西洋のおとぎ話風の雰囲気で描かれた、剣と魔法のファンタジーです。ダリヤ大公の領地に、動物たちが平和に暮らす奇蹟の森がありました。ところがダリヤ大公が、そこを切り開きはじめました。森の女神は、それを止めさせるため、1匹の小リスを、魔法で隣国のブライアローズ姫に変身させ、ダリヤ大公の元へ送りこみました。そして本物のブライアローズ姫を、子鹿に変えてしまったのです。ブライアローズ姫の兄ロビン・キッドは、妹にかけられた魔法をとくために、子鹿になった妹を連れて、女神の母である乳(ミルク)島の魔女の元へと向かいます。一方、小リスの姫は、ダリヤ大公と結婚するかわりに、森を切り開くのをやめる約束をさせました。しかし、人間の生活がなじまない小リスの姫は、日に日に体が弱っていくのでした。
1949/06/05 単行本(東光堂)
この作品の、ちょうど1年前の1948年6月に、描き下ろし単行本として不二書房から刊行された『森の四剣士』に続く、手塚治虫の、西洋風おとぎ話第2弾です。人間の姫と小リスが、互いに変身して立場を入れ替えるという設定や、乳(ミルク)島の魔女の描写など、後の『リボンの騎士』に通じる、原型ともいえるアイデアが随所に見られます。