9月18日、秋葉原・アニメセンターで始まった展覧会「osamu moet mosoハジメマシタ」。
開催まで詳細が謎に包まれていたこのイベントですが、「手塚治虫アキバ化」をコンセプトに、現在のアニメ・マンガの世界を
今月の虫ん坊では、「osamu moet moso」参加アーティストで、『涼宮ハルヒ』シリーズ(
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osamu moet moso
いとうのいぢさん(以下「の」):誰でも知っている手塚治虫さんの作品とのコラボレーションに誘っていただいた事を、とても光栄なことだな、ってまずは思いまして、そのつぎからもうガクガク! 「いいのかなぁ?」っていう感じですね。未だにそうなんですけど、
の:ぜったい描きたいと思ったのは、「リボンの騎士」で。
どちらの作品も、知ってはいながら、ちゃんと読んだことは無かったんですよ。「ブラック・ジャック」は読んでいて、単行本も持っていたんですけど、この2作品については、イラストやイメージなどでしか、実は把握していなかったんですね。今回のお仕事をいただいたときに、「描いてみたいな」っていうのがまずこの2作品で、改めてマンガを読んでみて「やっぱりこれ、描きたい!」って思って、改めてこの2作に決めました。
”2面性”というモチーフが私はすごく大好きなんですけれども、この2作品はどちらも
「リボンの騎士」は本当に、手塚先生の作品のなかでも少女漫画を意識していて、私の母も読んでいたような有名な作品ですよね。私も女子なので、少女漫画で育ってきましたから、今こそ男の子向けの作品をよく描かせていただいていますが、やはり原点はリボンやフリル、お姫様の世界があって。だから「リボンの騎士」は絶対描きたいな、と。
「三つ目がとおる」はちょうど私が子供のころにアニメが作られたことを今回のリサーチで知ったのですが、関西だったからか見ていなくて。とても有名な作品で、いろいろなものの原点にある作品ですが、改めて読んでみてすごさを改めて感じました。
もちろん、あらかじめビジュアルや設定は知っていても、作品を読み込むことで、「こういう絵を描こう!」というイメージが凄く出てきて。お話しの力って凄いな、と思います。
今回は二作とも直感的に構図や描きたい絵が浮かんだのですが、自分が「これでよし」と思ったものを描いて、お客様にも「いいね」って思っていただくことって、なかなか難しいことですよね。今回の作品も「大丈夫かな?」ってちょっと不安だったんですが…。
の:私は、自分の思ったことを出し切るしかないので。……後になって、「これはもっとこうしたほうが良かったな」っていうのは、どの作品にも出てくるんですけど、でも、やっぱり、どんなに時間がたっても、題材が変わっても、私が出すものはこれだったんだな、というのがあって。
今回描かせていただいたイラストも、こんな絵にしよう、と決まったのが早かったんです。ただ、その絵を成り立たせるまでの過程で、どのような色をつかうのか? などでいろいろ悩むところはあったんですけど、ラフは早かったですね。
の:さっき言った「ブラック・ジャック」とか、あとは「火の鳥」とか。「火の鳥」はうちの父が大好きで。テレビアニメを見たり、父の単行本を借りて読んだりとか、小さい子供にはちょっと渋いというか、どろどろしたかんじ、というか、怖い感じが印象に残っていて。面白い、というよりも、鮮明に心に焼き付いている、印象深い作品ですね。
の:最初の最初に、「何を描こうかな?」って悩んでいたときに、手塚先生の作品一覧を見て、「七色いんこ」という作品がありまして。リストで見るまでは知らない作品だったんですけど、一目ぼれしてしまって(笑)。「かっこいい! 描きたい!」って思ったんですけど、自分の表現力では限界があるな、とおもって、今回はちょっとやめとこう、と思ったんですけど、また機会があれば、かっこいいいんこさんが描けたらな、と思っています。
の:手塚先生、こんな作品も描いていたんだな、って。
意外と知らない作品がたくさんあって。たとえば、「
の:いや、「奇子」は本当に難しいと思いますよ! あの大人向けでダークな感じがすごく好きなんですけど。
手塚先生の作品は、ジャンルも
「奇子」が描けないな、と思ったのは、色とかじゃなくて、もっと内情的なものが出せる絵が描けないと、あの作品は表現できないな、と思って。
なかなか奇子の気持ちを理解するのは難しいですよね。子供の心を持ったまま大人になってしまっている奇子は、表情なども描き
