マンガマンガ

七色いんこ

1981/03/20-1982/05/28

サブタイトル

1 ハムレット 1981/3/20 「週刊少年チャンピオン」

初日を二日後に控えた『ハムレット』の公演。しかし主役をつとめるはずの人気俳優がアメリカにわたったまま帰ってこない。彼は麻薬密輸にかかわりがあったとしてFBIに逮捕されてしまったのだ。舞台はどうなるのだと関係者はうろたえるのだが、スタッフのひとりが代役専門の名優がいるという噂を聞き込んで来た。それが通称、七色いんこだ。彼は天才的な変装術を駆使する男で、しかも歴代の名優たちに決して劣らない演技力の持ち主だった。演出家は試しにハムレットを演じさせ、その実力に舌をまいた。ぜひ代役を頼むと頭を下げる演出家に、いんこは囁く。「出演料はいらない。しかし公演を観に来た観客の中からひとりを選んで、そのものが身につけている貴金属を盗ませてもらう」と。彼は天才的な名優であると同時に、天才的な盗みのプロフェッショナルでもあったのだ。七色いんこが泥棒を働く現場を押さえ、彼を逮捕せよと命ぜられたのは千里万里子刑事。男勝りの刑事だが、彼女は極端な鳥アレルギーでもあった。果たして彼女は天才泥棒、七色いんこを捕らえることができるのだろうか? ゲスト 土方先生/可仁博士 鍬潟のガードマン/力有武 射撃場のマト1/丸首ブーン 射撃場のマト2/アセチレン・ランプ 射撃場のマト3/スカンク草井

2 どん底 1981/4/3 「週刊少年チャンピオン」

ゴーリキーの名作『どん底』で落ちぶれた俳優のペペル役を得意にしていた天才役者、楠本功。彼は役にもっと近づこうと劇団を去り、スラム街で暮らし始めていた。彼は人生の光から見放された人間たちが集まる安アパートに暮らし、すべての金を宝石に代えながらアパートの住人たちが稼いだ金をピンはねしている男の命ずるままに当たり屋を生業とするようになった。七色いんこは自分の車に跳ね飛ばされた男が、天才俳優の楠本だと見抜き、彼の再起をうながすため、劇団に『どん底』を上演させるよう画策する。自分が演じるペペル役が、楠本のハートに再び演劇への情熱という光を灯らせるだろう。そう信じて。 ゲスト あたり屋/ハム・エッグ

3 人形の家 1981/4/10 「週刊少年チャンピオン」

子供のように奔放で金遣いの荒い女ノーラと、彼女を人形のようにしか思っていない夫。ふたりの心のすれ違いと女性の自立を描いたイプセンの『人形の家』。そのノーラ役を自分の当たり役としている名女優のノーラ・ベントンは、実生活では共演者でもある夫を自分のペットか人形のように扱っていた。少しは夫として扱ってくれ、と懇願する彼に、ノーラは「大根役者が生意気なことを言わないで」と責め立てる。夫のジミーはそんな彼女に学生時代の時のような人間らしさを取り戻させようと、七色いんこに連絡を取る。そして一回だけでいい。ステージの上で彼女を圧倒するような演技を見せるぼくを演じて欲しいと頼む。天下の名女優と競演できるチャンスに七色いんこは喜んで承諾した。そして『人形の家』の千秋楽。いんこはノーラを演技で圧倒し、観客の喝采を彼女から奪い取った。プライドを失った彼女は、ジミーに当たり散らし、そして彼の愛までも失ってしまう……。 ゲスト ハロルド/ブタモマケル 手塚治虫/手塚治虫

4 修善寺物語 1981/4/17 「週刊少年チャンピオン」

その老画家は妄執に囚われていた。20年も前に依頼された当時の首相の肖像画。彼はそれをひと月の製作期間で仕上げることを引き受けていたのだが、完成した絵の中の首相には死相が現われていた。そのため、絵を引き渡すことが出来ず、画家は何度も何度も絵を描きなおし、画家としていちばん油が乗っている時期の20年間を無駄に費やしていた。彼にはふたりの娘がいて長女のほうは父親の絵を売って大金を稼ぎたいと考えていた。そのためにはもう10年以上も前に死去した首相の肖像画にこだわる父親の目を覚まさせなければならない。彼女の婚約者である画商は、七色いんこに死んだ首相を演じてくれと頼んだ。その上で「もう絵はいらない」と断ってくれと。話を聞いた七色いんこは岡本綺堂が描いた『修禅寺物語』にそっくりな話だと思い、興味を持った。『修禅寺物語』の最後では老彫り師の娘が死ぬことになるのだが、果たして老画家とその娘たちにはどんな運命が待ち受けているのだろうか。 ゲスト 不知田次萩(ふじたつぎはぎ)/ヒゲオヤジ 服部首相/レッド かえで/メルモ

5 ガラスの動物園 1981/4/24 「週刊少年チャンピオン」

足が悪いせいで自分の部屋に閉じこもったまま、外の世界に触れようとしない少女ローラ。彼女を溺愛する母親は、愛する娘には何でも与えてくれる。母親にとって娘の人生を愛の名の下に支配することが生きがいだった。これはテネシー・ウィリアムズの戯曲『ガラスの動物園』の物語だ。七色いんこは家庭教師をしている家の少年も、ローラのように愛情という檻に閉じ込められたガラスの人形のようだと感じる。いんこは彼に『ガラスの動物園』の筋を話して聞かせ、この芝居を母親と共に観に行くようにと進めた。ひとつの芝居がひとつの親子の関係を改めてくれることを信じて--。

