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虫ん坊 2016年11月号 特集2:いよいよ収穫!おやま田んぼアート“その後”

虫ん坊 2016年11月号 特集2:いよいよ収穫!おやま田んぼアート“その後”

 虫ん坊9月号で特集したおやま田んぼアート。7月に行われた見学会からあっという間に約2ヶ月が過ぎ、いよいよ収穫シーズンがやってきました。9月25日には、各会場にて田植え参加者を対象にした稲刈り会を開催。 田んぼに描かれたアトム達はその後どうなったのか!? 再び小山市を訪れ、見ごろのピークを過ぎた田んぼアートの“その後”と“収穫”にフォーカスを当ててお届けします。


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虫ん坊9月号:http://tezukaosamu.net/jp/mushi/201609/special2.html
おやま田んぼオフィシャルサイト:https://oyamatanboart.com/news/



●田んぼアート その後の姿

 虫ん坊スタッフは、約2ヶ月ぶりに小山市美田東部土地改良区の島田会場を訪ねました。島田会場の田んぼアートといえば、改良区の方々のお墨付きであり、そのクオリティが特に好評だったブラック・ジャックとピノコ。
 収穫時期を迎え、一体どんな姿になっているのでしょうか……。


〜見学会時〜

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〜稲刈り時〜

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虫ん坊スタッフ カニミソ
うわーーー!!あれだけ綺麗に色づいていた稲も、すっかり茶色に変色してますね。


虫ん坊スタッフ オオヤマ
まったく別の姿になってる!!穂が育ちきって、絵柄もずいぶん変わっています。


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高瀬孝明さん
見事に育ってるでしょう!!


朝倉加代子さん
いよいよ、稲刈り時を迎えました!!


その声は、小山市美田東部土地改良区の高瀬さんと朝倉さん! 9月号では、お世話になりました。
稲刈り会ということで、今回もおふたりに登場いただき、収穫についてアレコレお聞きしたいと思います。

今回の田んぼアート、育ち具合はいかがですか?


稲が活着(苗が土に根付くこと)してから、分けつ(成長した稲がいくつもの穂に分かれること)を迎えるまで、順調に成長しました。
分けつし、ひとつの稲につき穂が倍に増えたため、絵柄の線もこんなに太くなりました。稲穂の育ち具合は、例年どおり良い出来栄えです。絵柄はずいぶん変わってしまいましたが、これは稲がよく育ったからこそ、ですね!


今年は台風が多く、不安定な気候が続きましたが、なんとか収穫を迎えられてほっとしています。ここ最近の連日の雨のせいで、今日は畑が泥まみれで大変なことになっていますが……。
ほかの2会場の田んぼアートも順調に育ち、今日はここ島田会場と同時開催で稲刈りを行います。


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島田会場を通る両毛線沿いから見えたピノコも、この通り! かろうじてピノコとわかるシルエットに……。


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下生井 しもなまい 会場の田んぼに描かれたレオはこんな感じに。(写真提供:太陽インダストリーアフリカ)


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絹会場のアトムはもう刈られたあとでした!地上絵のような刈られ跡です。(写真提供:太陽インダストリーアフリカ)


ところで、キャラクター部分以外は綺麗に稲がなくなっていますが……。まさか、台風に飛ばされたとか!?
(取材当時は台風のニュースが飛び交っていた時期でした)


違います(笑) これは、事前に私たちで刈りました。
絵のまわりはすべて「とちぎの星」という品種を植えているのはご存知ですよね。今回、田植えから稲刈り会まで参加してくれた皆さんに感謝をこめて、ぜひとも新米のとちぎの星を召し上がっていただこうと思い、一足先に収穫し、参加賞のプレゼントとしてご用意させていただきました。



ぜひ食べてみたいです!!!!


まだあげられません! まずは、稲刈りをしていただかないと! 皆さんには、ブラック・ジャックとピノコを刈っていただきます。



●いよいよ収穫!

 ということで、来たからには刈らねば、と鎌と長靴を装備し、田んぼアートに飛び込む虫ん坊スタッフ。
 稲刈り会には、一般参加者に加え、田植え〜見学会を体験したナイジェリアの留学生の方々が参加。
 みんな一列に並んで、普段は患者にメスの刃を入れるブラック・ジャック先生に向かって、鎌の刃を勢いよく入れてゆきます。

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稲刈り初体験のわたしたちに、稲刈りのコツを教えてください。師匠、お願いします!


