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小学館 週刊少年サンデー 扉絵 1966年

ストーリー

オオカミに変身する少年・トッペイを主人公にした怪奇作品です。

ある日、トッペイと名のる少年が、アニメーション制作会社・虫プロにあらわれ、手塚治虫社長に頼みこんで入社することになりました。

トッペイは、実はオオカミに変身するバンパイヤの一族で、行方不明の父を探すために上京してきたのでした。けれども、その秘密を悪人・ロックに知られてしまい、トッペイは、ロックの悪だくみに利用されてしまいます。

一方、同じころ、これまで人間にしいたげられてきたバンパイヤたちが、ひそかにバンパイヤ革命を起こすことを計画していました。その革命をやめさせようとするトッペイと手塚治虫。バンパイヤ革命をも自分の悪だくみに利用しようとするロック、そして警察、それぞれのおもわくが入り乱れ、トッペイはしだいにおいつめられていきます。

解説

1966/06/12-1967/05/07 「週刊少年サンデー」(小学館) 連載

「手塚治虫が語るバンパイヤ」の欄でも後述するように、この作品を発表したこと自体、手塚治虫にとっては当時冒険だったようです。たとえば「鉄腕アトム」や「0マン」のようなまっすぐな目をした少年たちが主人公の清く正しい路線からの逸脱として。

この作品ではアトムやリッキーの立場はトッペイが担っているといえそうですが、キャラクターとして強烈な印象を残すのはやはり、ロックこと間久部緑郎のほうでしょう。

シェークスピアの「マクベス」をベースにした作品で、ロックが、悪の化身のような青年・間久部緑郎を怪演しています。

バンパイヤ族と人間の戦いを描いた第1部は「週刊少年サンデー」に連載され、その後、ウェコが登場する第2部が少年向け月刊誌「少年ブック」に連載されました。

主な登場人物

トッペイ

トッペイ(立花特平)

木曾の山奥からやってきた少年。虫プロにはたらきたい、といって給仕として入社する。素直そうな少年だが、時折奇妙な行動をする。じつは怒りを覚えると狼に変身する「バンパイヤ」。
>キャラクター/トッペイ

トッペイ

チッペイ

手塚治虫

チッペイ

トッペイの弟。丸いものを見ると狼に変身する子供。
>キャラクター/チッペイ

手塚治虫

漫画家。虫プロダクション社長。トッペイが虫プロに入社してきたことにより、バンパイヤを巡る事件に巻き込まれる。バンパイヤがたくらむ革命の存在を知り、それを阻止しようと暗躍する。
>キャラクター/手塚治虫

間久部緑郎

間久部緑郎

バンパイヤ達の存在を知り、彼らをつかって世界の破滅をたくらむ少年。整った容貌を生かした変装が得意で、狡猾な方法で何人もの人を殺害している。
>キャラクター/ロック

間久部緑郎

手塚治虫が語る「バンパイヤ」

小学館 少年サンデー 連載時 扉絵

ロックの世界征服を予言する三人の占い師

最近、ある少年誌に、「バンパイヤ」というマンガをはじめた。これに、物凄く非難が集中した。
「まれにみる駄作! やめちまえ。手塚はもう終わりだ」
「バカヤロー手塚、絵は荒涼、ストーリーは陳腐。独創のカケラもない。そんなに金が儲けたいか」

ボクはとび上がり、ノド仏をかきむしり、鼻毛を五本ずつひっこ抜き、ウオノメをナイフでけずりとって激怒する。
そんな読者は、たいがい高校以上のオールド・ファンに多い。
くやしい、有り難い、悲しい、情けない、にくたらしい、嬉しい、やるせない。
その人達は手塚節を求めてくれているのだろうな。ヒロイズム、ペシミズム、ニヒリズム、ヒューマニズム、リリシズム、正義、平和、勧善懲悪、大河ドラマ、それらの泣かせ場。

話はそれるが、谷内六郎氏は延々と、相も変わらぬ絵で『週刊新潮』を飾っている。彼の固定ファンが、あれ以上の冒険を望まないそうなのだ。
そしてボクの読者も、ボクの作品の印象をそっと心の中にしまいこんで、それ以外のものを受けつけず満足してくれているのだと思う。
その人達を裏切りたくない、と考える。しかし、そうすることによって、ボクは完全に、手塚節のマンネリ化に終わってしまうことがこわくてしようがない。

ボクは子供マンガ家だから、はっきりいって、子どもマンガを買わない層が支持してくれたって、肝心の子どもがソッポを向けば悲しい。そして、子どもってのは、時代と共にビシビシ変化する。中学生ですら、同じガキのくせに、小学生のことを、あいつらの考えてるこた、わかンねえや、といっている。従って、ボクの作品も、彼等に共鳴され支持されるには、年々刻々、変身していく必要があるのだ。そのためには一握りのオールド・ファンには、申し訳ないが、裏切ることになる。「尼寺へお行き!」とオフェリアをつきとばす、あの心境。
こんな悩みを、ボクは過去二十年の間に、何回もくり返しているんだ。その都度、クソミソな非難を受けた。
(中略)

「バンパイヤ」は----まだPRする気だよ、図々しい----「マクベス」のパロディである。ボクはシェイクスピアは齊藤茂吉氏ぐらい好きだが、「マクベス」と「リチャード三世」だけは大嫌いだ。あのロシア料理の羊みたいなどぎつさが手塚節に合わないらしい。これを使う気になったのは、「悪とはなにか」という、愚にもつかないテーマの物語の、骨組みにしたかったからだ。間久部緑郎という主人公が、横浜の親不孝通りで、三人の星占いの老婆に、九竜虫かなにかを呑まされて、世界征服を予言されるところからはじまる。この作品に非難が集まったのは、まだほんの序の口で、読者はあまり唐突で異質な語り口に抵抗を感じたんじゃないか、といい意味に解釈したんだが、実のところ、ボク自身ひどく気持ちにいらだちと迷いがあることはかくせないのだ。
(後略)

(『話の特集』 1966年10月号 手塚治虫への弔辞 より抜粋)

小学館 少年サンデー 連載時 扉絵

ロックの世界征服を予言する三人の占い師

小学館 別冊少年サンデー  表紙用イラスト 1967年

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  • バンパイヤ (1)
  • バンパイヤ (2)
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