皆さんは、ブライスというお人形をご存知でしょうか?
大きな目が印象的な、まるで少女マンガの中から抜け出してきたような顔立ちと、カスタマイズの多様性から、ジャパニーズ・ポップカルチャーのひとつの代表として、海外でも評価の高いファッションドールです。名前は知らなくても、テレビのコマーシャルや広告などにも出演していることから、その印象的な顔立ちを覚えている人も多いのではないでしょうか?
その、ブライスが日本で商品化されてから今年は9年目。この9年間、毎年、チャリティ展覧会が行われていますが、今年のテーマは「Manga Girls Inspiration」。日本のポップカルチャーの代表ともいえる「マンガ」の登場人物たちを、ブライスが演じる、というコンセプトで、手塚治虫の作品からは「ブラック・ジャック」が選ばれています。
おしゃれな女の子のイメージのブライスがブラック・ジャックに扮する、という意外性、これには何か狙いがあるに違いない、と、虫ん坊ではブライスのクリエイティブ プロデューサーで有限会社クロスワールドコネクションズ(以下CWC)代表・ジュンコ・ウォングさんにお話を伺いました。
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ブライス9周年アニバーサリー チャリティ展覧会にB・Jが参加
ウォングさんはアメリカ・メイン州生まれのハワイ育ち。お母さんが日本人で、宝塚歌劇団の女優をされていたそうです。手塚先生ももしかすると、ウォングさんのお母さんの舞台を見ていたかもしれません。
「私の憧れのブラック・ジャックです。一番初めに恋に落ちたのが、ブラック・ジャック博士だったんです。実在の、本当にいる男の人だ、と思って好きだった男性ですね」とウォングさんはうれしそうに話してくださいました。小学校2年生ぐらいのときだったそうです。
「私はハワイで少女時代をすごしたので、日本語を読めるようにと、義父が漫画を毎月日本から取り寄せてくれたんです。少女雑誌の『りぼん』や、『ブラック・ジャック』や『三つ目がとおる』のコミックがありました。そこで、ブラック・ジャック先生に出会って。初恋でしたね」
ウォングさんはブラック・ジャックを愛と敬意を込めて「ブラック・ジャック博士」と呼んでいらっしゃいました。
ブライスが日本に紹介されて、今年で9周年。チャリティイベントを毎年開いて、ブライスはさまざまテーマを取り入れてきました。
「その間にブライスというドールが世の中に紹介され、今までと全く違うドールの文化が生まれました。ブライスはもともとアメリカで生まれたドールですが、皆さん、日本のドールだと思っているみたい。特に、ヨーロッパやアジアの人たちの中では、ジャパニーズ・ポップカルチャーだというふうに思っている人が多いです。アメリカ生まれのブライスも、私たちが育てていく中で日本人になった、というような」
ウォングさんご自身もブライスと同じような経歴の持ち主。ブライスに親近感と特別な愛情を持っているそうです。
「そして、もうひとつのジャパニーズ・ポップカルチャーといえば、『マンガ』の文化でしょう。過去8年間の間に、日本のポップカルチャーとして認められたブライスと、マンガが、ひとつになる時期が来たんじゃないかな、と思って、『マンガ』というテーマを選びました」
今回「マンガ」というテーマで参加するマンガ作品は全部で17作品。手塚治虫の「ブラック・ジャック」をはじめ、石ノ森章太郎「サイボーグ009」や、「ミンキーモモ」、「フィリックス・ザ・キャット」などの有名な作品がそろっています。
この17作品になった理由を伺いました。
「この取り組みはチャリティなので、チャリティに対して理解をしてくれる作者やプロダクションの方を選んでいます。ライバル同士の作品が一堂に会することに違和感がない方、ということも大切ですね。ほかのイベントやプロジェクトの場合は、ライバルのブランドが参加するなら私たちは遠慮します、という方々もいらっしゃいますが、このイベントはチャリティなので。それを理解していただくことが大切です」
チャリティイベントということで、それぞれの人形も基本的には出展する参加者が作るのが大前提。人形を制作したのはなんと99組もの個人と団体。17作品中15作品は、プロダクション側に人形を作ることが出来なかったので、クリエイターの方とコラボレーションしての参加になったそうです。
「基本的には、私たちは元となる人形を渡すだけ。カスタマイズは参加者自身が行います。そうすることでチャリティに参加したことになります。そこも参加クリエイターや作品の権利者の方にご理解をいただいています。私たちは、ドールのカスタマイズを出来ない権利者の方にはクリエイターを紹介するなどの対応をしています」
中にはもちろん、自分の作品を自分の手で作ることが出来る権利者の方もいらっしゃいます。CLAMPさんはブライスのファンとしても有名で、今回は人気作「カードキャプターさくら」で出展するそうです。
17のマンガの作品以外にも、クリエイターやファッションブランドの方々が独自に考えたオリジナルのマンガキャラクターや「マンガガール」にインスピレーションを受けた作品も勢ぞろいするそう。アメリカのブランドやクリエイターなども参加し、そこはまたぜんぜん違った「マンガ」世界が広がっているとか。同じブライスという人形をカスタマイズすることで、ここまでの広がりがあるのか! とびっくりすることは請け合い、ということです。
