秋田書店が発行する少年向け漫画雑誌『週刊少年チャンピオン』に、『ブラック・ジャック』第1話が掲載されてから今年でなんと40周年! 『週刊少年チャンピオン』を発行する秋田書店では、会社全体を上げてこのアニバーサリーイヤーをお祝いする企画を実施しています!
連載当時は少年向けの作品として連載されたB・Jですが、女性のファンもいっぱいいる! B・J先生に憧れてる乙女に愛の手を……! ということで、少女向け漫画雑誌『月刊プリンセス』でもアニバーサリーをお祝い企画が始まりました。
4月号に掲載された紗久楽さわさんによるコミックレポート“宝塚歌劇団雪組『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』上映直前レポート!!”につづいて、いよいよ第2弾“ピノコトリビュート アッチョンブリケ!”が始まります! 今月の虫ん坊では、担当編集・山本侑里さんにお話を伺いました!
●『月刊プリンセス』について
秋田書店発行の、中高生女子向けの少女漫画雑誌。1974年から続いている秋田書店の看板少女雑誌です!毎月6日発売、特別定価540円(税込)。姉妹誌に、『プチプリンセス』。隔月16日発売。
URL:http://www.akitashoten.co.jp/magazine/princess
——まずは、『ピノコトリビュート アッチョンブリケ!』のコンセプトについて教えて下さい。
山本侑里さん(以下、山本):
弊社では、2004年に同じく『ブラック・ジャック』のトリビュート企画を実施していました。その時は、『ブラック・ジャックALIVE』というシリーズで、『ヤングチャンピオン』を中心に永井豪先生や青池保子先生など、豪華なメンバーが参加し、さまざまな『ブラック・ジャック』のリメイク作品が描かれました。
その他も単発でも山本賢治先生や吉富昭仁先生によるリメイク版もありましたし、近年では『ブラック・ジャック〜青き未来〜』や『ヤング ブラック・ジャック』などの作品がありますよね。
でも、これらは少年誌・青年誌的な作品が主で、『週刊少年チャンピオン』の読者層もしくはそれより年上層向けの作品です。当然内容もそのターゲットに合わせたものです。
今回は、初の少女誌でのトリビュート企画、ということで、タイトルにもあるとおり、ピノコをフィーチャーしました! もともとピノコって、 “女子力”が高いところがあると思うんですよね。性格やしぐさなどももちろん、あの髪型とリボンとか、ひらひらのワンピースとか……。少女誌ではそういうところにフォーカスを当てて、『ブラック・ジャック』を紹介したいな、と思っています。
例えば、『ハクション大魔王』のサブキャラのアクビちゃんなども女の子人気が高いですが、もともとはあの子もサブキャラじゃないですか。アクビちゃんを好きな女の子達の中には、『ハクション大魔王』を知らない子もいますが、それでもキャラクターのデザインの可愛さだけで受け入れられています。『ブラック・ジャック』の魅力って、物語の素晴らしさが第一だと思うんですけど、それだけじゃなくて、ただ、「ピノコ可愛い!」で入ってくるファンがもっといてもいいんじゃないか、と前から思っていて。
——ブラック・ジャックにも、女性ファンは多いですよね! ピノコには自分が感情移入しちゃう人も多いみたいです。
山本:
山本:そうなんですよ! ブラック・ジャック先生のかっこ良さも充分、女の子にもアピールすると思います!
