青山博士の薬で知能を昂進された世界の赤ん坊たちが、自らの意志で強い手段に訴え、世界平和が実現された。成長後彼らはその監視機関「世界こども連盟」を結成。博士の息子・青山オズマを隊長とする「世界こども連盟」が世界中で起こる数々の事件を解決する!
1961/08/13-1964/10/09 「サンケイ新聞」(産経新聞) 連載
『オズマ隊長』は、近未来を舞台としたSF絵物語です。日本の青山博士が発明した、生物の体を発達させる薬…これを注射された赤ん坊たちは、知能・体力ともに大きく成長し、やがては世界のあちこちに支部を持つ「世界こども連盟」を結成して、悪い大人たちを見張るようになります。青山博士の一人息子・オズマもこの連盟に所属する隊員で、同僚の女の子・アッペとともに、さまざまな難事件を解決していくのです。この作品では、手塚作品のSFエッセンス(お約束?)がこれでもか、と詰め込まれています。冒頭の「貴重な発明品を息子に託して姿を消す博士」という展開は『ビッグX』『ナンバー7』を思わせますし、動物をかけあわせて作ったヒューマノイド・チルの設定は、ラストにいたるまで『地底国の怪人』の耳男とそっくりです。他の星の生物そっくりに変身する胞子生物は『火の鳥』のムーピーだし、悪い宇宙人がそれを地球にばらまいて征服しようとする「替え玉作戦」はまさに『マグマ大使』! また、ロボット・カーが感情を持って暴走するエピソードは『三つ目がとおる』にもあったっけ…と、枚挙にいとまがありません。この連載期間中には、虫プロ版の『鉄腕アトム』が放送を開始し、まさに手塚治虫の「SF熱」が世の中に向けて爆発した時期の、勢いのある作品です。SF小説には興味あるけど、活字ばっかりはちょっと…というアナタにはピッタリの、この『オズマ隊長』。全5巻と、読み応えの方もなかなかです。