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ストーリー

スランプに悩む野球選手のもとに、科学者が現れて、ある薬を託した。スランプを脱することができるというその薬とは? SFタッチのミステリー短編です。

かつてのヤクルトアトムズ(現スワローズ)や、現在でもおなじみの西武ライオンズに、マスコットとしてキャラクターが採用され、野球界との結び付きも意外と深い手塚治虫ですが、いわゆる「野球もの」の作品は全くと言ってよいほど手がけていません。
もちろん、「野球もの」といえば、『巨人の星』『ドカベン』など、昔から少年漫画の定番とも言えるジャンルです。かのトキワ荘で手塚治虫と向かいの部屋に住み、若い漫画家達のリーダー的存在だった寺田ヒロオも、『スポーツマン金太郎』など得意の「野球もの」で人気を博していました。しかし手塚治虫は、試合の展開がドラマの中心になるような作品は物足りなかったのか、もしくはスポーツ自体が不得手だったのか、とにかく「野球」は、作品の一部に味付け程度に登場させるにとどまっています。
そういうわけで、野球界を舞台にしている、この『バックネットの青い影』は、たとえジャンルはSFでも、手塚作品の中でも珍しい部類に入ります。
実力以上の能力を欲した主人公が、安易に他の力(薬など)に頼った結果、悲劇を招いてしまう…という展開は、以前ご紹介した『ユフラテの樹』などを思い出させますが、何となくどちらの作品にも、人知を超えた力に翻弄されるキャラクター達を一歩引いて眺めているような、手塚治虫の造物主的視点が感じられてなりません。
ちなみに、当時、手塚治虫の作品は「SF味が強くてわかりにくい」などと言われたそうですが、この作品での「時間の違う世界に存在するもう一人の自分」を扱ったアイデアも、タイムマシンを一躍有名にした『ドラえもん』もなかった当時の子供達には、ちょっと難しかったかもしれません。

(SFミックス1巻 所収)

解説

1962/10 「別冊冒険王」秋季号(秋田書店) 掲載

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  • SFミックス (1)

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