天使チンクのいたずらで、男の心と女の心を併せ持って生まれてしまった王女、サファイア。ちょっとした間違いで、シルバーランドの王子として育てられますが、陰謀家の貴族、ジュラルミン大公とその腰ぎんちゃく、ナイロン
まさに日本の少女漫画の古典にして、手塚マンガの中でも今なお女性を中心とした読者たちに根強い人気を誇るこの作品を、なんと男性声優ばかりのキャスティングでドラマCD化するとのこと。
なんだか面白そうな企画! ということで、虫ん坊ではその収録現場にお邪魔し、サファイアを演じた声優
収録現場は新宿某所にある、株式会社マウスプロモーションのスタジオ。午前中から白熱した収録が行われました。
サファイア(リボンの騎士、 |
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ジュラルミン大公 | |
ナイロン卿 | |
ガマー(プラスチック) | |
フランツ | |
チンク | |
王様 | |
王妃 | |
博士 | |
乳母 | |
神様(ナレーション) |
まさにテレビアニメのヒーローや映画の吹替え、テレビナレーションなどでおなじみの声から、「今回が声優初挑戦!」という方までいらっしゃいますが、共通するのは皆さん男性ばかり! そうです、“メンズオンリー”のシリーズ名のとおり、男性声優ばかりで演じられるのが特徴なのです。
脚本を手がけるのはほしのいづほさん。子供のころから両親の影響で『ブラック・ジャック』などの作品を読まれていたそうですが、手塚先生の作品の脚本化はこれが初めて。「手塚先生の作品を手がけることが出来て感慨深いです」と語ってくださいました。
作品の長さは1時間弱。今回は「BIGINS」ということで、リボンの騎士が初登場するシーンまでが収録されます。
男性が女性を演じること自体、相当難しいに違いない、と思うのに、少女でありながら、男女両方の心を持っている、というややこしい!?サファイア。そんな主役を演じた山口勝平さん、手塚作品にはもちろん、幼少のころから親しんでいて、一番好きな手塚作品は『ぼくの孫悟空』で、虫プロダクション制作のアニメーション『悟空の大冒険』は特にお好きだとのこと。ご自身の会社の名前も「悟空」
そんな山口さんに、サファイアという役の難しさなどを伺いました。
山口勝平さん(以下山口):これまでの、役者人生の中で、初めての体験でしたので。どうなることか、どんな風になっちゃうんだろう、と自分自身、予測がつかない部分もたくさんあって、心待ちにするような、怖いような、という気持ちで朝スタジオに向かいました。
台本は一週間ほど前にいただいて、原作も読ませていただきました。手塚先生の作品の中でも『リボンの騎士』って、少女漫画に属するじゃないですか。先生の作品はは大好きでずいぶん、読んできましたけど、そういえば『リボンの騎士』って原作読んだことがなかったな、って。で改めて読んでみて、こんなストーリーだったんだ、と。 手塚先生の作品と、まさかこういう形で、出会うことになるとは思ってなかったので(笑)、『リボンの騎士』というビッグタイトルをやらせていただいて、聞いてくださる方たちや、手塚先生のファンの方たちが、果たしてどこまで楽しんでくれるんだろうか、と。(笑)
山口:結果的には面白かったですね。実際、女の子のサファイアが男の子のふりをしているわけですけれども、演じる側は、男の僕が、女のふりをしている、という。女の子が男の子のふりをしている、というのはどういう感じなんだろうな? 感情の持っていきかたとか、声の出し方も変わってくるのかな? と想像しながら演じました。
とはいえ、最初はやっぱり、戸惑いました。戸惑いますし、どうしても手塚先生の絵が第一に思い浮かんできちゃうんで、サファイアを演じるにあたって、むしろ自分自身への違和感を払拭していく作業に時間がかかりました。CDの中には、迷いや試行錯誤もそのまま入っちゃってるんじゃないかな、と思います。
山口:最初は、サファイアは男の子も女の子もさほど差をつけなくていいんじゃないか? 音色は切り替えずに、気持ちで切り替えればいいんじゃないか、と思ったんですけど、やっぱりドラマCDなので、ある程度切り替えてあげないと、今『男』なのか『女』なのか分からなくなりますので。でも、同一人物という意味では、サファイアって、ボーイッシュな女の子というイメージでもいいかな、と思ったんですよ。それが、今度亜麻色の髪の乙女になったときは、がらっと雰囲気を変えたかったし、リボンの騎士になったときはサファイア王子の時よりもりりしく、というか。そうですね、たとえれば宝塚みたいな。
こういったものをギャグとしてではなく、まじめに取り組んでみる試みが「メンズオンリー」の面白さなのかなと思います。
けど、手塚先生が聞いたらなんておっしゃるかな!? なんて、ちょっと考えちゃいますけど。
山口:うーん……。今でよかった、かな(笑)。
山口:この一枚で自分の中でも方向性が見えてきたので、もう少し突き詰めて、『サファイア』というキャラクターを自分の中でどこまで安定させることができるか、興味はあります。そのためには次のステージがないと、それを試すことも出来ないので、ぜひとも続きはやりたいです。
山口:特に女の子のほうのサファイアには、心血を注いで上げたいな、と思いますね(笑)。
山口:手塚先生は、僕の生まれる前から漫画をお描きになっていて、亡くなってから何年も経つのに、世代を超えて浸透していますよね。今回演じたキャストにしても、世代に関係なく、必ずひとつはお気に入りの手塚作品を上げることが出来ますから(※各キャストの好きな手塚作品などの質問に答えるフリートークCDは、予約特典で手に入ります!編注)。
今回『リボンの騎士』を読ませていただきましたが、一こまごとの絵の
手塚先生のファンの方は、もっともっとこの作品をご存知でしょうし、そんな方々がこのCDをどういうふうに評価してくださるか、すごく楽しみでもあります。広く長い目で見てやってください(笑)。
山口:それはもう、絶対、悟空です!
