2019/11/19
手塚治虫について誰よりも詳しいと思っているそこのあなた!
誰よりも手塚作品を愛していると自負するそこのあなた!
我こそは日本一の手塚マニアだと言って憚らないそこのあなた!
きたる12月7日・8日、そんな皆さんのためのイベントが開催されるんです!
そう、それが......
この機会にご自分の手塚知識を試してみてはいかがでしょう?
ということで、運転中や団らん中にすぐクイズをやりたがる自称クイズ好きの私、手塚プロダクションスタッフが、手塚治虫クイズ大会を開催する日本初のクイズ専門店「クイズルームソーダライト」に潜入してきました!
みんな! ニューヨークに行きたいかー!
(※手塚治虫クイズ王決定戦に優勝してもニューヨーク旅行の商品はありません)
文京区のとある商店街の中にあるビルの2階のワンフロア。
一見見落としてしまいそうなその看板には「QUIZROOM SODALITE」と書いてある。
ココが噂の日本初のクイズ専門店。手塚治虫クイズ王決定戦が開催されるという謎の施設。
気になる!
めちゃくちゃ気になって仕方がない!
もはや1階の「ブォングスタイオ」の意味さえも気になって仕方がない!
早速潜入だ!
なんとも怪しい扉を開くと、そこに広がっていたのは......
まさにクイズルーム!
テレビでみるやつ!
興奮している中、ふと目に入った一人の男......
この男こそ、日本初のクイズ専門店「ソーダライト」の仕掛け人にして、日本クイズ協会理事、はたまたクイズ雑誌「QUIZ JAPAN」編集長でもある、大門弘樹その人である。
ソーダライトのこと、今回の「手塚治虫クイズ王決定戦」開催の経緯、果てはクイズ業界の伝説や歴史について様々な話を聞いてきた。
―――こちらは日本初のクイズ専門店と聞きましたが、どんな施設なんでしょうか?
大門 普段クイズ番組を観ていると出てくる「早押しボタン」ってどこに行ったら押せるのかって思っていませんか?
―――思ってました!
大門 そんな観ているだけだったクイズ番組に参加したいという方の思いを叶えるためにできたのがこのクイズルームソーダライトです。
―――ずっと押したかったんですよ、あのボタン!
大門 どうぞどうぞ。
―――え? 良いんですか? ......(おそるおそる)えいっ!
―――光ったー! 音も出た! トゥーン♪って! テレビのまんま! 感動!
大門 今、クイズファン層の幅がすごく広がっているんですけど、実際にクイズの体験をするにはやっぱりまだ敷居が高い。気軽に親子で参加できるような間口の広いスペースがあった方が良いという思いから、最初は週末にのみ営業するお店としてスタートしました。これが大反響で。土日のイベントが10分で瞬殺するほど。
―――すごい人気ですね!
大門 今は週5~6日ほど営業しています。それでも人気のイベントなどはひと月先まで埋まってしまうような状態です。
―――クイズ業界、キテるな......。ここはどんなきっかけでやることになったんですか?
大門 仲良くしていただいている『第13回アメリカ横断ウルトラクイズ』チャンピオンの長戸勇人さんというクイズ王の方が、「1980年代後半にカラオケボックスが流行りだした頃に、『クイズボックス』を作ったら絶対ウケるっていう話をしていたけど、いまだに誰もやらない。大門がやるんやったら協力するで~」と仰ったんです。「それなら...」とホントに作ることにしたんですが、実際に長戸さんにオープンイベントをやっていただいたら即完売。当時の『ウルトラクイズ』ファンが「長戸さんのクイズに参加できる!」ということで来てくださって、そこからあれよあれよと今では月に10本以上のイベントを長戸さんにやってもらっています。
―――『ウルトラクイズ』観てましたよ! たしかに実際にクイズ王に会ってクイズができたら楽しいだろうな~。システムはどうなってるんですか?
大門 予約制で、サイトで予約するシステムです。面倒であれば、お電話を頂ければスタッフが空き情報をお知らせしますので、その場でご予約いただけますよ。
―――実際のクイズはどのような感じでしょう?
大門 ひとつは「フリープレイ」といって、店員が問題を読むコースが2時間\1000です。それ以外にクイズ王やクイズ作家のオリジナル企画を遊べるイベントが\2500~となっております。
―――そんな気軽に生のクイズが楽しめるなんて! でも難しい問題ばっかりなんじゃ......。
大門 大丈夫ですよ。初心者から、スターター、ビギナー、ビギナープラス、スタンダード、ガチと難易度が分かれています。まったくやったことがない方はスタータークラスにお越しください。
―――ガチ......見てみたい。お客さんによってその場で問題を変えるんですか?
大門 お子さんが来てくれたのに大人しかわからないような問題はもちろん出しません。できるだけクイズを楽しんでもらいたいですから。
―――クイズには優しさも大事なんだな~。
大門 クイズを通して高校生と60代の方が友達になっちゃったりすることもありますね。
―――クイズを通して世代を超えた友情を育めるのはココだけですね!
