いざ、「火事だ!」「急病人だ!」という時、みなさんが119番に電話をすると、サイレンを鳴らしながら駆けつけてくれる消防士や救急救命士さんたち。災害に立ち向かってゆく
東京都の消防活動を
東京都の中でも新宿消防署の多忙さはトップクラス。火災のほかにも救急の要請も多く、毎日が大忙し。日本有数の巨大繁華街「歌舞伎町」が管轄内、ということで、特に救急案件が多いそうです。
「新宿消防署だけでも、年間150件から170件ほどの火災が起こっています。救急はもっとずっと多いですね。歌舞伎町を管轄する大久保出張所の救急隊の年間救急出動件数は3500件で、東京消防庁で一番出場件数の多い救急隊です」
今回の取材でお話を伺った東京消防庁新宿消防署 副署長・
「予防課の課員がほぼ毎日管轄内を回って、飲食店などの防火管理について点検しています。2003年に44名の方が亡くなった歌舞伎町のビル火災が発生しましたが、今でも、新宿消防署のエントランスの広場には、あの悲劇を繰り返さないために、という願いを込めて、歌舞伎町火災の対策本部に使用した看板をモニュメント化して掲げています。私たちはそこを、モニュメント広場と呼んでいます」
そんな新宿消防署の火災予防の取り組みのなかで、住宅用火災警報器をつけるキャンペーンに力を入れたところ、管轄内の世帯のなんと約80%が警報器を設置し、東京消防庁の消防総監賞を獲得したそうです! 今年の4月から今は条例で設置が義務化されていますが、新宿消防署では義務化の前から、管轄内の人々に設置をオススメしていました。火災の減少はその成果でもあるんですね!
「署員の中には、普通の事務所のように、朝から夕方まで週休二日で出勤する「毎日勤務」グループと、三交替で当番勤務に当たる「交替制勤務」グループがいます。交替制勤務の署員は朝の8時半から翌朝の8時半まで消防署に泊り込んで出動要請に備えています」
特に救急要請に応じる救急隊員さんたちはハードです! いただいた資料から消防署員の一日を紹介しましょう。
8:30 | 大交替・点検 | 前のグループから仕事を引き継ぎ、装備や車両の点検を行います。 |
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9:00 | 出場訓練 | 点検が終了した後で、実際に出動する手順をリハーサル。装備を装着して車に乗り込むまで、なんと1分以内が目標。厳しい! |
10:00 | 事務処理 | 消防署員は全員、事務仕事をもっていらっしゃるそうです。自分の担当の事務仕事を午前中にこなします。 |
13:00 | お昼のあとは体力づくりのトレーニング。筋力トレーニングや体力向上のためのランニングなどをします。自主トレをつむ人も多いとか。 | |
13:30 | 訓練 | 建物の2階などに取り残された人を救出する、など、実際の災害の状況を想定しての訓練をします。 |
18:00 | 点検 | もう一度車両等の点検。夜の出動が多い新宿消防署では重要な点検になります。 |
20:00 | ミーティング | 法律の改正、仕事に係る手順等についての確認や知識技術の情報共有、訓練や現場活動について意見交換を行います。 |
翌朝8:30 | 大交替 | 次のグループに仕事の内容を引き継ぎます。これでようやく終了。 |
もちろん、勤務中どの時間でも、出場要請があり次第現場に駆けつけることに。特に新宿消防署の管轄内では、深夜から
「仮眠室もありますが、夜間の出動が多いため救急隊員用には別室を設けました。でも、当番の日はほとんど眠れませんね…」
とのこと! 大変なお仕事です。
ちょうど取材にお邪魔した日は、消防署員の家族に職場紹介をする新宿消防署のファミリーデーでした。訓練の様子を見学ができる、ということで、夏休み中の小学生やもっと小さな子供たちなどの職員の家族が見守る中、特別救助隊の訓練が行われました。その模様を写真と文章で紹介しましょう!
隊長の号令で訓練が始まりました。
まずは建物の階段部分をつかって、隊員たちがより高いビルの屋上に向かいます。
「大丈夫ですか!」と負傷者に声かけを行いながら、隊員がロープで低いほうの屋根部分に下ります。ロープ一本で三メートルぐらいある高さをつたい降りていく場面は、プロフェッショナルの特別救助隊と分かっていても、ひやひやもの。
けが人は「
高いビルから何本ものロープでつりおろします! これは緊張する!