まず、鎌の使いようですよね。手を左右に動かしてのこぎりのように刈るのではなく、手首を使ってサクッと軽い力で引けば大丈夫。 それに加え、田植えも稲刈りも、腰の位置が重要です!中腰の体制を崩さず動けば、刈り口も均一の高さで揃うはずですが……これじゃあ切り口がバラバラで、全然ダメです!



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ガーーン


鎌を使うコツとしては、稲をつかみ自分の体のほうにすこし引き寄せて、鎌は稲株低めに当てて上に引き上げるようにして稲を刈ります。このほうが、引く力も平行に鎌を入れるより軽く刈ることができます。


まぁ、ようは慣れですね! あちらの留学生の方は、なかなか上手にできています。


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留学生の方:サクサク進む


は、早い……。私もはやいとこ慣れるように頑張ります……。
いや〜、雨のせいで見事に畑がぐちゃぐちゃで、泥だらけです。 栃木県は、雨よりも雷が多いと聞いたことがありますが、実際のところ、どうなのでしょうか。


とても多いですよ。毎年この時期になると、昼にきたら、夜にまた来るといった頻度で、毎日のように雷が鳴ります。  ですが、今年は例年にくらべて全然雷がこなくて、ここらへんの農業者の間でも今年は雷が来ない!と話題になるくらいでした。
毎年こんなに畑も荒れないのですが、連日の雨でこのとおりです。転ばないように気をつけてくださいね。


今年は、台風のせいで雷が来なかったのかもしれません。去年の台風9号の集中豪雨で小山市も被害をこうむりましたが、あの豪雨をきっかけに、気象条件がいままでと違ってきたなと感じています。
来年のこの時期の気候はどうなるのか、予想がつきませんね。来年ももちろん田んぼアートイベントを開催したいので、今から心配です。この稲刈り会の前日も雨がひどかったですから……。


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稲刈り当日は快晴!9月後半だというのに、汗ばむ気候でした。


ふー、なんとか泥まみれになりながらも稲刈りに慣れてきました。今私たちが刈っている、この田んぼアート稲は収穫後、どうなるのでしょうか。食べられるんですか?


今回は、全種類食用にしようと思っています。キャラクターのまわりを囲った緑色の稲、「とちぎの星」は先程言ったように、田んぼアート米として特別に参加者のみなさまへ配布します。
田んぼアートで使用したゆきあそびやむらさき米(古代米)、あかねあそびといった色付きの稲は、収穫の時点で一緒くたに混ぜて、雑穀米にする予定です。


色つき稲も、食べられるのですね。


アトムたちを彩った稲は観賞用の稲なので、米そのものの味はやや落ちてしまいますが、食べられますよ。色つきの稲は食用としては珍しいものになります。この雑穀米は、11月に行われる収穫祭でお供えしたあと、商品化もする予定です。


そんなイベントが!


収穫祭とは五穀豊穣をお祝いするお祭りで、集落ごとに毎年行われている秋祭りのことです。島田地域の集落でも集落にある神社にその年に収穫したお米や穀物を奉納し、お酒や甘酒等を振舞います。美田東部土地改良区でも水源である思川の頭首工(大光寺堰:栃木市)において水の大切さに感謝し、田んぼアートの成功をお祝いし、感謝祭を行う予定です。


小山市ではお米以外に、主になにを収穫しているのでしょうか。
小山駅で、小山市限定かんぴょうまんじゅうなるものを見かけましたが……。


小山市では米とビール麦の二毛作をしているので、お米以外だと冬場はビール麦の収穫を行っています。


昔は桑とかんぴょうの生産も有名だったのですが、両方とも育てるのにかなり労力がいるので、ほとんどの人がやめてしまい、今では小山市内で収穫しているのは数パーセントと、かなり落ち込んでしまいました。
米と麦に加え、専業農家のかたは、トマト、きゅうり、にら、なすといった施設野菜を常に育てて生活していますね。
1年通して、作業詰めですよ、農家は……。


やっと収穫時期を迎えられましたが、この後、11月の下旬には麦蒔きが始まりますので、田を耕うんし、種まきの準備をしますので、まだまだ休まりません。この後は農閑期(12月〜2月)に入り、一年で一番時間に余裕がある時期ですが、3月に入ると田植えの準備が始まります。


稲と麦の成長期間も決してヒマというわけではありませんよ。 夏場は田んぼの水管理とひたすら草刈りをしますし、ほかにも害虫駆除や除草剤を撒いたりスズメ避けに奮闘したりなど……収穫までは草や虫との戦いで、一日中田んぼのことを気にしていますね。


農業の世界、なかなかシビアです……!


