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ストーリー・解説

1979/01/01-02/04 「週刊少年サンデー」(小学館) 連載

『ジャングル大帝』をはじめ、手塚漫画にはしばしば、人間と自由に意思疎通を取れる動物が出てきます。レオのように自由に言葉が話せなくとも、『ブラック・ジャック』のシャチのトリトンや、『鉄腕アトム』ではヒゲオヤジの愛犬、ペロなど、有名作品だけをざっと見渡してもいくらでも例が出てくるほど、手塚漫画に動物は欠かせない存在となっています。
あまり世界観がリアルだと、動物にやたらに言葉をしゃべらせるわけには行きませんが、この「二人のショーグン」のように、それを逆手に取った形で、「言葉をしゃべるふしぎな動物」という特異なキャラクターを主軸にすえれば、一見平凡な学園ドラマでもちょっとファンタジー風味のふしぎな作品となります。
代議士の息子でありながら落ちこぼれでのんきな中学生のショーグンこと有馬将軍は、動物が大好きで40匹もネコを飼っています。その飼いネコの中でもことさら賢い一匹、ピンクレディーが、ある日「ネコの守り神」よりふしぎな力をさずかり、人間の言葉をしゃべれるようになってしまいます。
養ってもらった恩返しに、何でも望みをかなえる、というピンクレディーに、ショーグンは、「身代わりに学校に行ってほしい」と頼みます。落ちこぼれから苦労をして代議士となった父から、東大に入れ入れとお尻を叩かれていたショーグンは、学校がほとほとイヤになっていたのでした。
化け猫の話は昔から怪談にもあるとおりですが、ショーグンに化けたピンクレディーは化け猫と言うほど不気味な感じではありません。耳と尻尾がネコのままですがそれもかわいく、おまけに本物のショーグンよりずっと美少年。解説にあるとおり、当時、大島弓子の「綿の国星」と並べられたのも、このネコのショーグンの上品なたたずまいが、あの「チビ猫」に通じるものがあったからかもしれません。しかし「綿の国星」では、ネコと人間のあいだに厳然とした境界があるのに対し、この「二人のショーグン」では、ひょっとして、ネコと人間でも心から分かりあえる事ができるのかもしれない、と思わせるぐらい両者の境界はあいまいで、確かにテーマも内容も、全く別物と言えるでしょう。
物語が進むにつれて次第に深まってゆくピンクレディーとショーグンの友情には心温まり、読めば何だかネコが飼いたくなる、そんな作品です。

(タイガーブックス5巻収録)

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  • タイガーブックス (5)

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