6 検察官 1981/5/1 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは突然、怪しい女の率いる一団に拉致された。彼らは莫大な遺産を相続する男の身代わりを演じてくれと、天才代役俳優であるいんこに依頼する。相続人は大やけどを追い、とても遺産相続会議に出られない容体なのだという。相続財産の三分の一を受け取ることを条件に依頼を受ける。自分が演じる男の弟はまだ少年だったが、この少年だけが遺産の隠し場所を知っていた。少年は言う。「これは父さんが戦争で儲けた金なんだ、たくさんの人たちの命を犠牲にして手に入れた汚い金だ。この遺産は全部、亡くなった人たちのために使うんだ」その言葉にいんこの心は動いた。そして彼はギャングたちを出しぬくためゴーゴリーの芝居『検察官』を引用することにする。それは検察官に化けた男が、ギャングたちをだまして金を巻上げる、という物語だ。 ゲスト マチルダ/ヘル夫人 ボスコ/フランケンシュタイン ホセ・ガルシア/丸首ブーン

7 電話 1981/5/15 「週刊少年チャンピオン」

舞台で代役を演じ、またも名演技を披露した七色いんこ。そんな彼の演技に感動した女子高生の淑子はいんこの後を追いかけ、ぜひ弟子にしてくれと頼む。淑子のしつこさに根負けしたいんこは、彼女の家で演技を見てやることにする。もしテストに合格しなければ弟子の話はあきらめるようにと言い含めて。けれどチェーホフの『桜の園』を朗読させてみると、淑子は天才的な演技を披露する。きちんと勉強すれば名女優になれる素質だといんこは見て取った。しかし淑子の両親は彼女の芸能界入りには大反対だった。自分の夢を踏みにじろうとする両親に耐え切れず、淑子は窓から身を投げた。結果、彼女は失明してしまう。女優への夢を断たれたと絶望する淑子にいんこはささやく。盲目の女優にだって演じられる役はたくさんある。決して絶望することはないんだよ、と。いんこが彼女を立ち直らせるために選んだのはメノッテイの書いた『電話』という芝居だ。それはただ椅子に座って電話相手に喋り続けるだけの役で、相手役はいんこ自身が演じ、舞台は大成功する。喝采の中でステージが幕を下ろした時、淑子の新しい人生が幕を開けた。 ゲスト いんこの顔/ヒョウタンツギ 淑子の父/天馬博士 医師/花丸博士 看護婦/スパイダー

8 ゴドーを待ちながら 1981/5/22 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこが雨宿りをした店先には女性型のロボットが立っていた。ロボットの名前はオルガ。彼女はしきりに「ゴドーはどこにいるの?」と問いかけ続けている。ロボットの持ち主は近くの喫茶店のオーナーで、オルガは神戸でひかられた博覧会のために作られたのだが、その後、買いとって店の宣伝用マネキンとして使っているとのことだった。ゴドーはどこ? と問いかけ続けながら街角に立ち尽くすロボットが気になって、いんこはゴドーのことを調べる。すると、ゴドーと言うのは技術者でオルガを開発した人物だとわかる。しかしゴドーはすでにこの世の人ではなかった。それを知らないオルガは、自分を産んでくれた親のように、いまはここにいないゴドーを待ちわびているのだ。いんこはベケットが描いた芝居『ゴドーを待ちながら』を思い出す。そしてオルガを盗み出し、宣伝用マネキンよりも意味のある仕事をさせようとするのだが……。 ゲスト オルガ/オルガ(映画『火の鳥2772』) 喫茶かんてらのマスター/フーラー博士 空から降ってくるもの/ヒョウタンツギ

9 アルト=ハイデルベルク 1981/5/29 「週刊少年チャンピオン」

国際大学留学生卒業記念祭。そこでは王子と女学生のはかなくも美しいラブストーリー『アルト=ハイデルベルク 青春王子』の公演が予定されていた。しかし開幕直前になって、王子役の学生が国へ帰ってしまった。故郷の国で宗教紛争が起こり、彼の宗派の人たちが大勢虐殺されたと聞いたせいだ。相手役の女学生を演じるのは同じ国の王女さまで、王女様の青春の思い出として舞台は何としてでも幕を開けねばならない。王女の側近たちは通産省に圧力をかけ、王子役の代役を探させた。本当は泥棒だと承知の上で、しかし通産省の役人たちは七色いんこの力を借りるより他に道はないと悟る。呼ばれたいんこは会場にアラブ系の大物たちが座っているのを見て、その宝飾品を盗めると判断し、代役を引き受ける。王女様とともにステージに立ついんこは、劇の幕間で大事件が発生したことを知る。王女様の国で政変が起こり、王族と対立する宗派が政権を握ったのだ。このまま国に帰れば王女まで処刑されてしまう。いんこは彼女を亡命させようとするのだが……。 ゲスト オマーの顔/ヒョウタンツギ

10 誤解 1981/6/5 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは阿蘇山近くの路上で雨にたたられていた。真夜中の人里はなれた場所で車までガス欠。芝居の客からダイヤの指輪を盗んだばかりのいんこは早く逃げたかったのだが、これ以上は進めないとわかり、ちかくの民宿に泊まることにする。が、その民宿は何やら怪しい気配が立ちこめていた。怪しい老婆と若い娘のふたりで経営しているらしく、しかも地下室からはうめき声のような不気味な声が轟いている。いんこはカミュが書いた『誤解』というい芝居を思い出す。それは旅人を殺して金品を奪いながらホテルを経営している母親と娘の物語だ。いんこは自分も殺されると思い、宿から逃げ出そうとするのだが、飲まされたミルクには睡眠薬が混入されていたせいで体が思うように動かない。そして事態はカミュの芝居というよりもヒッチコックの名作ホラー『サイコ』のような展開を見せて行くことになる。 ゲスト 不潔な生き物/ヒョウタンツギ

