すごく良い状態なんじゃないか、という気がするんですよね。あの戦いのエネルギーは、今の時代でも欲しいな、って思います。
——クリエイターとして、お二人があの時代にもし、今のような活動をすると、かえって、頭を押さえつけられちゃうところがあるのではないでしょうか。
坂本:確かに、今ある人たちが言ってくださっているような、所謂クリエイターって形では認識をしてもらえなかったでしょうね。単純にもう、くだらないおもちゃをいっぱい作っていたでしょうね。
武笠:そうでしょうね。……昔、オイルライターとか平気でガチャガチャで売ってたじゃないですか。
坂本:ああいうものとかを、平気で作っていたでしょうね。ああいうののひどいやつを(笑)普通に作ってたと思うんで、ただの馬鹿な玩具を作ってる人たちになっていたでしょうね。
武笠:某ガチャガチャメーカーなんかは、当時、勝手にガチャガチャの機械を駄菓子屋の店先なんかにトラックで持っていって、置きまくって回ってた、……なんて噂を聞きますからね。
勝手に店先に什器を放置して回って、しばらくしたらお金を回収しに行く、というモノスゴイことをしてた、って聞いて。で、中身で入ってるものが(オイルライターとか)そういうキケンなもので。
坂本:ヒドイ(笑)。
——おおらかですね。
坂本:良くも悪くも文化が未熟で、みんなすごくたくましかったんだと思うんですよね。なので、僕らもそんな中にいれば結局、それなりにやっていくと思います。
——郷に入れば郷に従え、という。
——今の人は、賢くなりすぎちゃってるのでしょうか?
武笠:今がダメ、っていう話じゃないんです。あの頃はあの頃の良さがあって。……今は今で、良さがあると思いますしね。今の子供達からすれば、今の時代が「あの頃」になるんでしょうし。おとなになった彼らは多分、「俺らが子供の頃って、面白かったよね」ってなるんだろうと思います。
坂本:常に、どんな時代でもそれはありますよね。
武笠:まさにそうですよね。僕らでいえばちょうどファミコンの発売が小学校低学年の頃で、さんざん、「ゲームなんて」って言われて、うちの親父もぜんぜん買ってくれなくて、「そんな、良くないおもちゃ」って言われてましたけど、あれはあれで、思い出があるんですよね。友達とコミュニケーションするツールではあったので。そういうのは、「懐かしいなあ」と思いますし。そういう、大人の視線からは見えない、子供同士のコミュニティというのは必ず作られているので。
——かなり教育に厳しい武笠さんのお家ですが、どんなお家だったのでしょうか? やはり、物づくりを手がけていらっしゃったのでしょうか?
武笠:いいえ、ごく一般的なサラリーマンです。僕らふたりとも、いまこんなんですが、ごくごく普通のサラリーマン家庭で育ったんです。
——コレジャナイロボは2001年生誕で、今年で11周年、ということになりますね。この11年間、育てつづけていらっしゃったわけですね。
武笠:育てていた、というわけでもないですね。ただ、やめなかった、というだけで。
坂本:まあ、売れていなかったので、作り続けるのはそれほど、大変じゃなかったですしね。手作りだし。
——2001年というと、すでにインターネットはありますよね。やはりネットで通販で売っていらっしゃったんですか?
坂本:そういうことはやっていませんでした。会社を始めた時に、WEBサイトにカタログを掲載して、そこからちょっとずつ動きが出てきた、という感じですね。それを、ネットショップの方が見つけてくださって、取り扱いたい、というお話を頂いて。
でも、ネットなんかに載せちゃったら、死ぬほど売れちゃうんじゃないか、って(笑)。手作りなんですよ、これ、って最初はお断りしていたんですけど、いや、いいからやらせてくれ、って言われて、そんなに言っていただけるならちょっとやってみよう、と。
それで出したら、ブログブームと重なって話題になって、火がついた感じですね。
——独立のきっかけは何だったんでしょうか?
武笠:僕がとにかく、独立したい、と言い出して、それには、坂本とやっている「太郎商店」という活動を軸にするのが一番いい、ということで、坂本を誘ったんです。
——独立にあたって不安などはありましたか?
