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ストーリー・解説

戦争で討ち取った男に頼まれ、その家族に男の戦死を伝えに言った侍は、つい情けから男の家族と仲良くなり…。戦争のむなしさを描いた時代劇短編です。

この作品は『漫画少年』の1954年6月号に掲載されました。 吉川英治や林不忘などの描く時代劇小説のような物語を、手塚治虫らしいシンプルでかわいいキャラクターが演じた、初期手塚作品らしい佳作です。
主人公はヒゲダルマ演じる久奴木楢丸(くぬぎならまる)。戦で討ち取った敵方の豪傑榎の兵衛との約束を守るため、自分の素性は隠したまま、榎の妻と息子・兵馬に、榎が討ち死にしたことを伝えにいきます。落胆する妻子の暮らしの手伝いをするうちに、すっかり家族のように仲良くなってしまう久奴木と兵馬たち。ところが久奴木がほかならぬ父の仇であることが兵馬に知れてしまいます。
ページ数はたったの30ページ弱の小品ですが、その中で刀を捨てた久奴木と兵馬の確執や心の交流が、無駄なく、分かりやすく描かれています。とくに兵馬は小さな子どもだったのがラストでは立派な武士に成長していて、すぐに読みきれる短編ながら、満足度の高い作品です。
作品には「武士・兵士の悲しさ」「戦争の空しさ」といった重いテーマが一貫して流れています。それでも読後感はさわやかで、それでいてしみじみとテーマが諒解されるのは、ひとえにヒゲダルマの名演にあり、と言っても過言ではないでしょう。
初期スターのヒゲダルマが演じる武士がいい味を出しています。いかにも勤勉、実直といった雰囲気の漂うヒゲダルマならではのあたり役と言えるでしょう。いかめしいトラひげに大きな目が、いかにも強そうでありながら、心優しい、頼りになる面も演じられるかわいらしさがあり、他のキャラクターで考えてみてもなかなかぴったり来ません。
手塚スターとしては地味なヒゲダルマですが、この「夏草物語」で彼の魅力に気づいた方は、ぜひ他の作品でも彼を探して見てください。

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