11 ピーターパン 1981/6/12 「週刊少年チャンピオン」

千里刑事は麻薬密輸団の取引が行われる予定の公園に張りこむよう命ぜられた。警戒している犯人を欺けるのは野外ステージで行われる児童演劇の役者に化けるしかない。千里刑事は演目の『ピーター・パン』で主人公を演じさせられることになるのだが、元来芝居が大嫌いで、ピーター・パンなんて話自体知らない。困った千里刑事は仕方なく七色いんこに演技指導を頼む。ギャングの取り引き当日、刑事たちはそれぞれ児童演劇の役者としてステージの上に立っていた。フック船長に扮したいんこの誘導で千里刑事も見事に主人公を演じ、集まった子ども達の喝采を受ける。しかしその時、ギャングたちの取り引きが始まった。現行犯逮捕しようとする刑事たちを見て、ギャングたちは子供たちを人質にする。ピーター・パン、助けて! 泣き叫ぶ子ども達の声を受け、千里刑事は子供をさらったフック船長と戦うピーター・パンのようにギャングに挑みかかって行く。お芝居と違うのはピーター・パンを助けるため、フック船長も加勢している、というところだ。 ゲスト 千里の父/下田警部 麻薬組織のボス/ムッシュー・アンペア 麻薬組織の男1/ヘック・ベン 麻薬組織の男2/一銭ハゲ 麻薬組織の男3/スカンク草井 千里の部下/小田原丁珍 刑事/力有武

12 ヴァージニア・ウルフなんかこわくない 1981/6/19 「週刊少年チャンピオン」

子供のいない夫婦が倦怠期を紛らわすため、来客の前で子供がいて、立派に育て、けれど死なれてしまった、という芝居を演じて見せる。それが夫婦のゲームだった。これはオールビー作の『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』というお芝居の物語だ。いまニューヨークでその芝居を演じていた七色いんこは、その世のテレビで劇評家がいんこの演技を徹底的にコキ下ろすのを聞いて腹を立てた。その劇評家は自分に賄賂をよこさない芝居は何でもケナす男だった。いんこはこの劇評家をこらしめるため、変装して彼の屋敷を訪れて行く。そしていもしない狼人間の話をでっち上げて劇評家を恐怖の底に叩き落すのだった。 ゲスト フーラー氏/フーラー博士 ヤング・フランケンシュタイン/フランケンシュタイン 刑事/メイスン

13 幕間 1981/6/26 「週刊少年チャンピオン」

やくざの金を掠め取った七色いんこはうっかり盗んだ金に入っていたバックを捨てたがために、そのバックについた匂いを追いかける犬を連れたやくざたちに執拗に追跡されていた。何とか隠れ家に逃げ帰ろうとするいんこに意外な救いの手が現われる。それは見事な演技力を持つ子犬だった。その子犬のおかげでやくざの追跡をかわすことが出来たいんこだったが、犬が自分のそばに居座ろうとすることには閉口した。子犬がいんこの隠した宝石を盗み出していることに気づいたいんこは、誰が子犬を操っているのか調べようと、犬の後を追う。と、工事現場のプレハブ小屋に犬は入って行く。そこには演劇界の重鎮だったはずの老人がやつれ果てた姿で寝込んでいた。劇団運営に失敗して多額の借金を背負い込んだこの老人は、借金取りから逃げるためにこんなところで暮らしているのだという。老人は余命幾許もないことを悟っていて、いんこに自分がパントマイムをしこんだ玉サブローという犬の面倒を見てくれと頼むのだった--。

14 化石の森 1981/7/3 「週刊少年チャンピオン」

ギャングの金を盗んだ七色いんこは、そのギャングたちに捕まってしまう。金の隠し場所を白状させるため、ギャングのリーダー汗地は故郷の洞窟へといんこを連れて行く。その洞窟は小学校時代の親友の家の近くにあった。親友の鈴木は同じ頃、ロボット工学の道に進みたいという息子をしかりつけていた。お前は政治家になるのだ。鈴木はそう怒鳴りつけていた。鈴木の息子と娘はそんな高圧的な父親にうんざりとなる。そこへ汗地がやってくる。汗地は自分は警察の特捜部に務めていると嘘をつくが子供たちはすぐにそれを見破る。正体の割れた汗地は鈴木と子供たちを銃で脅し、洞窟の中で殺害しようとするのだが、その洞窟の中には鈴木の息子が作った機械人形が隠されていた。 ゲスト 汗地/アセチレン・ランプ 汗地の部下/金三角 鈴木/マグー 鉄腕アトム/アトム

15 じゃじゃ馬ならし 1981/7/10 「週刊少年チャンピオン」

赤字ローカル線で山奥の牧場へ向かっている七色いんこ。彼を尾行する千里刑事は、じつは東京でのお見合いから逃げてきたのだった。それを知った七色いんこはヤレヤレとため息をつく。いんこは牧場に預けられている馬の様子を見てきてくれと馬主に頼まれていた。しかし目当ての馬は牧場を逃げ出していて、夜な夜な戻ってきては妻である雌馬を呼ぶのだという。いんこはその馬がどこへ逃げて行くのか突き止めようと後を追った。その先で彼と千里刑事が見つけたのは一年も前に死んで白骨化した馬の死骸だった。夜な夜な雌馬の元に戻ってきていたのは、この死んだ馬の亡霊だったのだろうか--? ゲスト 旅館の仲居/テツのオッサン 牧場主/ケリガン

16 彦市ばなし 1981/7/24 「週刊少年チャンピオン」

悪徳政治家屋目西郎は母子家庭の親子を集め、児童演劇を上演しようとしていた。慈善のためではない。集まった親たちに一万円札入りの封筒を配って、目前に迫っている選挙での投票を約束させようと企んでいるのだ。つまりは票の買収である。その企みを知った七色いんこは会場で配られる金をそっくりいただこうと計画する。いんこは上演される民話劇の主役になりすまし、策を弄して札束を盗み取ることに成功する。--しかし、上演した劇は嘘つきの彦一が人をだまして儲けても、結局、すべてを失ってしまう教訓話だった。同じ教訓がいんこの身にも降りかかってくることになる。 ゲスト 街の実業家/ノラキュラ 殿様/殿様(『おけさのひょう六』)

