4月6日から放送が始まったBS時代劇『陽だまりの樹』、ご覧になっていますか?
放送も第5回となり、そろそろ折り返し地点。目が離せません。
先月の虫ん坊では、記者会見をご紹介しましたが、今月はさらに掘り下げた質問を主演のお二人にぶつけました!
——改めて、初共演について伺います。共演される前には、御互いにどのような役者さんだという印象を持たれていましたか? またそれが共演によってどのように変わったのか、お伺いしたいのですが。
市原:
僕はあまり、人に対して先入観というか、固定の印象を持たないんです。また、役者というものは、現場や役柄によって、都度、キャラクターを変えていくものだと思うんです。ですから、成宮さんについては今の現場での印象となりますが、常に何かを深く考えている方だ、と思いました。良庵はこの作品の中で、花を添える存在だと思うんですが、そんな良庵にまさにぴったりの方ですね。常により良い芝居ができるように、もっと良くならないか、もっとみんなを楽しませることが出来るんじゃないか、と日々模索している姿が僕にとっても非常に刺激になります。
成宮:
市原隼人くんは、……やさしい、です。でも、自分に対しても、人に対しても厳しい面もあり、緊張感を持って現場に挑むので、現場がぴりっと締まりますね。今回の作品は、シーンの数が多いので、そのなかで緊張感が途切れることもあったりするんですけど、そういうとき、声を出して、——けっこうデカい声で発声練習をしだしたりして。なんか、叫んでるんですよ(笑)。
とにかく、自分に対して「これでいいのかな」ということを常に自分の中で考えつつ、思ったことをバシバシ口に出していくので、いい意味で分かりやすいですね。大人になってくると、ある種醒めた目線になってくると思うのですが、少年のような、無邪気なところがあって。可愛らしいといったら二十歳をすぎた俳優に対して失礼なのかも知れませんが(笑)、なんかすごくかわいいな、と思う瞬間がたくさんあります。あと、さっきも言ったんですが非常にまじめで、すごくいろいろなことを考えているんですよ。
ヘアメイクさんや衣裳さんが直しを入れるときも、必ず自分でも、納得してから行くっていう。「一回見せてください!」「万二郎はもっと黒いはずです」って、現場でいきなり直し始めたりとか。それを現場できちんと言える力というか、ギリギリまで役に対してあきらめないところが、僕にとってもいい刺激になりました。
——お二人の掛け合いがこのドラマの魅力になってくるかと思いますが、どういうところに気をつけてお芝居をしていますか? 時代劇ならではの難しさなどもあると思いますが。
市原:
二人の距離は、同志なんですよね。近すぎてもいけないし、遠すぎてもいけない。でもどんなに離れていてもなんか、存在を感じているんですよね。土産話を持っていきたい、また、武士としての意地は、良庵に対して常にもっているようにしたいと思っています。
時代劇ならではの動きの制約は、ものすごくたくさんあります。それで初めは、眠れなかった。でも、制約の殻にとじこもるんじゃなくて、その中でも精一杯、片手じゃなくて両手で、片目じゃなくて、両目で相手をしっかりみる、というのが、万二郎では大切だと思っていて。
成宮:
技術的なことでいうと、普段、現代劇だと、手を自分の顔に何気なく持っていく芝居って、けっこう多かったりしますが、時代劇ってそういうのがあまりない気がします。
それがすごく時代劇ならでは、だと思います。ポケットもないですし。なんか、手をポケットに突っ込みたくなるんですよね。また、腕組みができなかったり。当時は、腕組みは避けられていたそうなんですよね。
そういう、普段つかっている仕草が使えなかったりする制約はありますね。自分が浮いてる感じがすることはあります。
——市原さんは、成宮さんを「ユーモアがある」とおっしゃいましたが、お二人はどんなお話をされているのでしょうか?
