フランス西部の都市アングレームでは、毎年、ヨーロッパ最大級のバンド・デシネの祭典「アングレーム国際漫画祭」が開催されています。1974年から開催されているこの祭典は、フランスで最も古いマンガ関係のイベントであり、1982年には手塚治虫も訪れています。
この祭典では、ヨーロッパのバンド・デシネは元より、世界各地の優れたマンガを紹介するイベントが市内の各所で催されています。
本祭典が45回目を迎えた2018年、手塚治虫の生誕90周年を記念して、「手塚治虫」をテーマとした特別展覧会「OSAMU TEZUKA MANGA NO KAMISAMA」が開催されました。本展は、フランスの多くの皆さんにご覧いただき、好評のうちに幕を閉じました。そして、宝塚市立手塚治虫記念館の第75回・第76回企画展ではその凱旋展を前後編に分けて開催いたします。
後編にあたる第76回企画展では、アニメーションへの本格的な挑戦が始まった1962年から、1989年にかけての作品を紹介するとともに、手塚のマンガに見られる特徴的な表現の数々をご覧頂きます。
本展ではフランスのキュレーターが企画した内容を、極力そのまま皆様にご覧いただきたいと思います。海外のキュレーターの独自の視点を介して、新たな手塚治虫の魅力を発見することができる企画展となっています。ぜひ、お楽しみください。
【会 期】:2019/04/01-06/24
【開館時間】:09:30-17:00(入館は16:30まで)
【休 館 日】:毎週水曜日(ただし4/3、5/1の水曜日は開館)
【入 館 料】:大人700円(560円)、中高生300円(240円)、小学生100円(80円)
フランス・アングレーム市で開催された「OSAMU TEZUKA MANGA NO KAMISAMA」は手塚治虫の創作を5章構成で表していました。今回の第76回企画展では、第4章から第5章までを展示いたします。
第4章 漫画映画の革命 虫プロダクションの冒険:1962年-1973年
ウォルト・ディズニーの大ファンであった手塚は、自ら出資して独自のアニメスタジオ・虫プロダクションを創設します。その頃、日本の家庭にテレビが普及し始めていたため、人気マンガ『鉄腕アトム』のテレビアニメをお茶の間で提供出来ないかとの案が浮上します。それは大きな挑戦を意味しました。アメリカのテレビアニメで使用されていた「リミテッド・アニメーション」という手法を取り入れ、スタジオの組織とシステムが根本から見直されました。そして完成したアニメ『鉄腕アトム』は瞬く間に人気を博し、予想をはるかに超える結果となりました。しかしながら、虫プロダクションの犯した大きな過ちは、制作コストを過小に計算し、低すぎる金額でテレビ局に売ったことでした。予算交渉においてこの金額が基準となったため、長きに渡り非常に低い予算でアニメを制作することが余儀なくされ虫プロダクションは経営難の末、1973年ついに倒産し、手塚は巨額の借金を抱えました。(当時の1億5千万円。現在の300万ユーロに相当。)
<主な展示作品>
・鉄腕アトム
・ジャングル大帝
・千夜一夜物語等
第5章 歴史との出会い 次世代に遺す遺産:1972年-1989年
手塚はSFに加え、早くから歴史をテーマにした作品を手がけていましたが、歴史的出来事は長い間ストーリーの背景としてのみ使われていました。意識的に史実とは距離を置いて、人類に対する主観的な視点と自らの意見を延べる表現方法を取っていました。1970年代以降は、歴史そのものを語ることに集中するようになり、また歴史的背景そのものをストーリーの中心に置くようになります。それからの手塚は強靭なヒーローを描くことはなく、主人公達はごく普通の人間で、偶然にも、そして不幸にも、歴史の歩みに翻弄されてしまった人々という描き方をします。晩年、多数の人気マンガが登場し、マンガのスタイルが大きく揺れ動くこの時代、手塚は作品のテーマを掘り下げる作業に全力を尽くします。
<主な展示作品>
・アドルフに告ぐ
等