―――「手塚治虫クイズ王決定戦」という今回のイベントですが、これだけジャンルを絞ったイベントをソーダライトで行うのは初めてなんですよね?
大門 そうですね。昔は『カルトQ』、今でいうと『99人の壁』といったワンテーマに特化したクイズ番組はすごく人気があるので、このお店でもやりたいなと思っていたんですが、許諾はちゃんと取らないといけないなと。そんな折に手塚プロダクションの方からお話を頂きまして。
―――どう思われました?
大門 ありがたい話でしたよ! 作品数も知名度も最高峰じゃないですか。それに昔から手塚治虫先生はクイズ番組でもよく出題されるんですよ。
―――作品数はたしかにめちゃくちゃ多いですね。手塚治虫がクイズになりやすいのはなぜなんでしょう?
大門 マンガ界のフロンティアという歴史的な観点からでしょうね。テレビのクイズ番組でも、昭和を振り返るクイズの時は、手塚治虫と美空ひばりは絶対出ますよね。
―――問題作りはいかがでしたか?
大門 クイズには早押し以外にもいろいろな形式があるんですよ。ひとつはビジュアルクイズ。画像を見てお答えください、というものですが、これはオフィシャルじゃないと絶対にできない。
―――たしかに。
大門 ということで、キャラクター当てクイズを出しますよ。これは早押しではなく、ホワイトボードに書いて答えてもらうクイズになります。例えば.....。
―――急にクイズ! ......本間丈太郎!
大門 ......正解!
―――よっしゃー!
大門 これは例題ですが、8問目でこのくらいのレベルです。さすがこのレベルだと簡単に当ててきますね。
―――僕も伊達に働いてないですからね!
大門 当日はビジュアルクイズは40問用意しています。それでは続いて早押し問題の例題です。
―――早押しキター!
トゥーン♪
―――......シャミー1000!
大門 ......残念!
―――シャミー1000はロボットじゃないか。悔しい......。
―――なに!?
同行の手塚プロダクションスタッフ アトムキャット!
大門 正解!
同行の手塚プロダクションスタッフ ふっふっふ。甘いな。
―――チクショー!急に出てきやがって!
大門 ここで当てるのはすごい! ちなみに続きはですね、ニコニココミックで掲載された鉄腕アトムのパロディマンガのタイトルはなんでしょう? です。
―――なるほど~。面白い! クイズの難易度はどのように設定したんでしょうか?
大門 作品の知名度と、知っているキャラクターでもフルネームで答える問題にすることなどでバランスを調整しました。
―――改めて手塚治虫のことを調べたんでしょうか?
大門 調べましたね。作品はもちろん、手塚先生自身の偉大な功績は調べ直しました。あまり言うとヒントになっちゃうかな。
―――ちなみに大門さんは、今までにどのぐらいの問題を作ってきたんでしょうか?
大門 コナミのゲーム『クイズマジックアカデミー』の問題制作をかれこれ15年やっているんですが、今まで作った問題は35万問になりますね。
―――35万!!! とんでもない数ですね。
大門 でも手塚治虫クイズを作るのは楽しかったです。オフィシャルのイベントですし、手塚マニアの方と勝負ができるのは問題制作者冥利に尽きますね。
―――これは受けて立たないといけませんねえ。
大門 序盤は絶対解答できる問題、中盤は手塚ファンならぜひ押さえておきたい問題、最後は絶対に答えられないだろうという難問と、難易度を分けて出題します。もし最後の方の問題を答えられたら「参りました」と。
―――くぅ~そそられる~!
大門 挑まなかったら、不戦敗ですよ~。
―――全国の手塚マニアたちよ! 立ち上がれ!
大門 とある番組で僕が作ったアニメに関する難問を出題したときは、一人だけ答えられた人がいたんです。僕はその人のことを一生忘れないですよ。
―――クイズを通して対話をしているんですね。熱いな~。
大門 手塚マニアの方とも対話をしたいですね。
―――大門さん自身がクイズに興味を持ったきっかけはなんなんでしょう。
大門 クイズファンの間では伝説中の伝説と言われる、『第13回アメリカ横断ウルトラクイズ』の、ボルティモアというところで行われた準決勝をテレビで観たからですね。
―――一体どんな伝説が?
大門 この本の表紙を見てください! 青空にそよぐ星条旗をバックに、当時の日本を代表する4人のクイズプレーヤーが激突するという、少年マンガさながらのシチュエーション!
―――大門さん、ものすごいテンション上がってるじゃないですか。
大門 4人がお互いに阻止し合う大激戦が1時間以上も展開されて、なんと用意していた問題が尽きたんです。それで一度収録が止められ、新たに問題を用意して再開した後は、わずか5分で決着。その中断時に気持ちを保てたかどうかが命運を分けたというドラマがあるんですよ。
―――めちゃくちゃ観たくなるな~。
大門 それからほどなくして、チャンピオンの長戸さんが1冊の本を出すんです。タイトルは「クイズは創造力」。
―――面白そう!