17 シラノ・ド・ベルジュラック 1981/7/31  「週刊少年チャンピオン」

七色いんこが代役を務めている舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』を元役者の劇評家胡月は徹底的にコキ下ろした。それでも胡月は毎日のようにいんこの芝居を観にやって来る。たまりかねたいんこは「そんなに俺の芝居がひどいのか!」と問う。胡月は言った。「あんたは物真似はうまいが、個性がない」と。
いんこは「ならば、あんたの演技を見せてくれ」と最終日で一回だけ胡月にシラノをやることを承諾させた。だが、胡月はその直前に車にはねられ瀕死の重傷を負ってしまう。それでも病院を抜け出してステージに上がり、胡月はいんこの見守る前で圧倒的な名演を披露した。そこには本物の個性が輝いていた。いんこははじめて自分の負けを悟り、胡月に「弟子にしてくれ」と頼むのだが……。 ゲスト 胡月真鷲/猿田 おでん屋/ノタアリン インターン/佐々木小次郎 劇場主/クッター 入院患者/手塚治虫

18 青い鳥 1981/8/7 「週刊少年チャンピオン」

真っ青な車が千里刑事の隣の家に住む幼いサッちゃんを轢き逃げした。重傷を負ったサッちゃんに仇を盗ると約束した千里刑事は、七色いんこに無理矢理協力させる。ふたりはようやくみつけた青い車を追跡した。それはどうやら自動車会社が試作したテストカーらしい。いんこたちはその自動車会社が完全コンピュータ制御の車を開発していたことを知る。そのコンピュータが狂い、殺人マシンと化した青い車が千里刑事に襲いかかる。いんこは必死に車の暴走を止め、千里刑事を救おうとする。 ゲスト 千里の父/下田警部 自動車修理工のじっちゃん/ケリガン パーティの客/東南西北 パーティの客/テツのオッサン ナイトクラブの団体客/ヒョウタンツギ

19 南総里見八犬伝 1981/9/4 「週刊少年チャンピオン」

玉サブローが街角で一匹の犬に恋をしたけれど、その犬はすぐに野犬狩りに捕まり収容所へ入れられてしまう。恋しい犬の安否を気遣い、玉サブローはいても立ってもいられない様子だ。そんな姿に同情した収容所からその犬を救い出すため、野犬たちを集め、彼らに「八犬伝」の芝居をさせ、その間に目当ての犬を盗み出そうと考えた--。 ゲスト 野良犬の顔/ヒョウタンツギ

20 オンディーヌ 1981/9/11 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは離れ小島をひとつ所有していた。たまにそこを訪れ、芝居の稽古をしたり、戯曲に描かれる情景に思いをはせたりしながら心をリフレッシュさせているのだ。ある日、玉サブローを連れて、その島へとやって来ると誰もいないはずのアジトに全裸の少女が入り込んでいた。彼女は自分を水の精オンディーヌだと名乗る。しかし小太りで決して美人とは言えないその容姿に、いんこは水の精だなんて馬鹿馬鹿しいと笑う。けれど少女は真剣だった。人間に恋をして人間と結婚した初代オンディーヌと同じように自分もあなたと結婚するのだと少女は言う。オンディーヌが人間に恋をし、その結果悲劇的な結末を迎えるのは芝居の中の話だ。いんこは彼女の言葉をまるで信じない。その日、嵐が島を襲った。少女は水の王である父が怒っているのだと言う。嵐のせいで家が波に飲まれそうになり、インコと玉サブローは逃げ出すが、少女は頑としてその場を動かない。夜が明け、完全に倒壊した家へと戻ったいんこは、家屋の下敷きになって息絶えている少女を発見する。そしてその姿を見てはじめてインコは、彼女が本当に水の精だったことに気づくのだった。 ゲスト いんこの顔/ヒョウタンツギ オンディーヌの父/ポセイドン

21 12人の怒れる男 1981/9/18 「週刊少年チャンピオン」

アメリカのある地方都市。そこでひとりの老婆が全財産の入った財布をひったくられた。老婆は犯人の顔をはっきりと覚えていて、それはマイウェイ氏の息子だと証言する。マイウェイ氏はこの町の有力者で、住民は誰もがかれの財力の恩恵にすがっていた。そして裁判が始まり、12人の陪審員が集められる。その中にいんこの姿もあった。さっそく有罪か無罪かを決めようとする陪審員たちの中でただひとり、マイウェイ氏の息子は有罪だといったのはいんこだった。彼は陪審員たちがマイウェイ氏への恩義から真剣に審議することもなく息子を無罪にしようとしているのを見て、ただひとり反対票に投じたのだ。陪審員は全員の意見が一致しなければ職務から解放されない。11人は「マイウェイ氏の息子を有罪にするつもりなのか!」と責め立てる。それはさながら有名な舞台劇『12人の怒れる男』そのままだった。その芝居はたったひとりが無罪を主張したことから有罪を確信していたほかの陪審員たちの心が揺れ動いて行く、というものだ。いんこはあの芝居と同じように11人の陪審員たちを心変わりさせることが出来るだろうか? ゲスト 議長/ノールス・ヌケトール マイウェイ氏の息子/ロック・ホーム 裁判長/ブタモマケル 陪審員のひとり/アメリカのパロディ雑誌『マッド』のマスコット

