手塚治虫記念館では、「'80sガーリーコレクション ~“カワイイ”は
今回は、展示にグッズの貸し出し・監修でご協力頂いたゆかしなもんさんと、手塚プロユニコチームに展示の裏話や当時流行したキャラクターたちの魅力についてお聞きしました。
ゆかしなもん
「昭和的ガーリー文化研究所」・所長。
主に'70~80年代の昭和ファンシーグッズや、映画、音楽、マンガ、アイドル、不良文化など当時のカルチャーを懐古&発信☆
またの名を「80年代ファンシー界の落武者」。
手塚プロダクション
ユニコチーム 鈴木&東
手塚治虫の少女漫画作品『ユニコ』をリブートすべく地道に活動している手塚プロ女子チーム。
ツイッターでは、『ユニコ』をはじめ手塚治虫のガーリーファンシー情報を発信しています!
(公式Twitter)手塚治虫・ユニコ倶楽部:@UNICOclub
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まずは、今回の企画展のきっかけについて教えてください。
連載開始40周年を皮切りに『ユニコ』の魅力を現代の20代・30代の女性に伝えていくための活動をしてきた中で、展覧会をしたいという夢がずっとあったんです。しかし、現状では『ユニコ』だけでやるというのは集客的に難しいということもあり、なかなか実行できずにいました。
そんな時に、ゆかしなもんさんの書籍『'80sガーリーデザインコレクション』(グラフィック社・刊)が発売されて、『ユニコ』のグッズ紹介の掲載許諾依頼がきたんですよね。
出版社さん経由で、この本にユニコグッズを載せたい!というお願いをしました。
発売後いただいた本を開いたら、カワイイものを見てテンションが上がる感じや楽しい気持や懐かしい気持ちといった、少女時代に経験した感覚を一気に思い出したんです。
今見てもこういう気持ちにさせられるんだというその感覚がヒントになり、この'80sガーリーという括りでなら、『ユニコ』も巻き込んで上手く展示として見せられるのではないかと思ったんです。
2017年3月のこの本の発売から、1ヶ月ちょっとで企画展への協力をお願いしたんです。
本の許諾依頼が来たときは、あのゆかしなもんさんだ! とビックリしました。
実はもともと、ゆかしなもんさんの
光栄です。
そもそも、ゆかしなもんさんと『ユニコ』の出会いはいつだったんですか?
幼い頃、親に映画に連れてってもらうことが多かったんですよ。映画館の中に放り込まれて、その隙に両親は買い物をして、上映が終わった頃に迎えに来るみたいな。
託児所っぽいね(笑)。
そこで『くるみ割り人形』とかサンリオ映画を中心に、アニメ映画をたくさん見ていたんです。
『ユニコ』もその映画館で見て、あまりの可愛さに一目ぼれ、そこからユニコ命になったんです。
『ユニコ』もサンリオ映画ですもんね。
ミュージカルみたいに歌も入っていて、そういうものが少女時代のゆかしなもんにはたまらない世界だったんですよね。
たまたま友達のおじさんが手塚プロのアニメーターさんだったらしく、その方に頼んで『ユニコ』を描いてもらった色紙も持っています。
それは貴重ですね!!
色紙は
それからというもの、どうしてもグッズが欲しくて親に頼んで『ユニコ』の封筒を買ってもらい、ずっと宝物にしていました。引っ越しをしてもなくさず奇跡的にずっと手元にあって、それも今回展示させていただいています。
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たくさんのファンシーグッズが楽しめる展示ということですが、ズバリ、見どころはどこでしょうか?
