徳間書店から発行されているコミック雑誌「月刊COMIC リュウ」から、
一度読み切りで登場した本作が、満を持して登場! 虫ん坊では、徳間書店・「月刊COMIC リュウ」編集部にお邪魔して、作者の福山けいこさんと、同誌編集長
9月7日生まれ。東京都出身。A型。個人誌「ふくやまジックヴック」で注目され、旧「リュウ」が連載を依頼、『エリス&アメリアゼリービーンズ』を皮切りに、マンガ家・イラストレーターとして大活躍。
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丸みのある線で描かれる、少年・少女や、動物の絵に、たまらないキュートさがある福山けいこ先生。手塚治虫のアトムやレオにどこか共通する味わいがあるなあ、と思っていた読者の方も多いのではないでしょうか?
最近は同じく「月刊COMIC リュウ」で連載されていた『ひなぎく純真女学園』でのほのぼのとした女子高の毎日の描写が記憶に新しく、「週刊マンガ日本史」(新潮社)シリーズでは『
「僕は昔から手塚ファンなので、『COMIC リュウ』創刊(2006年9月)の前にも『SF Japan』という小説誌で〈手塚治虫特集〉(2002年)を組んだりもしていました。
リメイクをされるにあたって、福山先生を選ばれたきっかけは?
「福山さんはぜったい、手塚治虫が好きだ、と思ってましたから。福山さんのリメイクなら、手塚プロダクションを始め、ファンの皆さんも納得してくれるんじゃないかな? と思いました」
とのこと。
では、なぜ数ある手塚作品で『ふしぎなメルモ』を選ばれたのでしょうか?
「福山さんの作風にあっている、というのもありますが、『ふしぎなメルモ』は幼年誌の連載だったこともあって、手塚先生も描ききった、という感じではないじゃないですか。アニメとしての知名度に比べると、マンガはあまり知られていませんよね」
確かに、マンガ『ふしぎなメルモ』は全部で33話ありますが、「小学一年生」や「よいこ」「てづかマガジンれお」などの幼年誌に掲載された子供向けの作品。子供向けの分かりやすい作品ではあるのですが、中高生や大人が読むにはちょっと物足りないかも……?
「テーマ性や哲学的な部分で手塚作品と"勝負"するのは難しいですよね。たとえば、福山さんの絵柄から『W3』とかのリメイクを考えてみたのですが、あの作品はストーリーがしっかりしているので、別の話にしてしまうわけにもいかないでしょう。ストーリーよりもキャラクターと設定が中心にある作品のほうが、オリジナリティも出ますし、もともとの手塚ファンの皆さんにも楽しんでもらえるんじゃないかと思ったんです」
そこで、2009年10月に読み切り作品として福山さんの『メルモちゃん』が登場、好評を期してついに連載が決定! 編集長のお話どおり、10月号第1話はゲストキャラクターも相当マニアックな手塚キャラクターがさりげなく登場し、手塚ファンならにやっとする作品になっています!
もちろん、読み切りに登場したアトム演じるトビオや、メルモの姉となった『リボンの騎士』のヘケート演じるケートなど、ディープファンでない人がみても「手塚キャラだ!」と分かるキャラクターも登場します。
「お話を考えているときはマルチョンの顔で、そこにいろいろ、キャラクターを当てはめています。読み切りの時に悪役としてランプを出したのですが、なんだかあんまり似なくって(笑)。ランプといったら悪役なんですけど、手塚先生のキャラクターを悪役に描くのがなんとなくしのびなくって……」
たしかに、読み切り版で登場したランプはどこか優しそう。案外そんなに悪い人じゃないかも……? という顔つきでした!