22 悪魔の弟子 1981/9/25 「週刊少年チャンピオン」

アメリカの名優ドン・カルロから直々に七色いんこに呼び出しがかかった。憧れの名優に会えると喜んだいんこに、カルロは自分の身代わりとなって日本公演をやってくれと頼んでくる。しかもステージの上だけではなく、私生活でもずっとドン・カルロを演じ続けて欲しいと。いくらなんでもそれは無理だと首を振るが、カルロは執拗だった。仕方なく引き受けることにしたいんこだが、日本へ同行した夫人までが自分が偽物だと気づかないことを不審に思った。いんこはドン・カルロが出身国で起こっている内戦で反政府軍のリーダーを務めていると言う情報を入手する。自分を暗殺しようとする動きがあることに気づいたカルロは、いんこを自分の身代わりにして死なせようとしているのかもしれない。それに気づくいんこだが、舞台の幕はすでに上がっている。いまさらステージを中止にはできない--。 ゲスト カルロの顔/ヒョウタンツギ 千里の部下/小田原丁珍

23 棒になった男 1981/10/2 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは奇妙な古い鞄にまとわりつかれていた。どんなに自分のそばから遠ざけても、すぐに自分のもとに戻ってきてしまう不思議な鞄。そんな鞄に付きまとわれて閉口しているいんこのもとに安部公房の不条理芝居『棒になった男』で鞄の役をやってくれという依頼が来る。それはただステージの上でうずくまっているだけの役だ。そんな役はやる気にならないといんこは断るのだが、自分に付きまとう鞄が「役を受けろ」と囁き始める。どうやらその鞄はいんこの「ホンネ」を告げる鞄らしい。嫌々ながらも鞄の中の「もうひとりの自分の声」に命ぜられるまま鞄役を引き受けるいんこ。しかしそのステージで七色いんこは生涯最大の赤っ恥をかくことになる……。 ゲスト 横断歩道の男/クッター 配役座のマネージャー/殿様(『おけさのひょう六』) いんこのホンネ/ママー

24 タルチュフ 1981/10/9 「週刊少年チャンピオン」

そのご令嬢はただいま芝居好きの二枚目に夢中だった。芝居に詳しい彼をインテリと信じ、結婚まで考えていた。しかしご令嬢お付きの運転手、井上はその二枚目がとんでもない食わせ物だと感じていた。彼は芝居を勉強をして二枚目の底の浅さを付きとめようとする。そんな井上と知り合った七色いんこは、世間知らずのご令嬢を騙す二枚目に反感を持ち、モリエールの『タルチュフ』の芝居にご令嬢と二枚目を誘うよう井上に伝える。それは神父に化けた偽者が金持ちから大金を騙し取る、と言う物語だ。 ゲスト 森小路/如月恵 運転手/ケン一 空港の野次馬/ノタアリン

25 ピグマリオン 1981/10/16 「週刊少年チャンピオン」

ヨーロッパからお姫様が来日した。その護衛を仰せつかった千里刑事は、姫君のそばに付き添うのだから少しは女性らしいマナーを身につけろと父親から命ぜられる。彼女のしつけ役を任されたのは、かつての見合い相手、男谷マモルだ。マモルは一から千里刑事に上流階級の身振り、話し方、物腰を教えて行く。来日した姫君は日本で舞台『ピグマリオン』を観劇する。そして、その劇場には姫君を暗殺しようとする者が紛れ込んでいた。すっかり女性らしい身振りになっていた千里刑事に、姫君を守りきることが出来るだろうか? ゲスト 千里の父/下田警部 千里の部下/小田原丁珍 喫茶店のウェイター/ラムネとカルピス

26 靭猿 1981/10/23 「週刊少年チャンピオン」

玉サブローは歌舞伎の女形、尾上扇十郎の大ファンだ。テレビでその舞の素晴らしさに見惚れている玉サブローを見て、七色いんこは一度本物のステージを見せてやろうと、歌舞伎座へ連れていった鞄からいつの間にか抜け出した玉サブローは、通路で扇十郎を真似て踊り始め、会場を爆笑させてしまう。おかげでいんこは犬の飼い主として扇十郎から営業妨害と名誉毀損、および慰謝料として五億以上の金を要求されてしまう。払えないなら犬を殺せと扇十郎は命じてきた。仕方なくいんこは玉サブローの命を扇十郎の手に預けることにするのだが……。

27 森は生きている 1981/10/30 「週刊少年チャンピオン」

その児童劇団は、スポンサーである企業会長の馬鹿息子のせいで心やさしいミュージカル『森は生きている』を台無しにされようとしていた。父親がスポンサーだということを強みにして、馬鹿息子は劇を前衛芝居やストリップまがいのものに変えさせようとしていたのだ。あまりのことに役者たちは次々にやめて行く。けれど演出家はすでに大量の契約金をもらっているため、劇を中止には出来なかった。仕方なく辞めた主役の代わりにと七色いんこに連絡を取る。七色いんこは息子の言う通りの芝居を上演してスポンサー自身に判断させろと忠告する。そして会場にやって来た馬鹿息子の父親は、大金をかけた舞台がまったく恥さらしな内容になっていることを知り、愕然となった。 ゲスト 児童劇団のスポンサー/サターン

28 セールスマンの死 1981/11/6 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこはまた自分にしか見えない「ホンネ」に付きまとわれ始めていた。彼らのせいでステージでもトチりっぱなしで仕事にもあぶれてしまう。精神科医に相談すると、四六時中、他人を演じつづけているせいで、自我が分裂し始めているのだと診断され、薬を処方される。そんな時、古い友人が『セールスマンの死』を代役で演じないかと持ちかけてきた。それはかつては優秀なセールスマンだった男が中年になり、仕事がうまくいかなくなってクビになった挙げ句に精神に異常をきたして自殺する、という芝居だ。まさにいまの七色いんこが演じるにふさわしい役だった。いんこは自分の再起をかけてステージに臨むのだが--。 ゲスト いんこのホンネ/ママー 劇場係員1/オッサン 劇場係員2/ラムネ いんこの心象表現/ヒョウタンツギ