「今まで、『ものがたり』や『ミュージシャン』、『シネマ』などのテーマを扱ってきましたが、そのたびにブライスの可能性を紹介してきたと思っています。私たちはブライスの『遊び方』を紹介して、そのたびにブライスの世界を広げてあげているんです。
ブライスを通じて、マンガのキャラクターを作ってそれを紹介する、っていうのは、東京ポップカルチャーのひとつのミーティングポイントになると思います。そこで、作家の人たちやファンの人たちがそれを見てマンガに興味を持つ、とかね。『あ、このキャラクター思い出した』とか、『私もブラック・ジャック大好きなの!』っていう会話が飛びますね。また、表現されたドールの話題がでます。『こんなのが出来るんだ!』とか『そっくりだった』とか、『顔に傷をつけていてもかわいかった』とか。
ブライスは、何があってもかわいくなきゃいけないんです。『かわいい』がキー・ワードですね。
でも、ブライスって本当に可能性がいっぱいあるので、何をやっても基本的にはファッショナブルにみえるんです。それから、ストーリーを感じさせることがとっても大事だと思うので、ストーリー性があるものを選んでいきたいと思っています。来年の10周年も面白いので、楽しみにしていてください」
手塚プロダクションのキャラクターからは「ブラック・ジャック」が選ばれましたが、ブライスのスタイリングは手塚プロダクションでは行いませんでした。なんと、ジュンコ・ウォングさんの率いるクリエイター集団「Junie Moon」とコラボレーションし、作っていただきました。
ほかにもたくさん、手塚作品はありますが、今回はジュンコ・ウォングさんのたっての希望で、ブラック・ジャックが選ばれたとのこと。人形作りもとても熱意を込めて取り組んだそうです。
女の子の人形に、ブラック・ジャックのトレードマーク、顔の傷を入れるのは、ちょっと勇気が要ったんじゃないでしょうか?
「はじめにあがってきたものは、おそらくそういう気持ちだったんだと思いますけど、顔の傷が無くて。『ブラック・ジャック博士は傷が入ってなければかっこよくない』といって戻して、傷入れてもらいましたね。
もちろん完成版では、傷の表現も顔の色の違いも、きちんと表現されています。仮面をかぶっているかのような、ミステリアスな雰囲気が、ブラック・ジャックの魅力を感じさせます。
「髪の毛も、普通、元のドールに似た髪の毛があったら、そこからヘアメイクをして作っていくのですが、ブラック・ジャック博士に似た髪の子はいなかったので、髪の毛を切って、帽子のようにフェイクファーで作った髪をかぶせています」
独特のワイルドな髪はそうして作られたのですね。マントの裏地は赤く、丈もすこし広がっていて、女の子のドールらしさもきちんと残っています。男装の麗人のような雰囲気がなんとも魅力的。
「私たちJunie Moonのメンバーは、みんな女性です。だから何をやってもどこかかわいらしくなっちゃうのかも」
というチーム・Junie Moonは、全員がそれぞれの役割を分担し、ひとつのドールを作り上げていくそうです。チームワークをとっても大切にしているそうですよ。
もともとはアーティストで、自ら絵を描くなどの活動をしていたウォングさん。アーティストのプロデュースや、ブライスの紹介をするようになったきっかけは何だったのでしょうか?
「女の人はいざとなると強い、というか。私と夫は二人ともアーティストだったので、家族を守るためにはどちらかがギブ・アップしなくちゃいけない、というときに、私は夫をサポートする側になることを決意しました。初めて日本に来たときには、大阪にいたんですけど、70年に一度という大変寒い冬でした。夫と私で展覧会などをやっているうちに、大阪のアーティストたちと交流ができて。彼らと話していると、『何で、楽園のようなハワイからわざわざ日本に来てるの?』って言われたんです。『僕たち、ハワイで展覧会ができたらとってもすばらしいのに!』って。そこで、なるほど、と思って」
1986年にハワイと日本のアーティストが100人参加する交流展を行い、それが成功を収めたのがきっかけでフリーランスのプロデューサーに。そこから91年にCWCを設立したそうです。
CWCではブライスのエージェントとしての活動のほか、さまざまなアーティストのプロデュースを手がけています。アーティストとしての目が、ブライスが日本に受け入れられることを見抜いたのでしょうか?
「私もブライスも、アメリカで生まれながら、日本の文化や日本人に受け入れられて、大事にされています。心は私もブライスも、日本人のセンシビリティを持っているんです」
「ブラック・ジャック博士って、本当にいるよ! って(笑)。ブライスの演じるブラック・ジャック、自分の目で確かめに来てください!」
BLYTHE is a trademark of Hasbro. © 2010 Hasbro. All Rights Reserved.
BLYTHE character rights are licensed in Asia to Cross World Connections,Ltd. Licensed by Hasbro.
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「Manga Girls Inspiration(マンガガールズ・インスピレーション)」についてのくわしくは、ぜひこちらでもチェックしてね!
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