——第1弾は種村有菜先生と紗久楽さわ先生が漫画を描かれるそうですね。
山本:
種村先生はいま『マーガレット』さんで連載を持たれていて、大変旬な作家さんですが、この企画への参加についてお声がけしたところ、ご快諾いただいて驚いています。種村先生は昨年2月9日の手塚治虫先生の命日に、Twitterで手塚るみ子さんのお声がけでたくさんのマンガ家さんが参加された手塚作品のイラストを描く“お祭り”にも参加されていて、そこでブラック・ジャックとピノコを描かれていて、ファンでいらっしゃることを知り、交渉させていただきました。
Twitterで拝見したイラストは種村先生の絵柄、という感じだったので、その方向で予想していたのですが、上がってきた原稿はもっと手塚先生の絵柄に寄った絵になっていて。種村先生の普段のタッチとは違った、手塚先生風の絵柄が見られる、というのはなかなか無いですよね。種村先生も、「トリビュートということなのでがんばりました」とおっしゃってくださって、思い入れたっぷりの素敵な作品になっています! お話もラストほろりとするようなあったかいお話です。
紗久楽さわ先生は3月号の宝塚歌劇団への取材漫画『宝塚歌劇団雪組「ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌」上映直前レポート!!』をお描きいただきました。紗久楽先生はすごくお芝居全般がお好きで、宝塚歌劇団の「ブラック・ジャック」も大変楽しみにしていらっしゃいました。『プリンセスGOLD』に畠中恵先生の『まんまこと』を原作に連載をいただいていますが、以前から大変な手塚ファンだ、ということを伺っていました。
紗久楽先生とは宝塚歌劇団の舞台もご一緒したのですが、未涼亜希さん演じるブラック・ジャックを見ながら、「やっぱり手塚先生のキャラクターデザインってカンペキですよね……」としみじみおっしゃっていました(笑)。どんなに遠景でも、絵柄が変わっても一目見て分かるキャラクターデザインってなかなか難しいんですよね。
——3月号のレポート漫画も大変楽しく読ませて頂きました!
山本:
紗久楽先生の作品では、色々な手塚治虫のキャラクターがゲストとして登場する、にぎやかなものになりました。原作の『ブラック・ジャック』でも、手塚先生の「スター・システム」が遺憾なく発揮されていて、登場人物や患者にサファイアやどろろがいる……、ということが行われていましたよね。その「スター・システム」に着目されるところ、手塚ファンかつお芝居好きの紗久楽先生らしい切り口ですよね。
——宇仁田ゆみ先生と山中ヒコ先生はイラストでのご参加なんですね。
山本:
とても愛あふれるイラスト、またコメントを頂いています。イラストではご自身でお持ちのキャラクターと、ピノコのショットで、というふうにお願いしています。お忙しい先生でも、イラスト1点でもご参加いただければ、と思って考えた企画だったのですが、スケジュールの問題以外にも、「恐れ多くて漫画は難しいけど、イラストでなら……」という先生もいらっしゃったりして……。手塚治虫先生が漫画界でリスペクトされていることはよく存じてはいましたが、改めて驚きましたね。
——『ピノコトリビュート』の今後の予定を教えて下さい。
山本:
5月号から始まって、今年の12月号までの8ヶ月、毎月『月刊プリンセス』にマンガやイラストで掲載していきます! 参加される予定の作家さんはマンガとイラストを合わせて約36名! 皆さん旬の作家さんで、秋田書店おなじみの作家さんから、中には「この方が『プリンセス』に!?」という方まで、いろいろな作風の先生方の『ブラック・ジャック』が一堂に介します。
——ちょっとだけ、どんな方がご参加予定か、教えていただけますか……?
山本:
うーん、そうですね……。まだまだ秘密にしておきたいところもありますが、例えば星野リリィ先生や西炯子先生、秋田書店の連載陣からは水沢悦子先生やアサダニッキ先生など、「この先生でB・Jを見てみたい!」の期待にお答えできる執筆陣です! また、少女誌でまさかこの方が!? というところでは田中圭一先生にもお願いをしています。
——いろいろな先生の描かれる『ブラック・ジャック』を想像するだけで楽しそうですね! 参加される36名の作家さんは、どのように選ばれたのでしょうか?
