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ストーリー

手塚治虫の動物マンガには、『ジャングル大帝』のようなファンタジックなものから『動物つれづれ草』のようにリアルなものまでさまざま、取り揃えられているのですが、この『山太郎かえる』は、ちょうどファンタジーとリアルの真ん中ぐらいに落ち着く、小説でいったら『ごんぎつね』や椋鳩十の短編などを彷彿とさせる作品です。
事故と山狩りで親グマを亡くし、人間に飼われていたこぐまの山太郎と、蒸気機関車「しい六」の奇妙な友情の物語。人間の作ったものでありながら、どこか人間を超越した力の象徴のような蒸気機関車しい六は、山太郎に野性の力の尊さや、クマとしての尊厳を教えます。
蒸気機関車といっても、今の読者にはピンとこないかも知れません。
「しい六」と同型であるC62型SLは、かの『銀河鉄道999』の客車を引っ張っていたあのSLのモデルでもあり、1948年に完成、東海道線や常磐線など、さまざまな路線を走った花形機関車だったものの、作中にも少し触れられているとおり鉄道の「電化」によって次々と表舞台から撤退し、1960年代にはわずかに北海道を走った後、ついに1976年、北海道鉄道記念館に保存されたそうです。
山太郎のつながれていたお店は根室の操車場の近く。ということは、「わしはまだ若いんだ!」といいながら車庫に保存されてしまったしい六さんも北海道で活躍していたC62型の一台だったのでしょう。一方、こぐまの山太郎はひょっとするとロシアあたりから流れてきたヒグマなのかも知れません。どちらも当時の北海道の名物で、彼らの取り合わせは奇妙ながらもちゃんと必然性のあるものでもあるのです。蒸気機関車とクマが自由に会話を交わす一方で、そういったリアリティが保たれているところが、この作品の独特の味わいとなっています。
なお、この作品は1989年に『ライオンブックス』シリーズの一環としてアニメ化もされていますので、原作を読んで気に入った方は、そちらも是非見てみてください。

解説

1980/01 「月刊少年ジャンプ」(集英社) 掲載

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  • タイガーブックス (6)

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