あの作品のおしとやかな雰囲気というか、古い日本家屋と黒髪の女性、というモチーフは素敵だと思うので、うまくはまる表現が出来ればいいのですが。
の:私自身は、子供の頃は絵を描くことがあまり上手じゃないと思っていたんですけど、お友達にお姫様とかを描くことがすごく上手な子がいて、その子に、鉛筆とお絵かき帳を持っていって、「描いて描いて!」っていうほうだったですね。そういうふうに描いてもらっているうちに、自分でも何か描いてみたいな、と思ったんだと思います。
の:うーん……マンガやアニメをたくさん見てきたので、この人、というのは難しいですね。ほんとうに、覚えていないぐらいたくさんの作品を好きで見てきましたから。あえて言えばそれこそ高橋留美子先生とか、アニメだったらスタジオぴえろの「魔女っ子」シリーズとか……。
の:コミケとか、同人活動は息抜きの場だと捉えています。仕事では描けないようなオリジナルの絵であるとか、世界観のものを描いていこう、と。
の:たしかに、文章に書かれたイメージを頭に思い浮かべながら描くので、難しい部分もありますが、私も一読者として作品を読んだときに、ぱっと頭に浮かぶものがあるので、それを表現すればよいのかと思えば、かえって簡単なのかも知れないですね。
オリジナルで絵を描く場合は、自分で小物や、性格や設定も全部考えていくので、結構なエネルギーや、センスがいりますし。
私にはマンガはかけないな、と常々思うんです。ストーリーや、展開が考えつかないんですよね……。やっぱり、マンガを描きたいと思っても、まず思い浮かんだ描きたい場面を書くためのお話を、考えられなくて。描きたい場面、は思い浮かぶんですけど。
そういった意味では小説家の先生方が書かれたストーリーに絵を描く、というのはものすごくやりやすいし、天職なのかもしれないな、と思っています。
の:お二方とも、絵的なところは任せてくれるので、ありがたいです。もしかしたら初めの頃は少し違和感を感じていらっしゃったかも知れませんが、お話しの途中で出てくるキャラクターについて、相談をいただいたりすることもありました。
の:私には私の絵しか描けないので、筒井先生の作品にあう絵、というものがどういうものかは分からないのですが、挿絵を任せて貰ったということは、私のテイストを見てくださっているということなのかな? ということであまり気負いなくやらせていただけました。
やはり、筒井節というか、ライトノベルとは違った雰囲気があって、私の絵とはあわないところがところどころあるように思ったのですが、そこは読者フィルターで解釈していただくしかないな、と。
の:私は、画力的な意味ではまだまだつたないので、インパクトを与える方法もプラスして自分の絵を伝えたいと思うんです。
今までのお仕事はほとんど、キャラクターありきの作品が多いのですが、私もそう言う絵が好きだし、描きやすいです。見たときに印象に残る勢いのようなものは殺さないようにしたいな、と思っています。
の:絵を描く時って、そのキャラクターの好きなものとか、嫌いなものといった、いろいろなバックボーンがあって、やっと活(い)きてくる、というか。それがない状態で描け、と言われるのが一番難しくて。「なんか解らないけど、とにかく女の子を描いて」とか、そういうのが一番
「涼宮ハルヒ」もお話しがあったからこそ、あのビジュアルに行き着けた、というか。たとえば、「爪を噛む癖」がある子であれば、外見にも神経質な面が出るのかな? など自分の解釈を加えてみるとか。そういう補正が入ってこないと、ビジュアルにならない、というか。そのあたりが細かければ細かいほど、描きやすいのかも知れないですね。
性格による表情の違いも、できるだけ描き分けるように、心がけています。
の:「灼眼のシャナXXI」がメディアワークス電撃文庫より11月10日ごろに発売予定です。また、年末に発売になる映画「涼宮ハルヒの消失」DVDとBlu-rayの特装版の表紙を描きました。
の:今回描かせていただいたイラストが、若い方とか、手塚先生の作品をあまり知らない方にとっての手塚作品への入り口になってくれたら本当に嬉しいです。
このイベントをきっかけに、もっと、いろいろな方が手塚作品を手にとっていただければ、と思います。
開催中の「osamu moet moso ハジメマシタ。」は東京アニメセンター(秋葉原)で10月11日まで。
11月1日から、新宿マルイワンに巡回します。また、来年7月には、手塚治虫記念館で企画展を開催の予定も。ご期待下さい!!
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