虫ん坊

ドラマイズム『アポロの歌』 二宮健監督×MBS上浦プロデューサー×手塚プロダクションライセンス部湯本 鼎談 その1

2025/02/14

218日から放送開始のドラマ『アポロの歌』。髙石あかりさん、佐藤勝利さんのダブル主演の本作は、タイトルの通り手塚治虫が1970年に『少年キング』に連載したマンガ『アポロの歌』を原作としています。

 手塚治虫の大ファンという映画監督・脚本家の二宮健さんを監督に迎え、全7話のドラマとして制作された本作は、どのような哲学の元に作られたのか。

監督、担当プロデューサー、手塚プロダクション翻案担当者の三人が話します。

c_dramaaporo_teidan_01_main.jpg


プロフィール

二宮健

映画監督、脚本家。大学の卒業制作『SLUM-POLIS(2015)が、第23回レインダンス映画祭 に正式出品されて全国で劇場公開される。2017年、『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』 で商業映画デビュー。2019年、岡崎京子原作の『チワワちゃん』が公開。2022年の『真夜中乙女戦争』では、第26回プチョン国際ファンタスティック映画祭にて最優秀アジア映画賞を受賞。そのほかの監督作品に『疑惑とダンス』(2019)、『とんかつDJアゲ太郎』(2020)、 『Sleepless/米国音楽』(2023)など。また、映画監督同士が声を掛け合ってオーガナイズされる映画上映企画『SHINPA』の代表を務める。『アポロの歌』では監督、脚本を手掛ける。


1回 『アポロの歌』とは近石昭吾のパーソナルな物語である

 

湯本:そもそも、この『アポロの歌』というマンガをドラマ化しようとおっしゃったのは、誰だったんですか?

二宮:自分です。

 主演の髙石あかりさんが初ドラマレギュラーを演じた作品(「生き残った6人によると」)で監督をしていて。その後も上浦さんは彼女をヒロインにしたドラマ(※「墜落J Kと廃人教師」シリーズ。二宮健監督もOP映像を担当)を作っていて、また一緒に何か作りたいよね、という話は出ていました。

 2023年の年末ぐらいに上浦さんから電話が来て、髙石さんと来年何か作りたいが、何をやるかはまだ何も決まってないから、やりたいことがあったら何でも言ってほしい、とおっしゃったんですね。

 僕はずっと昔から手塚治虫さんが好きで、いつか手塚原作で撮るのが夢の一つでしたが、スケールの大きさとか、手塚マンガでしか表現できないことっていうのがあって。

「手塚治虫を原作に撮りたい」って言っても、あまり前のめりになってくれないことが多くて。歴史も伝統もあるし、積みあがっているものがあまりに偉大だから、そう簡単にプロデューサーが「いいですね」とは言わない。僕もここまで仕事をしてきて、その感覚はなんとなくわかっていました。

 ところがそこに、「なんでもいいよ」って言う方が現れた。そんなプロデューサーは初めてだったので、「何でもいい」って言ったな、と思って。

湯本:上浦さんとしては、「手塚治虫なの?」みたいなのはなかったんですか? まさか手塚で提案がくるのかとか、避けたいなとか、なんとか説得しようというのはなかったんですね?

上浦:一切なかったです。こんな深夜ドラマの放送枠にご許諾いただけるのだろうか、とは思いましたけど。

 例えばシェイクスピア劇のように、ある種の古典のものには、どんな時代にも通じるテーマがあると思っていて、手塚さんの作品にいま改めて立ち返ることによる面白さは間違いなくある、と思いました。

湯本:ご自身では、これまであまり手塚作品は読まれてはこなかったのですか?

上浦:『アポロの歌』のような作品までは全く辿り着けていませんでした。いわゆる図書館に置いてあるような、『ブラック・ジャック』とか『ブッダ』、『火の鳥』ですね。『ブッダ』は今でも好きで家にあります。

湯本:若い世代は映像関係の仕事をなさっている方でも読んだことがない人が増えつつあるんですよ。マンガ家志望でも読んだことがない方もいらっしゃるそうです。

上浦:それでも、全然知っているほうではなくて。お恥ずかしい限りです。

c_dramaaporo_teidan_01_01.jpg

湯本:主要作品はご存じだったわけですから。それで、二宮監督から「手塚で」と言われてもすんなり理解なさったわけですね。

 二宮監督の手塚治虫作品との出会いのきっかけはなんだったんですか?