山本:
作家さんを選んだり、交渉をしたりするのは、確かに楽しいのですが、大変でもありました。『月刊プリンセス』編集部内での会議で意見を聞いたり、社内でも広くリサーチしました。友達にも意見をもらったり……。スタッフや同僚が、たまたま読んでいたマンガで手塚先生をリスペクトするネタを見つけて、「声を掛けてみては?」と教えてくれたりもしました。
そんな中で、先ほどお話した手塚るみ子さんのTwitter企画はありがたかったですね。大勢のマンガ家の先生方が自発的に絵を描かれていらっしゃったので、あちらの企画に参加されている方なら絶対に手塚先生のファンだろう、と。あちらでイラストを拝見してお声がけさせていただいた先生もたくさんいらっしゃいます。
また、そうして一生懸命探していると、不思議なことに、ひょんな御縁も転がりこんで来るんですよね。
弊社の編集者が飲み屋さんで知り合ったマンガ家の先生が手塚ファンと分かって、「そういえば、今手塚先生のトリビュートマンガを描く人を探してるんだって?」とおっしゃっていただいたり。『こっちむいて!みい子』を小学館の『ちゃお』さんで連載されているおのえりこ先生は、じつはそうしてご参加いただいたんです。 競合の他誌で強力な連載を持たれている作家の方の場合、お声がけは基本的に「あたってくだけろ!」なのですが、「手塚先生の『ブラック・ジャック』なら、ぜひ」というふうに受け入れていただくことが多くて、その点は本当に助かりました。
——裏話のようなエピソードはなにかありましたか?
山本:
そうですね……、実は、5月号の種村先生とネームの打ち合わせをさせていただいたのが、ちょうど手塚先生の命日の2月9日だったんですよ! 特にその日に合わせたというわけではなく、たまたまそうなったんです。当日、種村先生がおっしゃられて「ああ、そうだ!」と気がついたくらいで。なんだか不思議なご縁を感じました。
ネームの打ち合わせって、マンガ編集にとってはその作品の第1歩、という意味合いがあるイベントですので、そういう、意味のある日に初められたことはとても嬉しいですね。
——『月刊プリンセス』って、どういう雑誌ですか?
山本:
創刊は1974年12月で、他誌で言えば『花とゆめ』さんなどと同期です。ターゲットはハイティーンですが、創刊2年後の1976年から始まった『王家の紋章』を現在も人気連載中で、連載開始当時から買ってくださっている読者さんもいらっしゃいます。
——ファン層が厚そうですね! 現在の連載作品で人気のあるものはなんですか?
山本:
アサダニッキ先生の『青春しょんぼりクラブ』や、すもももも先生の『後宮デイズ』といった作品が人気です。
——連載作品の傾向のようなものはありますか?
山本:
『王家の紋章』に代表されるような、ファンタジー路線のものがずっと主流だったのですが、最近では日常に少しだけファンタジックな要素が交るような作品が人気を集めています。4月号の表紙になったこなみ詔子先生の『シカバネ★チェリー』などもそういう作品ですね。
読者のターゲットとしては、マンガ好きで、家でガッツリ読みこむような読者層を狙っています。実は今年から増ページもしまして、600ページを超えるボリュームですので、買ってよかったな、と思っていただけるような誌面づくりを日々目指しています。
逆に、『プチプリンセス』では恋愛をメインにした作品を掲載しています。同じ編集部が作っていますので、読み比べてみても面白いかも知れません。
——4月号では純文学系の作家・星野智幸先生原作の『俺俺』を、梅田阿比先生がマンガ化されていますよね。
山本:
そうなんです! 原作つきのモノにも力を入れているのが、他誌との違いだと思っています。1月号から連載開始となった高橋葉介先生原作・みもり先生マンガの『押入れの少年』も原作モノですね。
星野先生の『俺俺』はちょうど映画化も予定されていますし、日常に不条理な現象が混じってくるという筋も本誌の読者層に受け入れられそうだな、と思い挑戦しています。星野先生も少女誌でのコミカライズを面白がってくださって、OKしていただきました。
——あと、表紙の傾向が4月からがらりと変わりましたね。なんだか少女誌っぽくなくて、とっても目立つな、と思いました。
山本:
表紙デザインを担当している編集者とデザイナーさんが若い世代ですので、新しい挑戦をしてみよう、ということでちょっとデザイン要素も入れたものにしてみました。色味が目をひきますが、実は今までは男女カップルの表紙、というのが定番でしたので、主人公ひとり、というのも新機軸です。
——1月号の『王家の紋章』の表紙もかなり目立ちましたね!
