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小学館 サンデー・コミックス「W3」2巻 表紙用イラスト 1966年

ストーリー

地球の調査にやってきた3人の宇宙人と、地球人の少年真一が、さまざまな悪と戦うSF活劇です。

196X年、地球では水爆実験が続けられ、戦争が絶えませんでした。遠い宇宙の銀河連盟に集まる優れた生物たちは、野蛮な地球を救うか、反陽子爆弾で消してしまうかを評決するため、地球に3人の調査員を派遣しました。

W3(ワンダースリー)と呼ばれる銀河パトロールのボッコ、プッコ、ノッコの3人は、地球人に怪しまれないように、それぞれウサギ、カモ、馬の姿に変身し、日本の田舎にある小川村に潜入しました。そこで彼らは、乱暴だけど純真な少年・星真一と知り合い、行動を共にすることになります。

一方、真一の兄・光一は、家族にも身分を隠し、秘密諜報機関「フェニックス」の一員として正義のために世界的陰謀と戦っていたのです。そこに巻きこまれていく真一やW3たち。W3の3人は、彼らとの交流を通して、最初は野蛮な星としか考えていなかった地球について、しだいにその考えを変えていくのでした。

解説

1965/05/30-1966/05/08 「週刊少年サンデー」(小学館) 連載

地球上の3つの先進国による恐ろしい人工衛星の開発と、それを阻止する国際的な諜報機関との対立だけでもストーリーとして充分面白くなりそうなプロットに、さらに思い切ってスケールを拡げて、知らないうちに銀河連盟に「野蛮な星」認定されてしまった地球と、銀河パトロールの3人のエイリアンたちとの、ほとんどの地球人がまったく気づかない次元でのひそかな戦いが並行して描かれていきます。

大人の諜報員たちのアクションも楽しめれば、少年と動物たちに変身した宇宙人との不思議な交流も楽しめるという作品になっています。

主人公、星真一(右)と馬場先生(左)

『W3』は、雑誌連載と同時に、虫プロ製作のテレビアニメシリーズが始まっていますが、基本設定が同じというだけで、雑誌連載とテレビシリーズは、まったく別のお話になっています。

『W3』は、最初「週刊少年マガジン」で連載が始まりました。ところが連載開始直後に、その設定とよく似たアニメ番組が始まったため、手塚治虫はその連載を4回で打ち切ってしまいました。その後、題名は同じながら、まったく構想を変えて新たに「週刊少年サンデー」に連載したのがこの作品です。

手塚治虫は、作家仲間を作品によく登場させますが、この作品にも、友人でマンガ家の馬場のぼるさんをモデルとした馬場先生が、重要な配役のひとりとして出演しています。また、主人公の星真一という名前も、やはり友人でSF作家の星新一さんを連想させます。

主人公、星真一(右)と馬場先生(左)

主な登場人物

星 真一

星 真一

日本の田舎に住む少年。やんちゃで曲がったことは大嫌いな性格で、学校にはなじめない。火災に巻き込まれたW3を助けて家の納屋で介抱する。

星 真一

星 光一

エリゼ

星 光一

かけだしのマンガ家。真一の兄。実は秘密諜報機関フェニックスの「F7号」。正義の心に溢れた青年で、フェニックス所属の諜報員としても有能。

エリゼ

秘密諜報機関フェニックスの諜報員で、美しい女性。光一とともに3つの国が共同で開発している秘密人工衛星「がいこつ衛星」の開発阻止計画に参加する。

ボッコ

ボッコ

銀河パトロール第四分隊のベテラン少佐。銀河連盟の依頼で調査のために地球にやってきた。調査隊隊長。本来は美しい女性エイリアンだが、地球に潜伏するために野兎に変身する。

ボッコ

ノッコ

プッコ

ノッコ

銀河パトロール第四分隊のベテラン工兵。階級は兵長。地球調査隊に参加する。さまざまな機械を行き先の星にある材料ですぐにつくることができる。おおらかで落ち着いた性格。地球上では馬に変身。

プッコ

銀河パトロール第四分隊のベテラン中尉。地球調査隊に参加する。短気でおっちょこちょいな性格だが、優れた技術者。ノッコに道具を作らせるために設計図を書くこともある。地球上では鴨に変身。

手塚治虫が語る「W3」

「大評判!テレビ放映中!」
小学館 サンデー・コミックス 「W3」3巻表紙 1966年

「W3」とかいて、「ワンダースリー」とよませるのがそもそも無理で、この作品はもともとテレビアニメシリーズ向きに企画されたものです。だから、タイトルもやや奇をてらったのでした。

虫プロで「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」という二つの大きな柱のアニメをつくりだしたとき、その二つのチームスタッフからこぼれた何人かのアニメーターがいました。

「おれたちは、おちこぼれじゃないか。」
というひがみムードがたちこめようとしたとき、
「ばかなことをいうな。みんなの実力は、あの二本のスタッフどころじゃない。あの二本は原作つきだが、ひとつこのメンバーで、オリジナルなものをつくってみようじゃないか。」
と、ぼくは激励して、W3を考えてみたというわけです。

このシリーズのキャラクターは、スタッフ全員で考えて、ひねりだしました。背景もわざと大きなセット的な絵をかいて、そのあちこちを写真にとってぼかしてつかうという新手法を用いました。トレス線を、りんかくだけを少し太めにアクセントをつけてかいたのもユニークでした。
(後略)

(講談社刊 手塚治虫漫画全集『W3』3巻 あとがきより抜粋)

「大評判!テレビ放映中!」
小学館 サンデー・コミックス 「W3」3巻表紙 1966年

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  • W3 (ワンダースリー) (1)
  • W3 (ワンダースリー) (2)
  • W3 (ワンダースリー) (3)

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