二宮:まず、父の本棚に大友克洋さんの『AKIRA』があったんです。興味本位で手に取って開いてみて、圧倒されたのが小学校1、2年生ぐらいのころです。とても面白かったけど、子供が読むにはハードな話だな、と思いながらも読んだら、最後のページに「手塚治虫にささぐ」と書いてあったんです。誰だこれは? と。

 そうしたら父が、「手塚治虫は読んだほうがいいよ!」と言って、翌日『ジャングル大帝』を買ってきてくれたんです。読んでみると、絵柄は確かにかわいらしいけれども起こっていることは結構残酷だぞ、と。それでも面白いからと読みふけっていたら父が次々と手塚作品を与えてくるようになって。『鉄腕アトム』とか『W3』とか、父自身が子供の頃、読んでいた作品ですよね。

 ある日小学校の朝の読書時間に、僕は本を持っていなかったので手塚マンガを持って行ったんです。まあ、マンガは駄目だぞ、みたいなことになったときに先生が、「手塚マンガならいいか...」と言って。僕だけ漫画が読めるぞ、という優越感が嬉しくて。

湯本:お二人とも、もともと素地があったのですね。私も上浦さんからお電話をいただいたときに熱量を感じました。でも、なぜ、『アポロの歌』なんだろう? とはなりましたね。

上浦:はじめてお電話したとき、湯本さんはびっくりなさっていましたよね。

監督の様子からこれは生半可な好きじゃないだろうな、という熱量があったので、そういう方が撮る手塚作品はどうなるんだろう、という期待もありました。

『アポロの歌』のほかにもいくつかお好きな作品を提案してもらって。『やけっぱちのマリア』とか、『日本発狂』とか、『アラバスター』とか。

全部読ませていただいたうえで、二宮さんが今一番やりたいものは『アポロの歌』なのだろうな、と。手塚作品を改めて読ませていただいて、エンタメの原点のような力強さを感じました。それが二宮さんの解釈で、髙石さんが躍動するとしたら、それはきっと面白いだろう、と思って。監督からの電話を受けたファーストインプレッションから、ずっとワクワクしていた感じですね。その後に、佐藤勝利さんがこの作品にチャレンジしたいと言ってくださったことも大きな意味を持ちました。
原作許諾においては、今まで手塚プロダクションさんとはMBSとしての関りも一切なかったので、どういったルートで手塚プロダクションにお話できるのだろうか、というのはありましたが、「なんでもいい」という発言の意味は、二宮監督が本当にやりたいことを一緒に気合を入れて作りたい、という私なりのオファーのつもりでしたので。

二宮:『アポロの歌』は実写化できるという確信がほかの作品よりも強かったんですよ。実写のスケールに収まる手塚作品はほかにもいっぱいあると思うんですけど、『アポロの歌』はドラマの中にある太い幹みたいなものがすごくパーソナルなものだと思うんです。作中ではさまざまな壮大な景色が広がっているけれども、ストーリーを通じての近石昭吾の変化はすごく個人的なものです。そこに実写でも作品の本質を捉えられる接地面を見つけた気がしています。

 その一方で、合成人のパートも大好きなので、そこはドラマでもやりたい。昭吾のパーソナルな成長譚としての実写化の糸口も感じつつ、壮大な世界観の中でやりたいこともありました。

上浦:人類共通に通じるような普遍的な物語を描くにあたっては何も人類すべてを映さずとも、視点がミニマムであればミニマムであるほど普遍に通じていく、という考え方を以前から大事にしていて。『アポロの歌』もあくまでも近石昭吾と渡ひろみのパーソナルな内面を掘り下げるような気持で見ていただければ、面白い旅につながるかなという気がします。

次回につづく


manga_gen_banner.jpg

↑原作マンガはこちら!↑

ドラマイズム「アポロの歌」
2025/2/18(火)初回放送スタート 
MBS:2/18(火)より毎週火曜24:59-
TBS:2/18(火)より毎週火曜25:28-

公式HP
https://www.mbs.jp/apollonouta/

公式SNS
公式X(旧Twitter):@dramaism2_mbs
公式Instagram:@dramaism2_mbs
公式TikTok:@drama_mbs
公式タグ:#アポロの歌 #ドラマイズム

配信
TVer、MBS動画イズムで見逃し配信1週間あり

Ⓒ「アポロの歌」製作委員会・MBS


関連情報

『アポロの歌』MBS/TBS ドラマイズム枠にて実写ドラマ化決定!!
ドラマ『アポロの歌』キャスト追加発表!
ドラマ『アポロの歌』Dragon Ash「The Lilly」がオープニング主題歌に決定!
ドラマ『アポロの歌』 エンディング主題歌は家入レオさん『No Control』に


CATEGORY・TAG虫ん坊カテゴリ・タグCATEGORY・TAG虫ん坊カテゴリ・タグ