山本:
セリフ付きでメンフィスのアップ、という。あちらも反響が大きかったですね。
今回の『ブラック・ジャック』トリビュートの一連の企画もそうですが、『月刊プリンセス』全体でも、今まで出来なかったことや、どんどん新しいことに挑戦していきたいな、と思っています。
——『ブラック・ジャック』では、どのエピソードがお好きですか?
山本:
私が好きなのは、火の鳥がゲストに出てくる、ずばり『不死鳥』という作品です。不老不死をテーマにする『ブラック・ジャック』というのが、すごいですよね。
また、普段カッコ良いブラック・ジャックがふと見せる人間臭い表情がやっぱり魅力です。ピノコとのからみがあるエピソードだと、そんなブラック・ジャックの表情がいろいろ見られて、好きな作品が多いですね。ピノコが小さな男の子と恋人ごっこをするお話とか、ピノコが作ったクスリでブラック・ジャックがお腹を壊しちゃう話、それから、ちょっとミステリー仕立てで、ピノコがブラック・ジャックのもとに送られてきた謎の手紙を読んじゃって……、というのも、好きです。
——『ピノコ・ラブストーリー』、『コレラさわぎ』、『ピノコ・ミステリー』ですね。それぞれ少しずつ雰囲気が違っているけど、ピノコがキーポイントになっていますね。
山本:
私は、シーンで覚えていることが多いです。紗久楽先生とも話していたんですが、『ブラック・ジャック』ファンには、タイトルで覚えている人と、話数で覚えている人と、キャラクターで覚えている人の3通りの人がいるらしいんですけど、私はそれとは別で完全にシーンで覚えているタイプです。『コレラさわぎ』のラストのブラック・ジャックのシオシオの顔とか……。
——これから8ヶ月も、いろいろな先生の描くブラック・ジャックが読めますね!
山本:
野望はいろいろ他にもあるんですよね……。Tシャツなどのグッズを作りたい! とか、タレントさんにコスプレして貰ったグラビアを撮りたい! とか……。その辺りはちょっと、難しいところもあるんですけど……。野望は野望ということで…。
そういえば、今旬のきゃりーぱみゅぱみゅさんは、ご自身の髪型を「ピノコカットだよ!」ってブログでおっしゃってたことがあったんです。ブラック・ジャックって、ピノコが特にそうですけど、ああいった原宿ポップカルチャーと相性がいいというか、ああいう視点で「かわいい!」と思ってくれる女性がたくさんいると思うんですよね。今回の企画もそういう再評価を狙っています。お祭り感覚で「可愛くて楽しければ、いいじゃん!」みたいな感じで盛り上げて行きたいです。ミーハーファンでいいじゃん、みたいな。
——新企画が決まったらぜひご紹介させてください! 今回はありがとうございました!
期待大な『ピノコトリビュート アッチョンブリケ!』
第1弾は4月6日発売 5月号に掲載です!
マンガは、種村有菜さん「ピノコの結婚式」、
紗久楽さわさん「きみのてぼくの手、水の中」の2本。
イラストは、宇仁田ゆみさん、山中ヒコさんが登場予定!
◆色紙プレゼント◆
紗久楽さわさんから読者プレゼントとして、ピノコのイラスト色紙をいただきました!
抽選で1名様に1枚をプレゼントします!
ご希望の方は、●tezukaosamu.net ログインメールアドレス ●住所 ●氏名 ●お電話番号 を明記の上、下記メールアドレスまでご応募下さい。
応募締め切り:
2013年4月30日(火)
※当選された方のお名前を書いてプレゼントいたしますので、お名前は必ずお知らせ下さい!
tezukaosamu-net-guide@tezuka.co.jp