虫ん坊読者の皆さん、あけましておめでとうございます!
新春1度目の「オススメデゴンス」は、日本の少女漫画の第1号、と言われる記念碑的作品、『リボンの騎士 少女クラブ版』を紹介します! 2011年の今でもサファイア、充分かっこいい! 永遠の女子の夢です。
お正月休み、こたつでまったりしながら、サファイアの勇ましい活躍ぶりを堪能しましょう!
解説:
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『リボンの騎士 少女クラブ版』あとがきより)
(前略)…
昭和二十七年の秋に、当時「少女クラブ」の編集者だった牧野さん(その後、編集長から役員までになり、現在は出版社の社長です。)が来られて、『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』のようなストーリー漫画を、少女ものとしてつくれないだろうかと、相談をもちかけられたのです。ぼくは、すぐ、女の子に人気の高い宝塚歌劇の舞台を漫画におきかえてみたらどうだろうと思い、やってみましょう、とご返事しました。
…(中略)…
それにしても、『リボンの騎士』はたのしい仕事でした。もうお話が大団円にきてしまったのに、読者の要望でさらにのばさなければならなくなりました。しかたなく「人魚姫」のお話をくっつけたりしました。この「少女クラブ版」だけに登場するメフィストは、最近作の『ドン・ドラキュラ』の原型だと思います。これをなぜ「なかよし版」で、魔女ヘル夫人に変えてしまったのか、自分でもよく分かりません。
…(後略)…
<Amazon: 少女クラブ版 リボンの騎士(1) (手塚治虫漫画全集 (85))>
王女でありながら王子として剣を取るサファイア。男装の麗人というのはロマンチックで、女の子の永遠の憧れですが、『リボンの騎士』の、少女漫画的な絵柄やフランツとの恋物語といったお伽話の要素と、ヒーロー・サファイアを主人公にした陰謀あり戦いありの手に汗握る冒険譚をうまく融合させるのが、サファイアの男と女両方の心を持つキャラクターともいえるでしょう。
彼女の脇を固めるキャラクターもまた、この物語をさらに面白くしています。天使チンクやフランツの主役クラスはいうまでもなく、脇役もなかなか味があり、特に喧嘩ばかりしていてもいつも一緒の乳母と博士などはいい味出しています。
ヒロイック・ファンタジーをさらに盛り上げる敵役、サファイアの王位を狙うジュラルミン大公と参謀ナイロンもまた、ずるがしこさ、憎たらしさ申し分ない名キャスト。結構可愛い外見がご愛嬌のこの二人は手塚スターとしてしばしば他の作品にも登場します。 そして最強の悪役、魔王メフィストもまた、魅力的な魔法使いです。自在に変身し、縦横無尽・神出鬼没に活躍する姿はなんともかっこいいのですが、実は娘ヘケートにはめろめろで、そんなところは憎めない、イチオシなキャラクターです。
天使や言葉をしゃべる動物たち、お城の王女さまと隣の国の王子様の恋といったお伽話、王位争奪の陰謀や悪魔との対決という冒険譚的ストーリーが同時に楽しめる『リボンの騎士』は、何度読んでも面白い、上質な物語漫画です。