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虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

はじめに:

 新年おけましておめでとうございます! 
 今回のオススメデゴンスは、戌年の2018年ワン発目、ワン月号にふさわしい、読後に犬を飼いたくなるマンガ第ワン位(当社比)こと、『フライングベン』をご紹介します!
 ほのぼの動物漫画でしょ~? と一瞬でも思ったそこのアナタに申したい、この物語は、かわいいワンコあり、SF要素あり、熱いバトルが繰り広げられるアクションもあり、涙あり、兄弟愛あり、人間と犬の友情あり、擬人化あり……こんなにたくさんの要素を一気に楽しめる作品なのです!



解説:


(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『フライングベン』3巻あとがき より)

「フライングベン」は、ヒットした「ビッグX」のあとをついで、二年間にわたって連載された動物ものです。
 のっていた時期なので、かいていてたのしかったのです。ぼくは犬が大好きで、どんなにほえつく犬でもニコニコと応対してやりますが、ベンにはぼくの犬への思いがこめてあります。ウルも大好きな性格です。それにくらべてプチは、いくらか通り一ぺんの犬になってしまいました。
「フライングベン」は、テレビ化のために二度パイロット=フィルムをつくりました。一度は虫プロで、お金をうんとかけて一話分つくったのですが、プロデューサーがだらしなくて、ひどいフィルムにできあがってしまいました。あまりのひどさに、ぼくはとちゅうで試写室をでてしまったくらいです。二度めのは、ぼく個人の費用で、あのアニメーターの月岡貞夫さんにつくってもらったものです。しかし、このときはもうアニメの傾向がギャグものにうつってきていたため、これも売れませんでした。しかし、ぼくはいつか一度でもいいから「フライングベン」をテレビアニメとして動かしてみたいのです。



マンガwiki作品紹介:

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読みどころ:

 ローマの地下洞「カタコンベ」の中で、野良犬の子犬たちが飲んだ特殊な薬…これが、目にも見えないスピードで地を駆け、空飛ぶ鳥をも落とすジャンプ力や、ライオンをかみ殺すパワーを持った3匹のスーパー犬を生み出した秘密でした。
 この3匹のスーパー犬が、シルクロードに隠された財宝の地図を持つ少年・タダシを守って、時には悪の組織と戦い、時にはタダシを奪い合い、お互いに反目して争う…それが「フライングベン」のストーリーです。

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

霊水を舐めて強力な力を持ったこの3匹のミュータント犬は、母親を飢餓から救った旅人・矢野徹の息子、矢野正に生涯に尽くすことを誓います。

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

矢野正。山小屋にベンと共に住み、国境越えをする人々の運び屋をしている。



 この作品の印象を簡潔にあらわすとすれば、ズバリ「スピード感」でしょう。スーパー犬のベン・ウル・プチが、画面せましとコマの空間上を飛び回る姿…手塚治虫の頭の中では、この3匹がアニメーションのように実際に飛び回っていたに違いありません。それがそのまま「のっていた時期」のペンの勢いとあいまって原稿用紙の上に表現され、読者を圧倒するのです。ストーリー展開も、実に少年漫画らしく、波乱万丈そのもの。次々と起こる事件や、登場するキャラクターたちに、飽きるヒマがまったくありません。



虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

ベン
スーパー犬兄妹の長男。正義感が強く、三兄妹の母親を救った矢野徹の息子・矢野正に忠誠を誓い相棒となる。

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

ウル
次兄。タダシに忠誠を尽くすも、1000万円が必要なタダシのために手段を選ばす強盗など無法を働き、兄と激しく対立する。

虫ん坊 2017年12月号 オススメデゴンス!:『ダリとの再会』

プチ
末の妹。タダシのために自らをサーカスに売り、花形スターとなるが……。

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

 それにしても、登場する犬たちの生き生きしていること!手塚治虫が動物ものに取り組んだとき、通常よりも「のって」かくことは有名ですが、手塚治虫のやわらかいタッチで表現された犬たちのたくましさ、しなやかさ、そして可愛さ。
 犬好きでない方にもぜひおすすめしたい、「犬が主人公」ものの代表作のひとつです。



注目の一コマ:

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

虫ん坊 2017年8月号 オススメデゴンス!:『火の鳥』復活編


 一コマどころではなくてすみません!
 実はこの『フライングベン』には、ゲストキャラがかなり出演しているんです!
 ここではそのほんの一部のコマをご紹介。スターシステムキャラがところどころに顔を出して賑やかさを演出しているのも、“のっていた”という言葉のとおり、先生自身が楽しんで描いていたのを感じとれます。
 それぞれ、どこに出てくるのか探してみてください!


作中の名セリフ:

虫ん坊 2018年1月号 オススメデゴンス!:『フライングベン』

ウル「人間のいいなりになって 一生をぼうにふるだけが犬じゃねえってことだよ」

 共にタダシに忠誠を誓うも、ベンとウルはその性格の相違から対立してしまいます。
 主人に尽くそうとする気持ちを強く持ちながらも、ウルは犬である誇りを最後まで捨てきれず、人間に言われるまま任務をこなそうとするベンに向かってこのセリフを発したのでした。
 ウルが危険に晒されている時にすぐさまベンが駆けつけたりと、対立していながらも実は兄弟の絆を忘れていない2匹でしたが、同じ世界に生きることができないと言いながら、ウルはベンに、“さいごのたたかい”を挑むのでした。





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