でも、昔よりも作業効率は遥かに上がっていますよ。農具の機械化が進まなければ、刈った稲を天日干しするところからすべて手作業でこなさなければいけなかったですから。


お米は天日干しのイメージがありますが、今は機械まかせなのでしょうか。


今は乾燥機が主流です。最終的な味や味覚も天日干しとさほど変わりがないため、重宝されています。機械だと簡単に湿度や温度も調節できるのでとても便利ですね。それに、昔ながらの天日干しだと、この量の稲を干すのはかなりの時間と労力がいりますからね。


乾燥させたあとは、籾から玄米にし30kgごとに袋詰めして、これを精米機にかけます。これでようやく白米になります。


あそこに置いてある謎の機械も関係あるのですか?


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謎の機械:ズゴゴゴゴ



あれは、足踏み式の脱穀機です。鉄製のドラムに歯がさしてあり、ココに稲の束を当てて、足でレバーを踏んでこのドラムを回転させて脱穀を行います。
この足踏み脱穀機は、明治時代に発明され、昭和初期には全国広範囲の地域に普及し、戦後まで使われ続けました。コンバインの原型みたいなものです。


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こちらは 唐箕 とうみ と呼ばれる農具で、穀物を脱穀したあとに使用されます。ハンドルを回すと風力が起こり、籾がらや藁くずを風によって分別することができます。
農具も機械化が進んでいますから、人力の農具を所持している農家は少ないと思いますよ。


今や農業界でもロボットが活躍しているんですね。


今日は手作業で進めていただくので、どんどん刈ってください!



もう疲れた……。


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コンバインなどの機械農具のなかった時代はすべて手作業で行われた農作業。普段デスクワークの虫ん坊スタッフには酷でした……。



●いよいよ田んぼアート“最終形態”をいただきます!

虫ん坊 2016年11月号 特集2:いよいよ収穫!おやま田んぼアート“その後”


稲刈り、お疲れ様でした。おまちかね、田んぼアート米をプレゼントいたします。今年のアートをデザインしたパッケージは、もちろん今年限定品です。お客さんにも好評いただいています。


これがとちぎの星あらため田んぼアート米! いただきます!


とちぎの星は、近年発表された品種でしたよね。


実は、とちぎの星は小山市で収穫するのは今年で4年目になります。しかし、栃木県で正式に品種として登録されたのは去年の27年度なんです。


とちぎの星は、あの有名なコシヒカリとあさひの夢のミックスした品種です。コシヒカリは味はとてもおいしいのですが、稲が柔らかく雨風に弱いため、倒れやすいのです。
それに比べて、あさひの夢はしっかりしたしなやかな稲が特徴で、雨風にも耐える品種です。しかし、コシヒカリに比べると味は落ちます。
この2つの品種を掛け合わせて、台風でも倒れにくい稲で、なおかつ味も一級品な米を作ろう、ということで開発されました。


両米のいいとこどりですね!


田んぼアートには持ってこいの品種です。味も特Aをいただいています。


トクエーとは?


お米界でいう、最高ランクのことです! 毎年、炊飯した白飯を実際に試食して味や食感を評価する食味試験が行われ、「米の食味ランキング」として発表されます。


食味のほかに、鮮度判定、タンパク質の多さ、米の粘弾性特性などをを調べたデータをランキングに反映させます。基準米と試験対象の米を比較して、基準より良好なものを「A」、やや劣るものを「B」、特に良いものを「特A」……のように細かくランク付けされます。


まだ世間一般には流通されていいない品種ですが、いずれとちぎの星を有名にしていきたいですね。来年の田んぼアートにももちろん使用する予定です。


来年の田んぼアートの絵柄はもう決まっているのでしょうか!?


いいえ、まだです。でも12月ごろには決めはじめないといけません。また手塚さんのキャラクターを使用できればいいなぁと話合っていますが……『火の鳥』とか、ぜひとも田んぼにあのダイナミックな姿を描いてみたいですよ。 
来年のおやま田んぼアートも、ご期待いただければと思います!



ありがとうございました!!



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その後、田んぼアート米でおにぎりをつくりました!アトムとレオのふりかけをかけて、いただきます!!



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