市原:
この前、食事に招待していただいたんですが、選んでくれたお店がむちゃくちゃうまいところでしたね。お酒や料理にしても、こんな楽しみ方があったんだ、という。ぼくの知らない世界を見せてもらったというか。
食事って、一つでもおいしいけど、これとこれをあわせるともっとおいしくなるんだ、というような食べ方だったりを教えてもらいました。
成宮:
現場ではあまりしゃべらないよね。
市原:
そうですね。
成宮:
さっきも隼人くんが言ったように、距離感をもってなくちゃいけないので。それに、お互い、現場ではいっぱいいっぱいだし。僕はセリフの分量が多いので、どういう言いまわしをしたらいいのかを考える作業があったり、万二郎は万二郎で、音に対してすごく厳しい面があると思うんですけれども、どういうふうにセリフを言ったら重みがでるんだろう、というのを一生懸命模索していたりで、なんか。
ミントのタブレットを現場でよく食べるんですけど、それを現場のいろんなところに隠したりして。それぐらいですね。
市原:
こんなところに隠せるんだ、というところに隠してあったり(笑)。
市原:
先ほど、一緒に食事に行った話がでましたが、最初に、隼人くんが、「飯食いに行きましょう!」って言ってくれて、隼人リコメンドのお店に行って、めちゃめちゃおいしいレバ刺しをごちそうになりました。
で、次に僕がご招待したんですけど、そのときは、芝居の話や、プライベートの話をしましたが、お酒が入っていたこともあって、何話したかはあまりおぼえてないですね(笑)。楽しかった、ということぐらいしか。
カラオケで熱唱して「歌詞がイイんすよこれ!」「いいね! 歌詞、イイね!」みたいな。
——お酒はお二人とも強いんですか?
成宮:
そんなことないですけど、けっこう二人ともバシバシ……。普通のレストランでショットが出てきて、「どうするんスか?」「飲むしかないでしょ」(笑)。
二人とも芝居が一日中ギッチリあるんで、休みの前の日とかに、「酒が飲みてー!」ってなるんですよね。
——今まで撮ってきたシーンで、心理的にも体力的にも大変だったシーンはありますか?
市原: 僕は殺陣です。普通のところではあまりしないんですよ。森の中とか、竹やぶとか、砂利道や坂道だとか……。手を間違えると当たったりするので、緊張感があります。普通の会話の芝居とはちがう緊張感が味わえるので、すごく楽しくもあります。
——もし、ご自身が、幕末の激動の時代に生まれたとしたら、どのように生きただろう、と思いますか?
市原: 僕は万二郎と似ていると思います。考え方も古いところもあって。やっぱり、日本人だし、日本を好きだけれども、ヒュースケンと仲良くなる気持ちもよく分かるし、人を肌の色や性別で判断しないので、攘夷というほうには行かないとは思いますが、やっぱり愛国心はあるし。
でも周りの人を助けたいし、その人のために全力で時間をつくりたい、と思う。ちゃんと、誠意を尽くして、忠義も尽くしたい。最後には、周囲の人が笑えるように、心を砕くと思います。
成宮: 鎖国していたころの日本って、閉鎖的で偏った時代だと思うんです。でもその中で生きているわけですから、そこにストレスはなかったんじゃないかと。でも、新しい異質なものが入ってきた瞬間に、いろんな混乱が起き、自分なりの答えを選択していかなくちゃいけなくなる。
やっぱり、時代が変わっていくんだけど、もともと持っている人間としての根っこというものさえ変わらなければ、その流れになじんでいくべきだ、と僕は思うんです。
なじめない人って、自分の意思が強くて、良いと思うんですが、スマートに生きていくのは大変だろうな、と。
万二郎はどちらかというと、変化への対応が苦手なタイプなんだけど、自分の中で模索しながら、変化もしていく。良庵はもうちょっと、柔軟でポップですよね。男としては万二郎みたいな人カッコいいな、って思いますけど、良庵的なふわっとつかみどころのない、だけど何か芯がある良さも非常によく分かるので、どっちも良いな、と思います。
——『陽だまりの樹』の収録を通じて、得たことや学んだことはありますか?
市原: 日本がよりいっそう好きになりました。『武士道』っていう本があったら、とりあえず買って全部読んだり。武士道は深すぎて、まだまだ学びきれていないんですが、やさしくなれるし、厳しくもなれる。なんか、『武士道』という引き出しが出来たことで、自分の中に、余裕が出来た、という感じがします。死ぬ間際にも詩のひとつでも詠むような気持ちを持っていたいです。あと、真剣が欲しくなりましたね。殺陣師の方と、相談したりして。
現場にいるときも、万二郎を演じよう、とはあまり思わないですね。万二郎になりたい、と思ってやっています。これからあと2ヶ月の収録のあいだに、万二郎といっしょに成長していけたらいいな、と思いますね。
成宮:
生きている意味みたいなものを、人はそれぞれ求めて仕事をして、家族を作って、育てて、といういろんな活動をすると思いますが、子どものとき想像していた以上に、生きていくのって大変だな、と最近よく思うんですよね。理不尽な裏切りや災難なんか、自分ではどうにもならないことに遭ったりもしますし。
そういうとき、自分で、生きている意味を感じながらじゃないと、健康的に生きていけないんですよ。僕はこういう取材の時には、ついスローガンみたいなことを言っちゃうんですよね。でも、いつも理想的な自分じゃない。本当はもっとダメダメなこともあるのに。
そういう、どちらかというと自分が弱っているときに、『陽だまりの樹』という作品で、ちょっとでも元気になれる、と思います。
良庵や、万二郎が生きた時代って、今よりもすごく不便な時代だし、困難なことがたくさんあるんだけど、その中で一生懸命前に進んでいる姿を見て、現代の僕らはもうすこし焦って、変化していくべきだな、ということを感じました。
——今回は恋の鞘当というところも楽しい場面だと思うんですが、万二郎と良庵、どちらがモテると思いますか?
