今年は『鉄腕アトム』放送開始50周年。そして4月と言えば、アトムの誕生日です!
アトムもおかげさま(?)で、今年で10歳です! 今月号で紹介するこの「火星から帰ってきた男」では、アトムは18歳になっている設定ですので(もちろん、見かけは変わらないのですが)、ちょうど8年後の事件と思ってお読みいただくと、臨場感があるかも……?
初出は雑誌『少年』昭和43年1月号から3月号に連載されました。『少年』に連載されたアトムとしては、最終回に当たる作品です。
18人もの殺人を冒し、2億円を強盗したあげくにロケットで火星に逃げた悪魔のような犯罪者ユダ・ペーター。時効を迎える15年を見越して、18年目の雪の降りしきるクリスマスの晩、彼は悠々と地球に戻ってきました。
警察隊がものものしく見張り、タワシ警部を始め多くの辣腕刑事らが歯噛みをする中、ユダは堂々とロケットから降り立ちます。下田氏演じる刑事もまた、彼の帰還を苦々しく思う一人でした。かつてユダの捜査を担当しながら、まんまと逃げられたのです。かの大悪党を目の前にしているのに、何一つできない。悔しがる刑事がユダに、「次に何かしでかしたら、死刑台送りだ」とすごんだ瞬間、突然はじかれたように倒れます。駆け寄った人々が調べると、なんと刑事はすでに死んでしまっているのでした。
世界中の要人が次々と不可解な死を遂げるサスペンス、ついにはアトムやお茶の水博士までが危機にさらされるスリル。中にはちょっとショッキングなシーンもあり、ホラーやミステリーの要素もふんだんに取り入れた、まさに「大人の鑑賞に耐えうる」質の高い一編です。『少年』版『アトム』はどれをとっても、それぞれに子供向け以上の要素が少しずつ盛り込まれていますが、その中でもひときわ大人向けなのが、この「火星から帰ってきた男」なのです。