29 三文オペラ 1981/11/13 「週刊少年チャンピオン」

不良高校生の百済は同じクラスの知佳と恋仲だった。百済は女優志望の知佳のために学園祭で芝居を上演させようとしていた。その演出に七色いんこを起用しようとする。学生演劇の手伝いなど真っ平だと断るいんこだが、百済と知佳の関係が、さながらブレヒトの『三文オペラ』の恋人たちの関係とそっくりなことに興味を持った。芝居の中では泥棒と恋に落ちた娘を目覚めさせようと、親が警視総監に泥棒のことを密告する。泥棒は逮捕され、死刑を言い渡されることになる。同じように百済も知佳の親に交際を反対され、学校を退学させられることになる。いんこは不良少年の純愛を守るため、ひと肌脱いでやるのだった。 ゲスト 知佳の母親 石河ジュン/いしかわじゅん 吾島しでお校長/吾妻ひでお 教員/東南西北

30 王女メディア 1981/11/20 「週刊少年チャンピオン」

パリの名優が舞台の楽屋で謎の焼死を遂げた。どうやら殺されたらしい。パリ警視庁が早速犯人を探しはじめる中、上演中の『メデイア』は続けなければならない。それは自分を裏切った男に凄絶な復讐を企む女の物語だ。死んだ名優の娘婿が代役を務めることになるのだが、彼は三流役者で、とても名優の変わりなんか勤まらないと自覚していた。そこへ七色いんこが代役の代役を申し出る。娘婿に変装したいんこは、その瞬間から怪しいアラブ人一味に命を狙われ始める。どうやら娘婿に裏切られた昔の女が彼に復讐しようとしているらしい。執拗に命を狙われるいんこは、必死で逃げ回るのだが、その先には思わぬ大どんでん返しが待ち受けていた。 ゲスト 劇場の客/手塚治虫 エロイカ警部/雲名刑事

31 犀 1981/12/11 「週刊少年チャンピオン」

パントマイムの天才子犬、玉サブローは大の酒飲みで七色いんこの手を焼かせていた。今日も酔っぱらったトロンとした目で散歩していると、数人の男たちが寄ってきて玉サブローを写真に撮りはじめた。彼らはアイデア商品を開発する会社の人間で、玉サブローのトロンとした流し目をヒントに、ペットのアイメイク商品を開発しようとしていた。発売された『流し目ネコ』は大評判となり、街には流し目のネコたちがあふれた。ブームはそれだけにとどまらず、あらゆる動物に、そして人間たちの間でも流し目メイクが大流行する。そんなブームという狂気を茶化したイヨネスコの芝居『犀』を思い出させるといんこは流行に踊らされる人々をみつめながら、ため息をつくのだった。 ゲスト 劇団の演出家/栄三 スーパーマーケットの子供/ピノコ

32 R・U・R 1981/12/18 「週刊少年チャンピオン」

ダイヤを盗んだ七色いんこは警官に追われていた。とにかくダイヤを隠さなければ、と彼は通りかがりの人形劇団の倉庫に忍び込んだ。その倉庫で絶対に使われないだろう古い人形を見つけ、いんこはその中にダイヤを隠す。しかし後日、ダイヤを取り戻しに行ってみると、古い人形の廃棄処分が決まり、いままさにダイヤを隠した人形も焼却されようとしていた。慌てていんこはその人形をもらい受けたいと頼むのだが、年老いた人形師は「人形を愛している人間にでなければ譲れない」と言う。いんこはその古ぼけた人形でチェコの風刺劇『RUR』を演じてみせる。それは人間に利用されるだけのロボットが反乱を起こし、逆に人間を支配しはじめる、という物語だ。いんこが巧みに人形を操るのを観て老人形師は感激し、人形を譲ってくれる。これでダイヤを取り戻せる、といんこは喜ぶのだが、芝居同様、古い人形も思わぬ力で「利用されるだけの人形」という状況に反旗を翻すのだった。 ゲスト 人形劇団の座長/クッター 老人形師/ヒゲオヤジ 千里の部下/小田原丁珍 刑事/力有武 いんこのホンネ/ママー

33 結婚申込 1982/1/1 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこを逮捕すべく連日張り込みを続けている千里刑事。彼女の下に米ソ両国から同時に自国の女性警察官のための教官になってくれ、という依頼が届く。けれど千里はいんこ逮捕に執念を燃やしていて、アメリカだろうとソ連だろうと外国へ出張する気などさらさらない。しかし首相直々に出張命令が出されている以上、拒否も出来ない。どうすべきか悩む彼女は恥を忍んでいんこその人に助けを求めた。彼女を憎からず思っているいんこは「結婚申込」というチェーホフの芝居をヒントにしようと提案する。それはプロポーズをしている青年とされている娘とが、小さないさかいがもとで、ついには大喧嘩をはじめてしまう、というお話だ。それと同じようにアメリカもソ連も向こうから断ってくるように怒らせてしまえばいいのだ、といんこは千里刑事に知恵を付けてやる。そして千里はソ連とアメリカ両方の外交官をそれぞれに激怒させようとする。 ゲスト 千里の父/下田警部 千里の部下/小田原丁珍 ミズブクレイッチ・デブッチョフ/デブン FBI極東部長ジュラルミン/ジュラルミン

34 俺たちは天使じゃない 1982/1/8 「週刊少年チャンピオン」

ギャングたちはとある地方美術館に所蔵されているセザンヌやゴッホの名画を盗もうと計画していた。そのためには美術館の地下にトンネルを掘るより他に方法がない。彼らは美術館の下に建つ民家の裏庭からトンネルを掘ることに決め、民家の主を誘拐すると、七色いんこに連絡を取った。トンネルが掘り上がるまで、この民家の主になりすましていてくれないか。ギャングに頼まれたいんこは大金を受け取ることを条件に引き受ける。しかしその民家の幼い娘はすぐに帰ってきた父親が別人であることに気づいた。けれど急にやさしくなった父親に彼女は喜び、偽物と承知の上でなついてくる。そんな無邪気な娘の姿に接しているうちに、いんこもギャングたちもいつしかこの娘の幸せを心から願うようになってしまう。そう、それはさながら名作舞台劇『俺たちは天使じゃない』に登場する三人のギャングと同じ心境だった。 ゲスト ランプ/アセチレン・ランプ ドジえもん/ドジえもん 町長/栄三