成宮:いまは万二郎じゃない?
市原:もっと伝えてほしい、って人、たくさんいるんじゃないですかね? 市原隼人は伝えますけど(笑)。万二郎はどうですかね。
——あの時代だったらどうだと思いますか?
市原:やっぱり、良庵だと思いますね。
成宮:でも、女の子がほんとうに幸せになれるのってやっぱり、万二郎だと思うなあ。
市原:あまりそんなこと考えたこともなかった(笑)。仕事に対するときの良庵の顔の切り替わりとか、もうカミさんもなにもいえないようなプレッシャーを感じさせる背中だったり。カッコいいんじゃないですかね。
——良庵と万二郎もおせきさんを取り合って言い合いをしたりしますよね。
市原: 言葉遣いがやっぱり、現代のものじゃないじゃないですか。掛け合いもなんかいつもとテンポが違うんですよね。そこがすごい新鮮で、どういうふうにつないだら良いかな、といつも考えているんですけど。
成宮:アドリブが難しいですよね。ト書きに細かく書いてあるんですけど、ちょっと間が出来たときに、なにか言おうとしても…
市原:なんにもいえないですよね(笑)。
成宮:うん。そこが非常に難しいですね。
市原:所作の先生が必ずいるので、聞いたりはするんですけど。
——ところで、友達とおなじ人を好きになっちゃったら、どうしますか? そういう経験はありますか?
市原: 中学のときにあったな(笑)。逆に仲良くなっちゃった。「どっちが勝つか勝負だべ」って。今でも地元で一番仲良しです。俺は女の子としゃべるのがカッコ悪いと思ってて、好きな子が居てもさりげなく近くに行くぐらいだったんで。駄目だった(笑)。
手塚さんの作品にも恋愛要素がかならず入ってますよね。そこがユーモアっていうか、面白いところですよね。
成宮:俺はけっこう行くタイプです。でも、ズルはしないようにしますね。最初に言っておきます。僕も中学校の時にケンカになったことがあります。髪の毛引っ張られて、すごい抜けました(笑)。
——手塚作品は『陽だまりの樹』以外には、どんな作品を読みましたか? なにか思い出などもあったら教えてください。
市原:『火の鳥』『ブッダ』……。やっぱり『火の鳥』だなあ。気がついたら、そばにありますよね。学校にもどこにも。気がついたら読んでるものだった。
成宮:『ブラック・ジャック』『MW』 とか。あとは、『ユニコ』ですね。僕はアニメを先に見たんですけど、大好きで。ビデオテープの時代でしたが、擦り切れるほど見てました。
子どもでも感じるものってあるんですよね。白黒はっきりさせないグレーな部分、というか、そういうところが手塚作品にはしっかり書かれていて。人間の醜い部分から、愛すべき部分まで。そういうところを子どもながらに感じていたから、多分好きだったんだな、と思います。
市原:僕は、親が買っていた『火の鳥』が家にあったのを覚えています。気がついたら読んでいた、という感じですね。
なんか、常に動いている躍動感がある絵がすごいな、って言う印象が残っていますね。
人間の痛みや恋愛や友情、自分の生き方に自負をもっているキャラクターが多いですよね。こういう場面で、こういうことを言えるってカッコいいなあ、と。
今回のお話をいただいたことを親に言ったら、「ちゃんとしっかりやりなさいよ」といわれて。世代を超えて愛されている作家さんなんだな、と改めて感じました。
——お忙しい中、ありがとうございました。
BS時代劇『陽だまりの樹』は、いよいよ山場突入! 次回 第5回放送は5月4日予定です! 見逃すな!!