僕は、虫プロダクションのアニメの『悟空の大冒険』が大好きで、手塚先生の『ぼくの孫悟空』もすごく好きだったので。数年前の映画化の時も実はすごくやりたくて。悟空は子供のころのヒーローで、孫悟空をやりたくて役者になったようなところもあります。その原点が『悟空の大冒険』の悟空なんです。もし、また手塚アニメで『孫悟』の企画があったらぜひやらせてください!
男性声優ばかりで演じられるこの「メンズオンリーシリーズ」、他にも『ベルサイユのばら』や『美女と野獣』シェイクスピアの『真夏の世の夢』やオルコットの『若草物語』などなど、名作からマンガまで、幅広いラインナップが今まで発売されています。
この企画のねらいなどについて、株式会社モモアンドグレープスカンパニー代表取締役 富岡信夫さんにお話を伺いました。
富岡さん(以下、富岡):弊社では、声優さんを使って名作の朗読CDから若い女性向けのBLCDドラマなど、さまざまなジャンルの商品を取り扱ってきました。その中で、男性声優のファンの属性が、宝塚のファンにとても近いな、と感じていたのです。
男性ばかりがキャスティングされる、ということで、違和感があるかたもいるかも知れませんが、演劇の歴史の中には、イギリスの、シェイクスピアなどが活躍したエリザベス朝演劇や、日本の歌舞伎など、男性のみがキャスティングされる形式も存在するのです。宝塚は女性ばかりで演じるでしょ? それなら声優界にも男性声優だけをキャスティングするドラマCDというのも、ひとつのジャンルとしてありうるんじゃないか? と思ったのです。それで、「やってみよう」ということで、第1弾として『赤毛のアン』からスタートしました。
富岡:女性役、ということがうまく伝わらないこともあります。声を高く出さなくてはならないのではないか? というふうに考える方もいらっしゃいます。そうではなくて、声優さんの生まれ持った素材で演じたらどうなるか、ということなんです。オカマっぽく演じる、ということでもないし。男性の役者さんが女性の役をもらったら、自分の世界でどう演じるか、という。逆に、それ以上は望んでいません。あるいはBLの世界とも違う解釈で演じていただきたいと考えています。正統派の演劇作品と考えています。
声優さんの持つ演技の幅には、かねてから着目していました。たとえば、40代、50代でも少年のキャラクターを演じることが出来る方もいらっしゃるじゃないですか。ご本人のパーソナリティとは違う、声のイメージだけでキャスティングが可能なわけです。そういった幅の広さをドラマCDなら生かすことはできるんじゃないか? と。
富岡:手塚治虫先生の作品は必ずいつかやろう、と考えていて、実は去年『MW』も企画をしていたんです。ところが『MW』は昨年映画になりましたので、あきらめて。改めて『リボンの騎士』を企画して、手塚プロダクションに確認のをとったところ、以外にも「面白いですね、そんな企画、考えたこともなかったです。やってみましょう」といううれしい言葉をいただいて。ダメモトの気持ちだったのですが(笑)。日本を代表する漫画家である手塚先生の作品をラインナップできて、われわれとしては心強く感じています。
富岡:『リボンの騎士』もアニメ化されたり、舞台化されたり、さまざまなメディアでいろんな方が『リボンの騎士』を演じています。今回の山口勝平さんのサファイアも、そんないろんな“バージョン”のサファイアの一人、として捉えていただきたいです。
富岡:まだ『リボンの騎士』もほんのはじめのところだけですので、『リボンの騎士』はぜひ完結まで続けたいですね。別の作品なら『ジャングル大帝』をやってみたいんですよ。メンズオンリーで可愛らしいレオを演じる、というものがあっても良いと思うんですよ。
まずこの作品をだしてみて、反応を見てみたいですね。他の作品はもちろん、『リボンの騎士』もまだまだ始まったばかりなので、第2弾、第3弾、と育てていきたいです。
そんなメンズオンリー版『リボンの騎士』、発売は今月、1月27日。予約特典として役者さんたちのフリートークがついてくる、という特典もあります! 手塚作品について、キャストの方々が
最後に、山口勝平さん、富岡信夫さん、お忙しい中インタビューにお答えいただき、ありがとうございました!
<関連リンク>
「リボンの騎士」商品ページ
http://www.bana10.com/list/bana10.cgi?MODE=0&DEF=list4&FILE=data&CLASS=all&SEARCH=MOMO-8008
モモアンドグレープスカンパニー
http://www.momogre.com/index.html