今月のオススメデゴンスでは『ザ・クレーター』より「紫のベムたち」をご紹介いたします。
節分でおなじみの「鬼」が登場するお話。隆一は弟のカン太郎に、「桃太郎」を話して聞かせてやりますが、カン太郎は突然ふらふらとどこかに出て行ってしまい…
のどかな昔の日本の田舎の風景から突如展開するびっくりするような光景! 短いお話の中での意外な展開が鮮やかな作品です!
「紫のベムたち」は『ザ・クレーター』シリーズ14作目。初出は『週刊少年チャンピオン』1970年2月18日号です。
おなじみ、『ザ・クレーター』のレギュラー・スター、オクチン大活躍の一篇です。
電気も通っていない田舎の村に住むオクチンには、知的障害の弟・カン太郎がいました。ある日、帰りの遅いカン太郎を探して山奥に入ったオクチンは、紫色の宇宙人たち(ベム)を目撃します。宇宙人たちは、毎日カン太郎を呼び出しては機械の力で知能を上げ、地球の情報を聞き出していたのです。このままではやがて地球が攻撃される、と思ったオクチンは、ある作戦による反撃を思いつきます。この「敵の力を逆に利用する」作戦がなかなか痛快なのですが、それについては読者の楽しみのために黙っておきましょう。
「紫のベムたち」は、「三人の侵略者」と同じく、知能の高い宇宙人たちがちょっとした勘違いで大失敗してしまうのが何ともおかしく、笑いを誘います。特に、大真面目な顔で収集している情報が、侵略に全く役に立たない「昔話」というのも、しまらない話です。
地球存亡をかけた大いなる危機に、たった1人の人間が向き合う…というのは、SF物にはよくあるプロットの一つですが、ベムという非日常をのどかな田舎の風景に放り込んだ工夫は、実にユニークかつ効果的なコントラストを生んでいるといえるでしょう。