大門 当時の小中学生クイズファン向けにクイズのノウハウを惜しげもなく提供してくれた画期的な本でした。実はその本が今のクイズのすべてのベースになっているんです。
―――まさにバイブルですね。
大門 例えば問題文中の「ですが」という言葉にはどんな傾向がある、とか。
―――ありますね、ひっかけ問題。
大門 クイズ界では前と後ろが対になっているということで「パラレル」と言います。
―――専門用語っぽくてかっこいい!
大門 前がわかれば後ろも自ずと答えが出るんです。「最初」と言われたら「最後」、「あ」と言われたら「わ」を考える。「『あ』から始まるのは愛知県」という問題が来れば「はい、和歌山県」という答えをすぐに導くことができる。
―――おもしろい! それはたしかに「クイズは創造力」ですね!
大門 そうして憧れた僕らクイズ少年たちは大学のクイズ研究会に入って実戦を積んだんです。
―――変わった人がいっぱいいそうですね。
大門 今は勉強ができる人ばかりですが、昔はそうではなかったのでクイズにのめり込んで学業がおろそかになる人もいましたね。僕の先輩で、3年間で単位17個しか取れなくて1年休学も含め、結局9年大学にいて辞めた人がいました。
―――のめり込みすぎでしょ!
大門 あとは図書館に通って百科事典を「あ」から全部覚えていく人とか。
―――あれ読む物じゃないですよ! 調べもの!
大門 本当のトッププレーヤーはもっとすごいですよ。これは聞いた話ですが、「次の問題の答えがわかった」というんです。
―――次の問題の答え? 問題も聞いていないのに!? そんな馬鹿な!
大門 麻雀の雀鬼の伝説で後ろ向いていても牌がわかるという話がありますが、あれと同じですね。
―――もはや予知能力じゃないですか。
大門 要は問題の配列ですね。スポーツ問題の次に続けてスポーツ問題は来ないじゃないですか。ということはこのジャンルが来るんじゃないか。この難易度で来ているのであれば次はこの問題が出るんじゃないかというのが気配でわかると。
―――クイズ王とんでもないな! クイズプレーヤー同士で飲みに行ったりするとどんなこと話すんですか?
大門 クイズをやることもありますね。
―――どんだけクイズ好きなんですか(笑)
大門 携帯型の早押し機を出してやることもあるぐらい(笑)
―――マイ早押し機!
大門 ちなみにこの店でも早押し機のアクセサリーを販売しています。クイズに来たお土産にぜひ。
―――それ気になってました。
―――長戸さんをはじめ、僕が子供の頃のクイズ王で覚えているのは......能勢さん、西村さん、永田さん......などなど。
大門 今仰った方々の世代のクイズ王も、まだ半分くらいは現役で続けてらっしゃいますよ。
―――そうなんだ!
大門 永田さんは、たまにこのお店にも遊びに来てくれたりもします。
―――憧れのクイズ王にバッタリ会えたら嬉しいでしょうね。僕が観ていた世代のクイズ王は見た目もキャラが濃い人ばかりだったなぁ。
大門 ところがですね。彼が出てきた時にすべてが変わったんです。
―――このイケメンは一体?
大門 彼は水上颯(みずかみ そう)君です。この表紙の号が出た頃にちょうど『東大王』レギュラーになり、今ではものすごい数のファンがいますね。
―――これは人気出るわ。
大門 彼のようなスマートなクイズ王がスタンダードになってきたんです。
―――時代は変わった......。(昔のクイズ王に失礼だけど)
大門 でもイケメンやアイドルたちによってクイズの間口が広がるのは良いことですからね。男の子の趣味だったクイズが、今は女の子もすごく増えて、水上君のTwitterのフォロワーや彼のイベントに来る方も大半が女子ですね。
―――クイズ、今からでもやろうかな......。
―――最後に、クイズの魅力ってなんなんでしょう?
大門 最大の魅力はやっぱり早押しクイズだと思います。このボタンの魅力ですよね。このギミックがね......魔物なんですよね......。(遠い目)
―――クイズ、深いなあ。誰も答えられない問題が正解できたら嬉しいでしょうね。
大門 クイズで一番気持ちいいのは、30年40年生きてきた中で「あ、そういえばコレ親父が言ってたな」「あの時観た映画に出てきたな」といった知識が初めて披露できたという喜びだと思うんです。
―――わかる! 生きてきて培った知識だから自分の人生肯定できますもんね。
大門 だから今回の手塚治虫のクイズ大会は、もちろん詰め込み学習で対策をしても良いんですが、何よりもこれまで手塚作品が好きで読んできた経験が発揮できる大会だと思います。
―――そうですよね。全国の手塚ファンのみなさん! 人生肯定しましょう!
大門 学校の勉強で習うことは就職に役立つようなことはあるかもしれませんが、マンガやアニメの知識はそうじゃないし、褒めてもらうこともない。それを初めて褒めますよ。承認欲求満たされまくりです。(笑)
―――みなさん、「手塚治虫クイズ王決定戦」ぜひお越しください!!