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ストーリー

「流線型事件」は、ウサギのホップがオーナーの「ホップ社」とオオカミのウルフゾオンが社長の「ウルフゾオン社」という、2つの自動車会社の競争を描いた作品です。

前半は、ホップ社が1000台の大量注文を受注した事を発端とした、会社同士の争いがメイン。とはいえ、粗製濫造で評判の悪いウルフゾオン社は、卑怯な手を使ってホップ社の生産を妨害するだけで、完全な逆恨み。とても正々堂々とした商売の競争とはいえません。それでもホップ社の社員達は財産を投げ打って、1000台の車を期日までにそろえます。そして後半では、十万ドルをかけた長距離自動車レースで、無一文になったホップとウルフゾオンが文字通り「競争」をします。ホップは特別に設計した新車でレースに挑みますが、ウルフゾオンはあちこちに汚い罠をしかけます。果たしてその結末は?
この作品は主役から脇役にいたるまで、登場人物がすべて擬人化された動物で描かれており、なんともファンタジックな雰囲気を漂わせていますが、これは勧善懲悪の寓話的な内容に合わせ、イソップ物語や日本のおとぎ話などの世界観を意図的に拝借したものと思われます。そしてもちろんディズニーアニメも大きく影響しており、ことに自動車レースでのドタバタは、非常にアニメ的なスピード感に満ちています。

なお、「釣りキチ三平」でおなじみの矢口高雄先生は、小学生の時に初めて出会った手塚作品がこの「流線型事件」で、その時のエピソードを「ボクの手塚治虫」という自伝作品の中で描かれています。スマートな絵柄や科学的な内容、そして映画的手法を駆使した画面構成にショックを受けたとのことで、まさに手塚漫画の影響で、一人の漫画家が誕生するという、理想的な出会いだったといえるでしょう。

解説

1948/10/10 単行本(娯楽社)

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  • 有尾人

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