地獄谷近くのホテル「観光荘」に突然やってきた謎の男。男は新聞記者の鳳俊介を名乗り、黄金のトランクを下げていました。よほどの金持ちか? それとも…? 怪しいその男は泊まった晩、部屋で、例のトランクを残したまま、忽然と姿を消してしまいます。びっくりした関係者が警察に電話をしようとしたところ、遺留品の黄金のトランクは悪人二人に奪われてしまいます。ところが、トランクは悪人がどうがんばってもあけることができません。仕方なく山小屋で一夜を過ごした悪人はなぜか、すっかりおかしくなってしまいました。警察が二人を捕まえても「金色のトランクが動く…」とのうわごとをもらすばかり。警察はさらに、謎の男が差し出した名刺を頼りに、新聞記者の鳳と連絡をとりますが、鳳俊介は謎の男とは別人のようで…。相次いで提示されていく謎。ひょんなことで巻き込まれてしまった鳳俊介と弟の不二雄、いとこの博子の三人が探偵役となり、ふしぎな金のトランクの謎を追います。
1957/01/04-10/16 「西日本新聞」連載