新年おけましておめでとうございます!
今回のオススメデゴンスは、戌年の2018年
ほのぼの動物漫画でしょ~? と一瞬でも思ったそこのアナタに申したい、この物語は、かわいいワンコあり、SF要素あり、熱いバトルが繰り広げられるアクションもあり、涙あり、兄弟愛あり、人間と犬の友情あり、擬人化あり……こんなにたくさんの要素を一気に楽しめる作品なのです!
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『フライングベン』3巻あとがき より)
「フライングベン」は、ヒットした「ビッグX」のあとをついで、二年間にわたって連載された動物ものです。
のっていた時期なので、かいていてたのしかったのです。ぼくは犬が大好きで、どんなにほえつく犬でもニコニコと応対してやりますが、ベンにはぼくの犬への思いがこめてあります。ウルも大好きな性格です。それにくらべてプチは、いくらか通り一ぺんの犬になってしまいました。
「フライングベン」は、テレビ化のために二度パイロット=フィルムをつくりました。一度は虫プロで、お金をうんとかけて一話分つくったのですが、プロデューサーがだらしなくて、ひどいフィルムにできあがってしまいました。あまりのひどさに、ぼくはとちゅうで試写室をでてしまったくらいです。二度めのは、ぼく個人の費用で、あのアニメーターの月岡貞夫さんにつくってもらったものです。しかし、このときはもうアニメの傾向がギャグものにうつってきていたため、これも売れませんでした。しかし、ぼくはいつか一度でもいいから「フライングベン」をテレビアニメとして動かしてみたいのです。
ローマの地下洞「カタコンベ」の中で、野良犬の子犬たちが飲んだ特殊な薬…これが、目にも見えないスピードで地を駆け、空飛ぶ鳥をも落とすジャンプ力や、ライオンをかみ殺すパワーを持った3匹のスーパー犬を生み出した秘密でした。
この3匹のスーパー犬が、シルクロードに隠された財宝の地図を持つ少年・タダシを守って、時には悪の組織と戦い、時にはタダシを奪い合い、お互いに反目して争う…それが「フライングベン」のストーリーです。
この作品の印象を簡潔にあらわすとすれば、ズバリ「スピード感」でしょう。スーパー犬のベン・ウル・プチが、画面せましとコマの空間上を飛び回る姿…手塚治虫の頭の中では、この3匹がアニメーションのように実際に飛び回っていたに違いありません。それがそのまま「のっていた時期」のペンの勢いとあいまって原稿用紙の上に表現され、読者を圧倒するのです。ストーリー展開も、実に少年漫画らしく、波乱万丈そのもの。次々と起こる事件や、登場するキャラクターたちに、飽きるヒマがまったくありません。
それにしても、登場する犬たちの生き生きしていること!手塚治虫が動物ものに取り組んだとき、通常よりも「のって」かくことは有名ですが、手塚治虫のやわらかいタッチで表現された犬たちのたくましさ、しなやかさ、そして可愛さ。
犬好きでない方にもぜひおすすめしたい、「犬が主人公」ものの代表作のひとつです。
一コマどころではなくてすみません!
実はこの『フライングベン』には、ゲストキャラがかなり出演しているんです!
ここではそのほんの一部のコマをご紹介。スターシステムキャラがところどころに顔を出して賑やかさを演出しているのも、“のっていた”という言葉のとおり、先生自身が楽しんで描いていたのを感じとれます。
それぞれ、どこに出てくるのか探してみてください!
ウル「人間のいいなりになって 一生をぼうにふるだけが犬じゃねえってことだよ」
共にタダシに忠誠を誓うも、ベンとウルはその性格の相違から対立してしまいます。
主人に尽くそうとする気持ちを強く持ちながらも、ウルは犬である誇りを最後まで捨てきれず、人間に言われるまま任務をこなそうとするベンに向かってこのセリフを発したのでした。
ウルが危険に晒されている時にすぐさまベンが駆けつけたりと、対立していながらも実は兄弟の絆を忘れていない2匹でしたが、同じ世界に生きることができないと言いながら、ウルはベンに、“さいごのたたかい”を挑むのでした。