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ストーリー・解説

1962/8/15 「中学一年コース 夏休み臨時増刊」(学習研究社) 掲載

手塚治虫は、ある人物についての取材で、とある田舎の小さな中学校にやってきました。
その学校の校長室には、奇妙な絵が額つきで壁に飾られています。古ぼけた画用紙に描かれた、太陽が西から登っている絵なのです。校長先生に話を聞くと、その絵こそは「彼」が描いたものだということです。中学生だった「彼」は当時担任の教師だった校長から、その絵はりくつに合わない、とひどく叱られ、書きなおすように言いつけられます。しかし彼は「西から上る日の出を見ることだってあるかもしれない」と、絵を描き直すことを拒みます。強情さに呆れた先生は、「彼」の絵を掲示板に貼り出しますが、とうとう卒業まで、さらには卒業後10年もの月日が経つまで、絵は掲示板に貼り出されたままになりました。
 10年後、久し振りに「彼」から先生のもとに手紙が来ます。「日本初の人間衛星のパイロットに就任しました」。貧乏で苦学をした彼はついに、宇宙飛行士という夢をかなえたのです。

 この作品が発表された1962年の前年、1961年4月に、ガガーリンというソビエト連邦(今のロシア共和国)の宇宙飛行士が、宇宙船ボストーク1号で人類初の宇宙飛行に成功しました。この作品も、このガガーリンのエピソードに着想を得て描かれたものではないか、と思われます。ちなみに有人宇宙飛行を「人間衛星」という言い方も、当時の用語です。


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