35 ベニスの商人 1982/1/15 「週刊少年チャンピオン」

玉サブローはレストランの前を通りかかったとき『ジャンボステーキを召し上がれた方に10万円を進呈』という広告が目に留まり、さっそく挑戦した。けれどステーキには大量のマッシュポテトとサラダがついていた。それを全部平らげることなど不可能だ。食べ残してしまった玉サブローは二万一千円の料金を請求される。もし払えないならお前をサファリパークのライオンに食わせてやる。そう脅されたのを知った七色いんこは、『ベニスの商人』を引用して、この悪質なレストラン・オーナーを懲らしめてやることにする。借金を返せないなら体の肉を一ポンドよこせと迫る強欲な金貸しのシャイロックが裁判官のとんちによってギャフンとやり込められる物語だ。同じとんちでいんこはレストラン・オーナーをやり込め、玉サブローを救った。 ゲスト シャイロック/レッド公

36 仮名手本忠臣蔵 1982/1/22 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこはある日道路上で猫の一団に立ちはだかられ、小判を盗まれた挙句に殺されてしまう。敵討ちを誓った玉サブローは、主の恩も忘れたかのように酒を飲んでは遊びまわる。だがそれは仇を油断させる芝居だった。敵の油断を見計らって玉サブローは、一気にあだ討ちへと向かう。--という芝居の台本を渡された七色いんこは、自分の役が最初だけしかないことに腹を立てた。いくら子供用に脚色した忠臣蔵だとは言え、玉サブローに主役を取られることも気に入らない。出演を断ったいんこはしかし、その芝居が豪華客船で上演されることを知り、しまった! と慌てた。豪華客船なら盗みのほうでは思う存分に腕をふるえるのに! と。 ゲスト 喫茶店のウェイター/ラムネとカルピス 劇団の関係者1/東南西北 劇団の関係者2/ナイロン卿

37 幕間II 1982/1/29 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは悪徳政治家の政治資金を盗んだ。しかしそのせいで、政治家の秘書が責任を追及され自殺に追い込まれてしまう。七色いんこの分裂した自我であるホンネたちに「本当は金を返したくなっているはずだ」と囁かれ、秘書の救出に向かうのだが……。 ゲスト いんこのホンネ/ママー

38 コルネヴィルの鐘 1982/2/5 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは古い城へと呼び出された。今度の依頼はこの城をうろつく亡霊になって欲しい、というものだった。何でもこの城には古い甲冑や美術品が多くあり、それを盗もうとする輩も多い。亡霊に扮してそういう輩を追い払って欲しい、というのだ。月百万の報酬といわれ、嫌々ながらもいんこは亡霊役を引き受ける。この城には何か秘密がありそうだ。きっととんでもないお宝が隠されているのだろう。そう考えるいんこの前に城の秘密を知る謎の老人が現われた――。 ゲスト 城の管理人/マグー

39 恋わずらいのなおし方 1982/2/12 「週刊少年チャンピオン」

千里刑事は久しぶりに母校を訪れた。同窓会ではない。自分の後輩のスケバンたちに、七色いんこが盗みを働く現場を押さえるため劇場に張りこませようと考えたのだ。千里は現役のスケバン、モズクに協力を求めるが、モズクは先輩風を吹かせる千里が気に入らない。そんなはねッ返りの性格が昔の自分にそっくりだと千里は自分でそう思った。ともかくふたりは七色いんこが代役を演じている劇場へ張りこむことにする。七色いんこが狙っているのは金満夫人の豪華なダイヤのネックレスだ。しかし夫人の周りにはボディーガード代わりの殺し屋たちが護衛のために配置されていた。千里はもしあのダイヤを狙えばいんこの命が危ないと知り、何とか犯行を食い止めようとする。一方、モズクはいんこに一目ボレしてしまった。彼女はいんこから「生きがい」なくして生の充実はないと語られ、その言葉を胸に刻み込む。 ゲスト いんこをチャカす生物/ロロールル 劇場の受付/ノンキメガネ 千里の部下/小田原丁珍

40 サロメ 1982/3/5 「週刊少年チャンピオン」

サンジェルマン夫人が飛行機事故にあった。臨終の間際、彼女はペットにしていたキツネが五千万フランの遺産の隠し場所を知っていると告げた。その話を聞いた七色いんこは玉サブローにキツネの匂いを追わせ、いまフランスはノルマンジーの海岸に立っていた。一軒の土産物小屋にキツネが逃げ込んだらしい。小屋の中に入ってみたいんこはキツネを先に捉えていた強欲家族に縛り上げられてしまう。強欲家族は玉サブローといんこを殺そうと考えるが、そこに神父が現われ、わずかな欲望のために命を奪ってはならない、とオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を引用しながら説いて聞かせた。神父の言葉にうなだれた強欲家族はキツネを神父の手に預ける。もちろん、その神父はいんこが変装した偽物だった。いんこはまんまとキツネを我が手にしたと喜ぶのだが……。 ゲスト キツネ/くろ耳ちゃん

41 欲望という名の電車 1982/3/12 「週刊少年チャンピオン」

「欲望」と名づけられたブルー・トレインに乗っているいんこは、三千万円の入ったトランクを抱えた少年と隣り合わせる。少年は東京で開かれる人気歌手のコンサートに行くところなのだという。少年はその歌手に弟子入りしたいといんこに語った。しかしひょんなことからいんこは、少年が抱えているスーツケースの中に入っているのは札束ではなく、憧れの人気歌手のスクラップだと知る。どうやら歌の才能を見とめられた少年だというのは嘘で、ただの家出少年らしい。いんこは歌手のコンサート会場へ向かった。彼はそもそもその歌手の代わりに第二部の芝居のパートを演じる契約を結んでいたのだった。しかしいま、いんこにはもうひとつの目的が出来た。この家出少年を故郷に送り返してやる、という目的が。