無事に下に下ろされた負傷者(今回はお人形です)を担架で運ぶ隊員。無事に訓練が終わりました。
新宿の特別救助隊員は東京の中でも屈指のエリートたちだそうです!
「厳しい勤務をこなすのは、特別救助隊員だけではありません。毎日勤務の署員も、20日に1度程度、当番の勤務をします。なので署員はみんな、オフでも体を鍛えなくてはと、さまざまな活動を行っていますよ。たとえばこの新宿消防署の上には、体育館があります」
体育館!? なんと署員の方々は、運動部や文化部などの部活をしているそうです。仕事の緊張をほぐしたり、隊員の絆を固めたりするのにも効果がありそうですね!
ところで、冒頭でもご紹介したとおり、新宿消防署は手塚プロダクションのある「高田馬場4丁目」を守ってくれる消防署でもあるのです! 実は、手塚プロダクションでは、新宿消防署の署員さんたちに配られるTシャツのワンポイントに、キャラクター使用をライセンスさせていただいております!
「われわれの管内で特徴的なものといったら、なんだろう? と考えて、まずは「歌舞伎町」が頭に浮かんだんですが(笑)、イメージ的にもう少し、親しみやすいものはないかな? と考えたときに、手塚プロダクションさんが管内にありました」
いろいろ頭を悩ませていた関さんがある日、新聞を見たところ、鉄腕アトムが新宿区の特別児童として小学校に入学した、というニュースを見かけたそうです。そこで、アトムはどうか? と思いつきました。
そこで、日頃から新宿消防署しか出来ないものを作りたいとおっしゃっていた署長と相談された上、Tシャツとピンバッジのデザインに、鉄腕アトムのワンポイントを取り入れることになったとか。
「はじめはだめでもともとで手塚プロダクションに電話をしたのですが、営業一部で検討いただき、無事ライセンスいただけることになりました」
当番の勤務がある消防署員には、着替えとしてTシャツが支給されるのが一般的だとのこと。各署でさまざまなデザインにしているそうですが、署員に喜んでもらえるようなものにしたい、とピンバッジも含め考えたそうです。皆に親しまれ、正義の味方のイメージの強いアトムは、確かに消防署にはぴったりかも!
「心優しく、百万馬力で、正義の味方なのが、アトムでしょう? 新宿管内の消防署も、アトムのように町の方々に親しまれ、頼られる存在になりたいという願いと、新宿の安全と安心はわれわれが守るという気概をもって、アトムのTシャツを着て勤務し、通勤時にはピンバッジをつけて、毎日がんばっていますよ!」
最後に、消防署員についていろいろ、伺いました。消防署員になるためにはやはり、採用試験を受けられるんでしょうか?
「消防職員になるには、東京消防庁の実施する採用試験を受けます。合格すると、東京消防庁の職員になります。身分上は東京都の公務員ですが、みな、消防職員を目指して狭き門をくぐってきた人たちです」
難しい採用試験を受けて署員になった後も、皆さん自己鍛錬や勉強を怠らないそうです。採用後、消防学校で約1年間の消防士になるための教育課程を受けるのは、消防署員全員が同じ。その後、晴れて現場配属になりますが、配属後もキャリアアップのために、研修を受けるのが一般的だとか。
「管理職は1年に一回は管理職研修が義務付けられていますし、たとえば、救急救命士や特別救助隊などの特別なスキルが必要な役職を目指す場合や階級が上がった場合など、そのための勉強をつむためにしばしば、再度消防学校に通います」
常に向上心を持って、
また、転勤が多いのも特徴。3年から5年に一度は必ず転勤することになる、ということで、関さんも新宿消防署に勤務される前は、
「実は30年ほど前に、最初に配置になったのも、この新宿消防署だったんですよ。そのころはまだ駆け出しだったから、近所の八百屋さんやパン屋さんに買出しに行ったりしていましてね。いくつかお店が残っていたから、ご挨拶に行ったら、覚えていてくれて。『関さんでしょ?』って言われて、懐かしくて涙が出てきちゃって」
地域に密着して、真剣に地域を守る消防署ならではの心温まるエピソード。これからも私たちの新宿を、どうぞよろしくお願いします!
そして読者の皆さんは、くれぐれも事故や火事には気をつけて! 日ごろからの心構えが重要ですよ!
取材にご協力いただきました関さん、新宿消防署の皆さん、本当にありがとうございました!
<リンク集>
新宿消防署
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-sinjyuku/index.html
東京消防庁
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/
総務省消防庁
http://www.fdma.go.jp/