今回は、80年代部屋というものをご用意しています。
聞くだけでときめきますね。
この世界に入り込んでもらうための掴みとして、女の子のお部屋を模したスペースを見せてみたらどうかというアイディアを考えたんです。
東と2人でネットオークションに張り付いて、80年代を過ごしたの女の子の部屋にありそうなものをかき集めてね。カセットテープのインデックスだったり、当時人気があった雑誌「MyBirthday」を置いたり。
最初のツカミで中途半端な感じにしちゃったら、そのあとに見るゆかしなもんさんのコレクションが引き立たないと思ったので、ここは気合を入れました。このクッションなんか、東が良い感じの生地を買ってきて作ったやつ(笑)。
手作り!? でも、バッチリ80年代感を押さえてますよ。
部屋が出来上がった後、ゆかしなもんさんに確認してもらったのですが、さすが昭和的ガーリー文化研究所の所長だな~という目の付け所で。たとえば、軽井沢とか観光地のお土産でファンシーなきつねのキャラがいましたよね。あれの木製の小箱とか、こういうものをもっと目立つように前に出した方がリアルだよってアドバイスをいただいたんですよね。
女の子って、どんどん出して並べるんですよね。お気に入りのアクセサリーとかグッズとか、とにかくカワイイものに囲まれたいし、みんなに見せたいっていう意識が強かったんじゃないかなと思うんです。少なくとも、私の場合は(笑)。好きなものが多すぎて、とっ散らかってる感じ。
そのアドバイスがあって、よりリアルさが出ました。いい意味でごちゃごちゃした空間に出来上がっています。
しかも、80年代のファンシーグッズだけではなくてちょっとダサい刺繍とか、お洋服を着たキューピーちゃんとか、ちょっと古めかしいものもちらほらあるんですよね。
これはお母さんやおばあちゃんから小さい頃にもらったという裏設定があって(笑)。そういうことありませんでした? 皆さん。
あるあるですよ。それありきの80年代ファンシーですから。こういう70年代っぽい手芸物は「オカンアート」(*註)と呼ばれてるんですが、そういう物もありつつ、ナウいグッズも買って……というのがリアルですよね。そこも見どころだと思います。
そのほかに、80年代を代表する各キャラクターにスポットを当てた展示がされています。
*註 オカンアート…
母親(おかん)が暇を利用して創作する手芸などの作品の総称。
こちらはクールなデザインで男女問わず大流行した、「バイキンクン」! こんな感じでキャラクターごとに分けてグッズを展示し、その他にぬいぐるみや絆創膏などのコレクションを展示しています!
私は70年代ファンシーから入っている世代なので、やっぱりサンリオの「リトルツインスターズ」とか王道のファンタジー系に馴染みがあり、実は「バイキンクン」とかの流れに対してはちょっとアンチ気味だったんです。80年に入ってからの太くて黒い強弱のある線とビビットな色使いはちょっと遠巻きにしていました。
え~、そうなんですか!? たしかに、あのキャラはいいけど、あのキャラは微妙~っていう派閥とか、友達の中で私は〇〇担当みたいなのはありました。
私は、「タキシードサム」が推しキャラですね。
本当にたくさんのキャラクターがいた時代だったので、こんなにキャラクターを知っているっていうことの一つのステータスだったよね。あの頃すきだったキャラを懐かしむも良し、若い方はここで知らないキャラクターに出会えるのも展示の楽しみ方ですね。
「金太くん」とか、日本っぽいキャラクターはそれ以前もちらほらいたのですが、和風のキャラクターが躍進したのは83年に登場した「うちのタマ知りませんか?」だったと考えています。
キティちゃんや原田治先生とか、海外のテイストを取り入れたキャラクターが多かった中で、日本テイストが来た!っていう驚きがありました。
まず、タイトルが「うちのタマ知りませんか?」って疑問形なんですよ。知らないよ! っていう(笑)。
3丁目の「おかもとたけし」君という男の子が、いなくなった飼い猫のタマを探してますってコンセプトなんです。その子が描いた訪ね猫のポスターがメインビジュアルになっていて、当時はそれがかなり斬新だったんです。
ストーリー性を前面に押し出しているんですよね。
ファンシーグッズあるあるのヘンなキャラ名とかキャッチコピーや物語の設定なんかも、専門のコピーライターに考えてもらうのではなく、デザイナーさん達が自分で自由に考えていて、そこにコンセプトを込めていたんです。
キャラ名とかキャッチコピーが日本語ローマ字で書かれたグッズも多かったよね。
80年代あるあるですね。変なこと書いてあっても、英語だから一見カッコイイ! みたいな、ちょっと背伸びをしたい女の子はみんな食いつく要素でした。
ファンシーグッズは、いろいろなグッズが作られていましたけど、メルヘン、アメリカン、和モノ、キャラもの、ノンキャラもの……とその時々でムーブメントがあっておもしろいですね。
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カワイイだけではない、奥深いカルチャーなんですね!