42 作者を探す六人の登場人物 1982/3/19 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこは舞台の本番中、突然両手に力が入らなくなった。そのせいでステージはさんざんな失敗になってしまう。そのこともショックだが、両手の自由が利かなくなることがいんこにはショックだった。医師を訪ねると「心身症」だと診断される。激しいストレスが原因で両手に力が入らなくなってしまったのだ、と。心身症の原因を探るため、医師は催眠療法を施そうとするが、いんこは過去にさかのぼっても何も見出せないとわかっていた。自分は『七色いんこ』という漫画の登場人物なのだから、作者である手塚治虫に何故自分を病気にしたのかを聞くのがいちばん手っ取り早い、と。そしていんこは催眠療法で作者の手塚治虫に会いに行く……。 ゲスト 劇場の客/田鷲警部 精神科医/デコーン 作者/手塚治虫

43 オセロ 1982/3/26 「週刊少年チャンピオン」

ポリネシアのはずれに不思議な島がある。そこにはその島だけにしか生息しない珍しい動物や植物があふれていた。そしてその島の踊りの名手ボロキーレが素晴らしいダンスをニューヨークやパリで公演し、話題になっていた。七色いんこもその踊りの表現力に感服し、じかに教えを乞おうと島に出かけて行く。しかし同じ船には島に実る特別な植物から麻薬が作れることを知ったギャングが乗り込んでいた。ギャングはボロキーレに近づき、麻薬種の作り方を聞き出そうとする。その企みを知ったいんこはギャングの手からボロキーレ夫妻を守ろうとする。しかし--。

44 十一ぴきのねこ 1982/4/2 「週刊少年チャンピオン」

漫政三年、雪深い山にある円心寺は領主に反抗を企てているとされ、焼き討ちされた。寺に所蔵されていた一揆のための軍資金は木魚の中に隠され、あやういところで山に投げ込まれて隠された。その史実を知っている七色いんこは、捨てられた木魚を探し出し軍資金を我が物にしようと、山奥の村へとやってきた。しかし村の住人たちはみな警戒心が強く、よそ者に口を利こうとしない。小学校に赴任してきた新任の教師も子どもたちが口を利かないので困り果てていた。彼はお芝居を演じさせることで子どもたちと言葉を交わそうとする。そこへ居合わせたいんこは、子どもたちの中に木魚の在処を知っている子がいると小耳に挟み、芝居の指導を引き受ける。子どもたちから木魚の在処を聞き出そうと企んだのだ。だが、新任の教師もいんこと同じ企みを持っていた。そして彼は吹雪の中、子どもたちを無理矢理、山の中へと追い立てた。 ゲスト 寺を焼き討ちする役人/サターン 住職たちの顔/ヒョウタンツギ 村医者/殿さま(『メタモルフォーゼ』第7話「おけさのひょう六」)

45 探偵(スルース) 1982/4/16 「週刊少年チャンピオン」

46 終幕 1982/5/21 「週刊少年チャンピオン」

七色いんこをアジトを突き止めた千里刑事はその家の地下室で、いんこが綴った回想録を発見する。それにはいんこの生い立ちが記されていた。演技の天分に恵まれていたにもかかわらず事業家の父に理解されず、初恋の相手も父親の汚職を告発する記者の娘だったせいで、交際を反対される。それどころか父は記者の一家全員を殺害しようと企み、初恋の少女を植物人間状態に追いやった疑いもある。そんな父と自分の将来に絶望したいんこはアメリカに渡り、放浪の旅に出た。餓死寸前に彼はピエロに助けられ、ピエロから演技のイロハを改めて教えられる。やがてピエロと共にステージに立つようになったいんこは、ステージに生きる喜びを知る。だがピエロが演技を続けるのにはひとつ理由があった、それはベトナム戦争当時、彼にひとつの村の虐殺を命じた男への復讐だった。--いんこの回想録を読み進んでゆく千里刑事はやがて、いんこと自分自身との思いもかけない絆を知らされることとなる。それは自分といんことの関係を決定的に変えてしまう衝撃の事実だった。そしていま、いんこは自分の運命を狂わせた男への復讐を完遂するため、最後の舞台に臨もうとしていた--。 ゲスト いんこの継母/ヘル夫人 いんこの父・鍬潟の部下/東南西北 鍬潟家のお手伝いさん/ミッツン ニューヨークの刑事/田鷲警部 通りがかりの男/ハム・エッグ 税関職員/ラムネとカルピス 精神科医/フーラー博士 千里の父(後ろ姿のみ)/下田警部

47 タマサブローの大冒険 1982/6/4 「週刊少年チャンピオン」

玉サブローは川を流されていた。七色いんこの姿はない。もしかしたらいんこの最後のステージが終わると同時に、彼もまた自分だけのステージを求めていんこのもとから独立したのかもしれない。そんな玉サブローの放浪の旅と、彼が最愛の雌犬(テレビの人気スター)と結ばれるまでの数奇な冒険の数々を描く物語。『わんわん物語』を彷彿とさせる野良犬とお嬢様犬とのラブストーリーはやがて水爆実験の予定されている離れ小島から実験動物たちを大脱出させる、という空前の大冒険へと発展してゆくことになる。 ゲスト 清掃作業員/ノールス・ヌケトール 場面解説/ヒュウタンツギ 野犬処理場の作業員/テツのオッサン 熱気球のふたり/ラムネとカルピス 豪華客船の船長/ブタモマケル


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