3月です。3月といえば、卒業式、ホワイトデー、ひなまつり、3月のライオン、3分クッキングetc、諸々ありますが、「3」のつく手塚マンガの代表作といえば……、ずばり『三つ目がとおる』でしょう!
今回のオススメデゴンス! では、京都を舞台に“入れ替わってる?!”展開あり、三つ目人同士のバトルあり、古代文明の謎も絡みあうなど盛りだくさんの要素が詰め込まれているゴダル編をご紹介!
『三つ目がとおる』 ゴダル編は、「少年マガジン」1977年1月30日+2月6日合併号から、同誌4月24日号までに掲載されました。
見かけはアトムなどと並べても遜色ない小さくって丸っこい、可愛らしいキャラクターなのに、中身はブラック・ジャックのようにニヒルでもあり、天才でもあり、そのわりにやはり少年ですから今ひとつ三枚目でもある多面性を持った『三つ目がとおる』の主人公、写楽クンは、実に複雑で、深遠な魅力をも持っていますが、もっと無邪気に漫画を楽しもうとすれば、まずはものすごい発明品をこともなげに組み立てたり、古代遺跡に彫られた奇妙な文字をすらすらと読み解いたりするカッコよさに目を奪われます。
事件のキーとなるのは、魂と肉体を分離させることができるという「ホア・カバリ・キルマ」の秘薬。これはゴダルにしか精製できず、彼が魂のみで生き延びていたのもこの薬の作用。本体から追い出され、野良猫に入ってしまった和登さんの魂を元に戻すには、もう一度この薬をゴダルに作らせなければならないのですが、頼みの写楽は都合がいい、なんて言ってあざ笑っているばかりだし、ここぞとばかり日本征服なんていう野望を遂行しようとするし、これは和登サンにとっては危機一髪、いったいちゃんと元の可愛い女の子に戻れるのか、ゴダルと写楽の野望はどうなるのか、と終始高いテンションで一気に読み進める作品となっています。
いつもと違う見所としては、乗っ取られた和登さんが、なにやら悪女っぽく、警察に脅迫電話をかけたり、奇妙な秘薬を作ったり、スパイめいた暗躍をするところでしょう。いつも勇ましくてボーイッシュなぶん、そんな女スパイのような活躍もなかなか似合っていて、いつもは絶対に見られない勇姿(?)を見せてくれます。
もはや名物?! ひとつひとつ情熱を持ってほぼひとりで描いていたというモブシーンが『三つ目がとおる』にも登場。こちらのコマでは手塚の当時の心境がそのまま表現されています。
ローマ字表記の看板には、
「KOU YU EMO MIN NA TEZUKA GA KAK UNODA(こうゆう絵も手塚が描くのだ)」
と書いてあったり、一見中国語にも見えるフキダシ内の漢字は、
「何泥固之伍慮 功有加機混陀 場面 須狗内之可?(なんでこのごろ こうゆうかきこんだ ばめん すくないのか?)」
「周汗氏指名 期理 魔偵 苦礼 南緯 加久比磨 南緯(しゅうかんししめきりまってくれない かくひまない)」
とあり、愚痴のような言葉をまるで暗号のように使用しています。手塚にとって、物語を描く途中の、ちょっとした息抜きだったのかも知れません。
★手塚治虫のモブシーン関しては、コラムでも詳しく取り上げているので、是非ご一読下さい!
虫ん坊2014年7月 手塚マンガあの日あの時 第35回:人、人、人がいっぱい! 手塚マンガ・モブシーンの秘密!!
写楽のように「こんちくしょう」とまではいかなくとも、さかさに読んだときのとんでもないボケにすかさずツッコミを入れたくなるセリフです。熱にうなされながらも三つ目人としての叡知がそう気付かせたのでしょうか。イタズラ好きという手塚治虫の一面がよく表れています。