ポールダンスを踊るロボットが登場するなど、ロボティクスの進化は日々目まぐるしいわけですが、なんでも作れるロボットはいかがですか。
今回のオススメデゴンス! では、そんな夢のような少年ロボットが活躍する『ロップくん』をご紹介します。
幼年向けと思って侮るなかれ、そこは手塚マンガ、ちゃんと大人も考えさせられる要素も含まれています。
アトムや『0(ゼロ)マン』のリッキーとはまた違う、ロップくんのキュートなビジュアルにも是非注目してみてください!
『ロップくん』は、「小学一年生」から「小学三年生」に昭和38(1963)年10月号から、昭和40(1965)年9月号まで連載された作品です。
(以下手塚治虫 講談社刊手塚治虫漫画全集『ロップくん』2巻 あとがきより)
昭和三十八年にはじまったアニメの「鉄腕アトム」は、いろいろなおまけの産物をのこしましたが、この「ロップくん」や「ボンゴ」「ガムガムパンチ」などの一連の幼年漫画も、アトムブームにのって生まれた作品です。「鉄人28号」や「魔神ガロン」のように、ロボットといえば巨大な力で破壊専門にあばれまわるというイメージが強く、アトムもその例にもれませんでした。「ロップくん」は、それを逆手にとって、なんでもものをつくりだしてしまう、というところがみそです。「ガムガムパンチ」とならんで、のちの「ドラえもん」などに通じるアイディアだったと思います。
キャラクターはどうということもないのですが、ずっとあとで台湾で出版された海賊版(台湾や韓国では著作権法という法律がないために、日本の漫画が無断でそのまま印刷、発売され、台湾の漫画本としてまかり通っている)の「アトム」が、ひとしきり売りだされたあと、この「ロップくん」までが、おなじアトムの名まえで出版されているのを知って、苦笑いしたことがあります。
「何でも願いをかなえてあげる」――
一度でいいからそんな気前のいいことを言ってくれる魔法使いか神様が目の前に現れたらいいなあ、と思った事がある人、「ロップくん」をオススメします。
ロップくんは、外見はかわいらしい少年型ですが、何でも作ることができるすごいロボットです。海に沈んでいるところを六ぺいくんに助けられ、以来六ぺいくんの頼りになる友達となります。「何でも作れる」特技のせいで悪人に狙われて、事件にまき込まれることもしばしばです。悪人達にとって、何でもできるロップくんは、まさに「金の卵」。あの手この手でロップくんを捕まえて言うことをきかせようとします。ロップくんは、ある時はそんな悪人達と戦ったり、またある時は六ぺいくんや友だちのお願いをかなえてあげたり、大活躍をします。
ロップくんの作るものは、ケーキやおうちといった簡単なものから、恐竜ロボットや雪を溶かすロボットといった難しいものまでさまざまです。宿題をやってくれる手首、なんてものもあって、思わずほしくなっちゃいますが、ロップくんの作った機械はどれもちゃんと自分の意思を持っているからか、必ず暴走してたいへんなことになるので、取り扱いには十分気をつけなければなりません。
こんな素晴らしいロップくんですが、実は大昔に地球にやって来た宇宙人の子供に飽きられ、捨てられたというあのアトムにも似た暗い(?)過去があるのですが、その割にアッケラカンとしているので、アトムは可哀想だからちょっと気軽に読めないや、という人も楽しく読めるロボットまんがです。
最後に、蛇足ながら。
ぼくは/私は手塚作品にはちょっとウルサイよ、という方へ。『鉄腕アトム』の紹介にも、別の手塚キャラが顔を出すしかけを紹介しましたが、「ロップくん」のラストストーリーには、ある別の手塚作品のキャラクターが登場します。あの作品とこんな風につながっているんだ、なんて想像しながら読むと楽しい、ちょっとしたしかけですが、注意して読んでみてください。
第14話「どろぼうオリンピック」から、手塚キャラが勢ぞろいのこちらの一コマをピックアップ! あなたはどの作品のどのキャラクターか全員わかりますか?!
まさに夢のオリンピック開催となるわけですが、誰が優勝するのか、一番泳ぐのが得意なキャラは……などいろいろ妄想しながら読んでみると、より楽しいかも知れません!
ロップくん:
先程から、ロップくんはなんでも作れてスゴイ! とにかく、一家にひとり欲しい! ひたすら、かわいい! としか騒いでいませんが(※一部のスタッフのみ)、実は、作れないものもあるのです……!
こちらのコマでネタバレしていますが、ズバリ、「お金」です。
ロップくんもきっと、作ろうと思えば作れるのです。ただ、あくまでも“お金だけはかってにつくれない”んです。
思えば、ロップくんが作るものは、困っている人の手助けをする道具ばかり。道具を作るときもイチから材料をあつめ、宿題だけは自分でやらなきゃいけないと六ぺいくんに諭すロップくんです。お金だけは自分の力で生み出さなきゃ手に入れられない、というメッセージにも聞こえます。
ロップくんのなかにある、本来、人間が持つべき人間らしさを強く感じるセリフです。