1969年
宇宙にゴミを捨てようとする発想や、月を水爆や見世物に使うアイデア。現代人の無責任さや科学の暴走への皮肉を込めたブラックユーモアあふれる対談。
手塚治虫と小松右京の対談集 「宇宙は笑う」より
小松(左京) 月で水爆実験なんかやったらおもしろいだろうな。
手塚(治虫) 月でそういう放射能のたいへん大きいものをやったとき、放射能の灰とか、そういうものは地球まで飛んでくるだろうか。
小松 地球までは飛んでこないでしょう。
地球の上の放射性廃棄物なんかも、月に捨てたらどうなんだろうね。
東京なんかもさ、もう夢の島は満員だそうだから、プラスチックのカプセルに入れてゴミを捨てられるように、月の権利を買うべきだな(笑)。
「アサヒグラフ」に掲載したイラスト(1969年8月15日号)
手塚 ゴーストムーンというのがあるじゃないの。あそこに捨てればいいんだよ。
いま、もうだいぶたまっているんでしょう。
小松 宇宙塵がたまっているんだね。
そこへ地球からぼんぼんゴミ捨てると、たまりにたまって、ワンワン宇宙バエが発生してね……。
手塚 それでときどき燃やして消毒したりしてね(笑)。
だけど水爆実験はともかく、月で見世物をしたらおもしろいだろうね。
たとえば、月が夜によって色が変わるようにするんだよ、七色に。
講談社版手塚治虫漫画全集『手塚治虫対談集 1』「小松右京——宇宙は笑う」より
(初出:1969年9月号 宝石 所載)