坂本:不安はまあ、ありましたが、漠然と「やるんだろうな」という感じはありましたね。でもやっぱり不安はあるし、あとで「ああ、やっぱり」みたいになるのは嫌だったので、とりあえず1年間、思う存分ビビろう、と。会社の概要などを固めて行きながら、思う存分、迷ったりビビったりする時間を1年作りました。どうせやるんだけど(笑)。
——石橋を存分に叩いてから。
坂本:いや、そこまで慎重じゃなかったですね。ただ、「だって迷う時間なかったもん」って言わないようにするためぐらいの。
武笠:バンジージャンプで、自分のタイミングで飛ぶ、みたいな感じですかね。結局飛ぶんだけど、ちょっとそこは自分でやらせて、っていう(笑)。誰かのカウントダウンとかじゃなくって。
坂本:あとは、いくらなんでも太郎商店の活動だけじゃヤバイぞ、っていうのもあったし、会社の方向性とかを詰める時間も欲しかったし。
武笠:そうですね、いろいろ考えて。
坂本:一年後にすれば、その間いろいろ考えるだろうと。その間に、「これ考えとかなきゃだめじゃん!」っていうことも出てくるだろうし。
——すると、独立後はけっこう、予想したとおりに進められましたか?
坂本:ぜんぜん予想通りじゃなかったですね。
武笠:向かっているところとか、今やっていることはある程度予想通りですが、そのスピードが思ったより遅くてびっくりした、っていう。1年ぐらいで安定するかな、と思ったら、8年かかりましたね。
坂本:言ってみれば、甘々なんですけどね(笑)。
——では、いままさに一つの到達点に立ちつつある感じですか。
坂本:やりたかった業態にようやくなった感じですかね。
武笠:到達、ではないですね。
坂本:到達というと、あるポジションにいけた、みたいな気がするんですけど、まだぜんぜんそんなことなくって、やりたい業態にはなってきた、って感じですね。
——ご自身でも物を作り続けながら、ライセンスもする、というような。
坂本:メディアを問わず、企画・デザインをやっていく、とか。なんでもやりたい、というのがやっぱりあって。会社員時代にやっていたことも面白くはあったのですが、やっぱり「何屋さん」ってことになっちゃうじゃないですか。ゲーム会社ならやることはやっぱりゲーム関係だろうし、そこの垣根を超えてものづくりをしていきたいな、というところがすごくあったので、そういう意味では幸せにやらせてもらっています。
あとは、いろんな人と友達になりたいな、というのが切実にありましたね。
——やはり、ゲームの会社にいらっしゃれば、出会いはゲーム業界内部に限られがちですよね。
坂本:業界どころか、めちゃめちゃインハウスですからね。隣の席の人しか知らない……というのは言いすぎですけど、ほぼ、チーム内の人としか関わらなかったりするし。
武笠:僕は、おもちゃ製作のディレクターのような立場でいましたので、明和電機さんのようなアーティストの方にお会いしたり、中国の工場まで行って生産の管理をやったりとか、わりと広く人に会えたのですが、アイディアのアウトプットがおもちゃしかないのが気になっていて。おもちゃの世界もほとんどなんでもありで、広いのですが、もっといろんなことがやりたいな、ということが、独立した直接の動機です。
例えば、「ごはん怪獣パップ」というシリーズをやらせてもらっているんですが、そこでは主題歌の作詞とか、演出とか、作画をやっているんですね。そういう、おもちゃ会社の立場であれば出来なかったようなことも、いまはやっています。
あとは、書籍を出してみたりとか。ゲームアプリを手がけてみたり。
坂本:いろいろな世界の人々と知り合って、それにふさわしいものを提供していく感じですよね。
武笠:そうやって、僕ら二人のアイディアがお金になっていけば。アイディアを売って食べていける会社としてこれからもやっていければ、すごくいいなあ、と思っています。
——毎日お仕事楽しいでしょうね!
