祝『三つ目がとおる《オリジナル版》大全集』刊行!
今月号は『三つ目がとおる』の強化月間とし、オススメデゴンス! でもご紹介しちゃいます。
あなたは「天使の写楽くん」と「悪魔の写楽くん」、どちらが好きですか?
写楽くんが両極端な二面性をあわせ持つところも見どころとなってる本作。
「三つ目族の謎編」では、写楽くんと和登サンのあんなシーンやこんなシーンが楽しめるエピソードが描かれています。
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『三つ目がとおる』13巻あとがき より)
「三つ目という、そもそもの発想のきっかけは何ですか?」
「最初は読み切りだったのです。そして、それが評判がいいということで、次は何回かのシリーズ化。それが半年つづいて、ついに週刊連載になったのです。
だから、一回限りの強烈な印象をつくるために、こういうとっぴなキャラクターにしたわけです。」
「三つ目族というのは、ほんとうにあるんですか?」
「あるはずがないでしょう。三つ目族の先史文明なんて、でたらめですよ。SF的といいますか、いろんなもっともらしい資料をかき集めて、そこから空想したのですよ。
だいたいインドとか東南アジアなどに、ひたいにたてに割れた第三の目を持った偶像が多いでしょう。あれから発想したんです。それをいつもばんこうこうではってかくしているのは、マスクにアクセントをつけるためです。
写楽の顔かたちは、『バッグズ=バニイ』という、うさぎの漫画シリーズにわき役で登場する、ほら、エルマーというちびで舌たらずの教授がいるでしょう、あれがヒントです。もっとも、この顔にきまるまでには、ずいぶんいろんな顔をかいてみましたがね。」
(後略)
この5つの章からなる、1つの大きなエピソード「三つ目族の謎編」は、『三つ目がとおる』の世界観を理解する上で、非常に重要な一篇です。
はたして三つ目族とはどのような人種であったのかが、その遺産(遺書)によって遂に明らかになるのですが、このエピソード自体がその遺産を手に入れるための推理と冒険のストーリーになっています。
ある夜、写楽の育ての親・犬持博士のもとへ送られてきた巨大な青銅の玉。これに刻まれた文字こそ、三つ目族の遺産を見つけるための手がかりであり、写楽にその謎を解かせるため、三つ目族の血を引く"ゴブリン男爵"が送ったものだったのです。そして、狙い通り写楽がこの玉から遺産のありかを読みとると、次にはその遺産をどちらが先に手に入れるか、写楽とゴブリンの争いが始まるのですが…この先は読んでからのお楽しみにしておきましょう。
なお、ラストで、三つ目族のメッセージとして、現代の文明社会への警告が盛り込まれていますが、これは『三つ目がとおる』という作品の大きなテーマですので、ぜひじっくりとかみ締めて読んでいただきたいと思います。
今回ご紹介したエピソードは、連載初期の作品ですので、これから『三つ目がとおる』を読み始めるという方には特におすすめです。
このお話にしか出てこない、ミステリアスで不遇な少年の登場シーンをご紹介せずにはいられませんでした!!
写楽とおなじ三つ目族?! おもむろに怪しいオフダをはった少年の名前は公卿(くぎょう)。名前も格好良いですね。先祖代々ひたいにオフダをはっているふうがわりな一家の最後の生き残り、という境遇もどことなく写楽に似ています。しかも、短命の家系で家に伝わる古文書の場所を守る使命があり、笛の名手。中二ゴコロがやたら刺激されます。
敵と勘違いした和登サンと和解後、共に遺産を追う冒険にでますが……。第4章の最後はきっと、和登サンと同じ気持ちにならずにはいられないでしょう。
和登サン:
タイトル回収ならぬ名前の由来回収、キターーーー!! と思ったのはわたしだけ?! 写楽保介の名前は探偵シャーロック・ホームズ、和登千代子の名前は相棒のジョン・H・ワトスンからそれぞれ名付けられたものなのです。
バンソウコを貼られた写楽くんにはなにかと世話焼きな和登サン。天真爛漫な彼に母性本能をくすぐられるのか、コンビというよりはまるで親子のよう。
一方、三つ目の写楽くんの前では流石の和登サンもタジタジ?!
バンソウコを剥がすとまるで別人、強気で強引な彼に迫られ、反抗したい気持ちとは裏腹にどんどん惹かれていきます。そんなふたりの関係性も魅力のひとつです。