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ストーリー

孤独な高校生の少年が、ポスターの中の少女に恋をして、悩み、傷つきながら成長して描いた青春ドラマです

手塚治虫が「自信作」と太鼓判を押すだけあって、この「るんは風の中」は短編でありながら、様々な魅力が備わった、不思議な作品になっています。
主人公・豊田明が通学路のガード下で見つけた美少女・るんは、ポスターでした。明はるんをはがして家に持ち帰り、自分の部屋に貼ります。
何の違和感もなく、ポスターのるんと会話をする明に、読者ははじめ、戸惑うことでしょう。ポスターと会話するなんて、この明というやつは暗いやつだ、と思う人もいるかも知れません。漫画ならではのSF的な設定なんだな、と思う人もいるでしょう。
事実、始めは明るそうに見えた明ですが、実は今の学校になじめず、「サバクのまん中にとり残されたみたいな」暗い学生生活を送っていたのです。るんのような、2次元の住人と言葉を交わす事ができたのも、あるいは明が現実の生活に今ひとつなじめず、疎外感を感じていたからなのかもしれません。明とるんは次元の違いに隔てられていて、るんはあくまで異次元から語りかけるだけのガールフレンドです。遠距離恋愛で電話だけがつながり、というカップルと似ていますが、決して本当には会う事のできない、るんと明の方がずっと悲劇的です。なにしろ人間とポスターですから、幸せな結末が望めるわけでもないのに、明はるんに真剣に悩みを打ち明け、るんは懸命に落ち込みがちの明を励まします。るんが明を励ます言葉には、「ポスターでしかない」るんの悲劇がにじんでいて、何度読んでもちょっと切なくなるのです。
人間とポスターの友情物語、というちょっと風変わりな設定ながら、決してキワモノではなく、爽やかな後味で楽しめる短編です。

解説

1979/04 「月刊少年ジャンプ」(集英社) 掲載

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