これだけのコレクションはどうやって集めているんですか?
一部は自分が少女時代から大切にしているもので、あとは大人になってから集めたもの、ネットオークションや蚤の市みたいなところに行って、そこでゲットしています。
あとはブログを見た友達が、自分のところで保管もできないし、捨てることもできないから、お願い! みたいな感じで預けてくれたり。ゆかしなさんならこの子たちを生かしてくれるだろうって、段ボールにたくさん詰めて寄付してくれる読者の方もいましたね。
展示にあたり、ゆかしなもんさんからファンシーグッズをお借りして気づいたのですが、まったく同じグッズが何個もあったりしますよね。
そうなんですよ。偶然同じものが集まったっていうのもありますけど、すでに手元にあるものと同じものでも、より状態が良いものを見つけると自分でも買い足しちゃうんですよ。
見かけたら買う、みたいな?
昔はそうでしたけど、最近はさすがに欲を押さえてます。ですが、これはなにがなんでも守らねば!! という『お宝』との出会いがあれば、買っちゃいますね(お財布と相談して)
コレクターの鑑ですよ!
今日は特別座談会ということで、今回の展示には出せなかった『ユニコ』グッズを持ってきました!!
えー! 見せてください!!
サンリオさんから発売した、『ユニコ』パチットと、森永のお菓子のオマケに付いていたチャオのマスコットと、アートブックです。
パチット!!懐かしい! 『ユニコ』バーションなんであったんだ!
これで布団カバーを止めたり、タオルの滑り止めにしてた~!
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わかる方にはわかるトークをお送りしております。
これはネットオークションに出ていたのを見つけて、すぐにゲットしました。このサンリオさんのシャボン玉で遊ぶユニコの絵がモーレツにカワイイんですよね!!
このチャオも細かいところまで良く出来てる!
ファンシーグッズはほとんど日本製なので、とにかく作りが良いんですよね~! だから30年経っても劣化が少なく、色あせない。
当時のファンシーグッズのクリエイターさんにお話を聞く機会があったのですが、当時はなんでも自由に作れた時代で、特別なインクでの印刷をバンバン使ったりと色や造形を徹底的にこだわっていたと仰っていました。
ファンシーグッズを見ていると、時間をかけて、お金をかけて、エネルギーをかけて、作り手が楽しく作っているという熱意がビシバシ伝わってくるんです。そこに、時間を超えていつまでも愛される理由があると思います。
まさに、“カワイイ”は
本やブログで見たりするのとは実物は全然違うので、当時のままの色・カタチ・大きさとか、レトロな風合いも含めてぜひ見ていただきたいですね。街や記念館の雰囲気とも相まって素晴らしい空間になっているので、ぜひとも足を運んでいただいて、80年代にトリップしてほしいと思います!
来年1月20日には、トークショーも決定しました。
株式会社サンリオの社員、いちご新聞の編集長などを歴任された 高桑秀樹さんをお招きしてのトークショーです。80'sの「カワイイ」のヒミツを探るというテーマで、ここでしか聞けないトークをお届けします。
スペースの問題で陳列できなかったグッズもあるし、もっと大きな会場でパート2をやりたいね!
そして、めざせ巡回!!
ガーリー文化の伝道師として、それはぜひとも実現したいです!!
日時
2017年10月27日~2018年2月20日
時間
9時30分~17時(入館は16時30分まで)
施設
手塚治虫記念館 2階企画展示室
休館日:毎週水曜日(ただし、1月3日は開館)
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日時
2018年1月20日(土)
13時30分~14時30分
施設
宝塚市立手塚治虫記念館 1F アトムビジョン(映像ホール)
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