「手塚治虫先生のマンガは、上の姉兄が読んでいたので、2、3歳のころから見ていました」
という福山先生。影響を受けた作品は『ジャングル大帝』や『W3』。特に動物の絵には作画上も影響をうけたそうです。
「私が動物を描けるようになったのは手塚先生のおかげ、といっても過言ではありません! レオの足の太さだとか、体のつくりなんかを見た後で、本物のライオンを見て「そっくりだ〜!」って思ったんです! 手塚先生は本物の動物を見て描いているんだから、逆なんですけどね(笑)」
当時はとにかくほとんどのマンガ雑誌に手塚治虫のマンガが載っていて、買った雑誌に掲載されていたら必ず読んでいたそうです。「この人なら間違いなく面白い」という信頼感がありました、と福山さん。マンガ家としてデビューしたころ、アニドウ(東映動画、虫プロ、東京ムービーなどで働くプロのアニメーターたちによって作られた組織。アニメーションの研究・交流を中心に活動しています)の事務局で電話番のバイトをしていたころ、趣味の落書きで、手塚キャラクター総出演の『漫画のようなもの』を描いたこともあるそうで、それをアニドウの代表、なみきたかしさんに見せたところ、後日、パーティーの席で手塚治虫に「手塚さんのファンですよ」と紹介されたそうです。
事前になみきさんから福山さんの原稿を受け取って読んでいた手塚治虫は、照れ隠しからか「でもあなた、僕より宮崎(駿)さんのファンなんじゃないの?」と言ったとか。うーん確かに、福山さんの絵柄には宮崎テイストも感じられます!
しかし実は、福山さんによる手塚作品の本格的なリメイクはこの『メルモちゃん』が初めて。手塚キャラクターを改めて漫画で活躍させてみての感想はありますか?
「このキャラクターはどういうキャラクターか、というのを説明せずに描けるのはとっても楽ですね! 手塚先生のキャラクターは絵的にとても完成されていて、性格と外観がぴったり、という感じで大変描きやすいです。そしてキャラクターを、白黒の割合でハッキリ特徴つけるのが物凄く、うまい! 何度も漫画を読んでいるのに、実際描いてみて、今回初めてスピードを求められる仕事上、最高に効率の良い(ベタ部分を黒く塗った時点で完成)優れたデザインの、その力に気づいてビックリしました。メルモちゃんなら、この前髪のはねているところがポイントですよ! これがあればどんなに変装してもメルモちゃんって分かりますよね!」
『ふしぎなメルモ』のアニメでも、ウサギや犬になったメルモには必ずこのぴょんと跳ねた前髪がついていましたよね!
他に描いてみたいキャラクターは……?
「一番出したかったのはヘケートだったけど、もう描いちゃいましたし……。あとは、『バンパイヤ』が好きなので、『バンパイヤ』のキャラクターは出すかも知れません」
『メルモちゃん』本編で福山版トッペイが見られるかも!?
しかし、「月刊COMIC リュウ」の読者層に手塚治虫作品はフィットするのでしょうか? 率直なところを大野さんに伺ってみました。
「確かに20代から30代の読者になると手塚治虫のリアルタイムのファンではないでしょう。『ふしぎなメルモ』だってアニメの本放送(1971年10月〜1972年3月)を見ていたのは40代以上だし。でも、手塚治虫作品というのは全世代が必ず知っているじゃないですか」
たとえ20代の読者でも必ずぴんと来るはず、と大野さん。若い読者といっても、たとえば学校の図書館に手塚マンガがおいてあったりして、
むしろ若い世代のほうがごく自然によく読んでいるはず、と見ています。
「現在マンガ誌は爆発的に増え、種類も細分化していますが、『月刊COMIC リュウ』はどちらかといえば昔ながらのマンガファンでも満足できるような誌面を考えています。マンガ誌ではありますが、小説や映画のファンにも楽しんでいただけるような感じ、アキバ系というよりジンボウチョウ系みたいな雑誌ですね」
開いてみると、ほのぼのとした日常を描く漫画からハードなSFやマンガ評論まで、幅広い連載が楽しめます。大人が読んでも満足感の高い作品群や、多様性のある執筆陣が魅力です。
「徳間書店ではかつて『リュウ』というSF&ファンタジーを
別冊冊子も毎月凝っています! 突発的に企画が決まった、という10月号の付録は「はやぶさ」特集。宇宙ファンのみならず、楽しめる一冊です!
今後、『メルモちゃん』はどのような展開になっていくのでしょうか? 気になる次号以降の展開は……?
「秘密です! でも、まだ小学生なのに両親を事故で亡くしていたり、きびしい境遇のメルモちゃんに、幸せな日常を送ってほしいなぁ、と思っています」
と福山さん。原作とは違って優しいおじさん・おばさん(キャストは『W3』の真一の両親!?)とケートお姉さんと、楽しい毎日を送るお話になるのでしょうか? 気になるトビオ君やロックとの関係は?
「それもまだまだ、秘密です!」
うーん、次号以降が楽しみです! まだ読んでいない方で、本編が気になった方、ぜひ「月刊COMIC リュウ」をチェックしてみてください!
©手塚プロダクション/福山けいこ 2010