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手塚漫画の魅力というと、かわいい絵にそぐわない深いテーマとか、どんなにカッコいいヒーローも秘めた悩みを持っているリアリティとか、人によってさまざまに挙げられると思いますが、その共通項の一つに、作品の持つ多重性が挙げられると思います。
この『夜明け城』には、そんな手塚漫画の魅力が、ある究極の形として凝縮されています。アトムの持つ、ヒーローなのに一人ぼっちの悲しみとか、サファイヤがひた隠しにした女の子の心だとか、ブラック・ジャックがふと見せる優しさなんかの、手塚漫画の主人公達が共通して持っている二重性が、この漫画の場合、ほとんど全ての登場人物に見られるのです。
それは日本人がよく言われる、ホンネとタテマエが違うとか、裏表があって信用ならないとかということではなく、一筋縄ではいかない、とか、奥ゆかしいとでもいいたい深みがあり、戦争が絶えず、隣国同士でだましあう安土桃山時代という時代の雰囲気をよりリアルに感じさせてくれます。
主人公の緑丸、その父親に家老の藪蛇、夜明け城の監督を務める紫藤之介、それに二人のヒロイン、藪蛇の娘の弥生にお妙など、主要登場人物たちがそれぞれに持つ裏の顔については、作品の筋に関わってきますので、ここでおいそれとご紹介するわけには行きません。ぜひ作品を実際に読んであれこれ、考えてみて楽しんでほしいと思います。

解説

1959/09-1961/03 「中学一年コース」「中学二年コース」(学習研究社) 連載

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  • 夜明け城

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