1945年頃
——大人に対する不信感というのが強かったわけですね。子どもでもわかるほどおかしなことを、マジメに大人たちは考えて、それを押しつけていたわけだから……。
だけれども、何よりもぼくらを襲ったのは空腹なんです(笑)。とにかく、負けても勝ってもいいから、腹いっぱい食べたい、これだけが子どもの唯一の願いでしたから。もう、厭世(えんせい)主義にならざるを得なかったような状態だったですから。米だけでは足りないから、もう最後には恥も外聞も捨てて、泥棒までしましたよ。かぼちゃ泥棒、いも泥棒、ぼくら学生が、徒党を組んでやるわけです。相手も知ってはいるんですよ、だけれど近所でもあるしということで、文句もいわない。それをまたこっちも承知でとるわけですから、だから全部はとりませんよ。腹いっぱいにならないものだから、なんでもとりました。
そんなわけですから、聖戦完遂なんてちゃんちゃらおかしい、というのが子どものおかれている状況だったと思いますね。