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ストーリー

悪人一家・ドースン家の三兄弟は、父の遺言の宝を争って探しまわります。父の所有する荒地のどこかに、それは埋まっているらしいのですが…。西部劇短編です。

『ドースン一家の記録』は、本格的な少年向け西部劇であり、同時にストーリーの中にさまざまな教訓を含んだ寓話的な作品でもあります。
先祖代々悪人という、悪名高きドースン一家の4人息子が、父親が危篤との知らせを受けて、10年ぶりにわが家へと戻ってきました。父親は4人の息子に「あの丘のどこかに10万ドルが埋めてある。4人で力を合わせて探すのじゃ」と言い残し、死んでしまいます。4人の息子達は、お互いを牽制しあいながらも、食糧不足や原住民の襲撃などの困難に力を合わせて立ち向かいながら、10万ドルを探して掘り続けます。そして、とうとう一つのツボを掘り当てるのですが…
まず、この作品の魅力は、ドースン一家それぞれの個性的なキャラクターにあります。それぞれの個性が化学反応的に絡み合い、単純な「宝探し」のストーリーに起伏を持たせ、盛り上げていくのです。まるで「キャラクターにはそれぞれ違った個性を待たせること」という、漫画の描き方の基本をそのまま具現化したかのような、見事な人間の描き分け方です。
そしてもう一つの魅力は、手塚治虫のストレートなメッセージです。時に痛烈な人間批判を読者にぶつけてくる事も多い手塚作品ですが、この『ドースン一家の記録』では、年少の読者に向けて、家族愛の美しさ、地道な労働の尊さ、そして正しい生き方を選択することの重要さなどを、ストーリーの後ろからやさしく語りかけてきます。その読後感は、生きるための大事な教訓を含んだ一篇の童話のようです。

(SFミックス2巻収録)

解説

1961/01/01 「別冊少年サンデー」正月号(小学館) 掲載

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  • SFミックス (2)

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