武笠:そうですね。……僕達のように美術大学出身だと、いろんな分野で独立している友達も結構多いんですよね。そういう友達に、「最近、どう?」とか聞くと、「いや、ちょっとさぁ、今あんまり気が乗らない仕事をやっててさあ……」みたいなこともたまに聞くんですけど、うちは、そういう仕事はほとんどゼロと言ってもいいんですけれども、逆に、友達のいう「気乗りのしない仕事」って実はすごく儲かる素敵な仕事なんじゃないか、っていう気がして(笑)。それ、どういうやつ? なんて。
坂本:夢見ちゃってるんですよね。そういうのもやんないと、やってけないから、ってみんな言うんですよ。じゃあ、そういうのをやればやっていけるのか!? って。どんなに商売になるんだろう! って。
武笠:つまんない仕事って、どうやって取るの? って。それぐらい、本当に、面白い仕事ばかりやらせていただいてますね。
——お金になるなら、ちょっと面白くない仕事でもやろうかな、とは考えたりしますか?
坂本:どうなんでしょうね。……じつは、結構前の話なんですが、「あ、ちょっと今この仕事つまらないな」と思ったことがあったんですよ。極めて稀なことなんですが。で、「つまんないな……」って思いながらも進めていたら、ふと「これ、普通の仕事じゃん」って気づいたんですよね。普段、どんなへんてこな仕事やってるんだろうな、ってその時すごく思って。なので、……そうですね、やりたくない仕事を進んでやる、ってことはないかもしれませんね(笑)。
なんか、みんながそう言っているから、ちょっと興味はあるんですけれども。
武笠:隣の芝生は青い、っていうやつかも知れません。
——お二人の役割分担ですが、お二人とも絵はやはり、お得意なのでしょう? 「コレジャナイロボ」では、武笠さんが絵を担当されていますが、絵はすべて武笠さんが?
坂本:いいえ、絵が得意なのはむしろ僕のほうで、……ここがすこしややこしいんですけれども、実は武笠のほうが描いているといえば描いていたりします。最近は、逆転現象が起こっている、というか。
武笠:元々は、坂本がイラストで、僕が立体、というような役割だったのですが、だんだん、お互いに僕がイラストを描いたり、坂本が立体を手がけたり、というふうになって来ましたね。
——「コレジャナイロボ」ではあえて不器用な感じを出すために、得意分野ではない武笠さんが絵を手がけたりされたということでしたね。木製のロボットたちも武笠さんが作られるのでしょうか。
武笠:そうですね。
——「コレジャナイアトム」は木のロボもでるのでしょうか。
武笠:実はそこはまだ分かりません。何か、面白い取り組み方があれば、出すかも知れませんね。まずは、メーカーさんへのライセンスから初めて行く予定です。もし、何かイベントが組まれるのであれば、そこの会場限定で販売したりとか、そういうところでうちが作ることもあるかも知れません。
——具体的なところはこれから決まってくる感じですね。
——手塚ファンの方で、「コレジャナイロボ」や「コレジャナイアトム」に興味を持っている方に何かひとことありますでしょうか?
武笠:一つには、優しくして欲しいですね……。
坂本:優しく見守って欲しい、というか。
——新しい表現でアトムを出していただく、ということそのものにも大きな意味があると思います!
坂本:そうは言っても、新規のアートワーク、ということで言えば、手塚ファンの方にしてみればオリジナルのほうが良いにきまっているわけで。それを決して超えはしないけれども、ファンのかたがずっと、作品を愛してきた中での、ある「時」の空気、というようなものは、何か感じていただけるんじゃないかな、と思うので、そこを共有して楽しんでいただけたらな、と思います。
——ありがとうございました!
告知!!
お二人の仕事術に迫る書籍『遊んでくらす コレジャナイ仕事術』が発売予定!
また、書籍の発売を記念して、2013年1月10日〜22日 渋谷パルコ・ロゴスギャラリーで「ザリガニワークスの普段」展が開催されます! テーマが「普段」ということで、趣味の道具とかも展示されるそうです。書籍とイベントで、お二人の素顔にせまれますよ!!