虫ん坊

舞台「どろろ」脚本・演出 西田大輔さんインタビュー

2019/03/04

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 2019年3月2日からの大阪公演を皮切りに、ついに舞台『どろろ』の幕が上がりました。

 脚本・演出を手掛けるのは、ストレートプレイから2.5次元まで数々のヒットを生み出し続ける西田大輔さん。

 舞台『どろろ』の開幕寸前の2月某日。稽古場に赴き、西田さんへのインタビューを決行。

「手塚先生の『どろろ』を、世界に出して恥ずかしくない舞台作品にしたい」と語る西田さんの、本作への思いを語っていただきました。


西田大輔

1976年生まれ。東京都出身。1996年在学中にAND ENDLESSを旗揚げ。以来劇団の全ての作・演出を手掛ける。2015年DisGOONie設立。近年では漫画、アニメ原作舞台化の脚本・演出も多く務めるほか、2018年には初監督映画となる『ONLY SIVER FISH』が公開。代表作/舞台『RE-INCARNATION RE-COLLECT』シリーズ(DisGOONie Presents)ほか、舞台『青の祓魔師』シリーズ、舞台『煉獄に笑う』など。最新作に舞台「Phantom words」、「+GOLD FISH」が控えている。


――今回、『どろろ』の脚本・演出のお話をお受けになって、いかがでしたか。

西田大輔さん(以下、西田) 昨今いろんなマンガやアニメが舞台になっている中で、純粋に、自分自身にとって大きな勝負になるんじゃないかと思いました。手塚先生の作品は、ほかのマンガ作品とは色合いが違いますからね。

 今回は『どろろ』が満を持してアニメ化されるということから舞台との連動企画でした。『どろろ』は、とくにスペクタクル溢れる作品ですので、ぜひ挑戦してみたいなと思いました。

――『どろろ』は以前から読まれていましたか。

西田 はい。読んでいましたよ。手塚作品はアニメの『火の鳥 鳳凰編』から入ったのを覚えています。僕らの世代って、アニメから手塚先生の作品に入っている方が多いんじゃないかな。

『アドルフに告ぐ』や『ブラック・ジャック』、『火の鳥』など一通り読んで、『どろろ』もその延長で読みました。

――西田さんから見た、『どろろ』の魅力とはなんでしょうか。

西田 昨今の日本の読者が愛するマンガというのは、主人公が仲間を見つけてどんどん強くなっていき、新たな敵を迎え撃つという王道なストーリーが多いじゃないですか。

でも、手塚先生は50年以上も前に全く逆説のストーリーを描いていたんですよね。百鬼丸は最初から体がないかわりにテレパシーという特殊能力を持っていて、そこからどんどん生身を取り戻していく。自分がどういう生い立ちだったのかを知れば知るほど傷つき、旅を続けるうちに感情を知っては失っていくじゃないですか。鬼神との約定によってすべてを奪われた悲しみの宿命。こういうストーリーを50年前に描かれているというのは驚きですよね。そこが『どろろ』の凄さなんじゃないかなと思います。

photo01.jpg戦のために居場所をなくした子供達の世話をしていた少女・みおとの出会いにより、人間らしい温かい心を取り戻しつつあった百鬼丸。突然訪れた彼女の死は、百鬼丸を死人同然の凍てついた心へと変えてしまった。みおが登場する「法師の巻」は、西田さんの印象深いエピソードのひとつだという。

西田 今回読み返して、このお話はいわゆる冒険活劇ではあるんですけれど、じつは親と子のシンプルな物語なんじゃないかと改めて感じました。脚本を書くうえでのキーワードも、そこでした。

――舞台では百鬼丸やどろろの運命だけではなく、「親と子」という大きなテーマも描いていると。

西田 舞台という限られた時間の中でこの作品を表現するとしたら、僕はやっぱり百鬼丸とどろろの旅を通して、離れ離れにならなければいけなかった親子の運命を主軸に描きたいと思っていて。

親子という関係はどんな人間にも必ずあって絶対切れないものじゃないですか。そう考えると、生まれてすぐに親の手から離れることになってしまった百鬼丸の運命はとても悲しいものですよね。醍醐景光の視点でみると、彼は天下統一のため自分の息子を捨てなければならなかったけれど、それは彼が治めている国の人々の人生を守る立場にいるからこそ、そう願ったのかもしれない。  

そう考えてみると、非道ではあるけれども彼は彼なりに宿命を背負って生きているんじゃないかと思うんです。

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稽古場に置かれたフリー『どろろ』。舞台化が決まってからは、西田さんの手元にも常に原作『どろろ』があったという。

――今回はアニメ『どろろ』との連動企画とのことですが、アニメから刺激をもらった点などはありますか。

西田 もちろん。鈴木拡樹くんは両方で百鬼丸を演じていますし、アニメの切り口も意識しています。ただ、アニメでしか表現できないことと舞台でしか表現できないことは違うので、そこはよく考えるようにしています。

――舞台ならではというのは、たとえばどういったところでしょうか。

西田 一つの荒野を表現するとしたら、アニメだったらそのシーンをCGなどのデジタル技術を使って構築していかなければなりませんが、舞台の面白いところは、そういうことができないかわりに照明ひとつ言葉ひとつで、舞台の上を荒野に見せられる可能性があるんです。もちろん俳優の表現力も含めてですけれど、それを主体として作っていく『どろろ』の世界は、アニメの世界とはまた違った空気が生まれるんじゃないかと思います。

――稽古を見学させていただきましたが、たくさんのキャストさんが舞台上でひとつのシーンを数多くの動きで表現されていましたね。それに、百鬼丸の殺陣の手数が1000を越えたとか......。

西田 他でやっている舞台とは動きの桁が違うんじゃないかと思います。

アクションシーンの殺陣はもちろんですが、これだけひとつのシーンや全体を通しての動きに数がある舞台は今まで創ってきた作品にはないんじゃないかと思いますね。

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稽古のようす。舞台装置の骨組みを使い、キャストそれぞれの動きのチェックが事細かく行われていた。

西田 3つの台とキャストの動きしか使ってないんですけれど、シーンによっての場所の表現はきちんとできていると思います。これはアイディアと発想のほかに、動きのタイミングがとても重要なんです。とくに殺陣はひとつの動きがずれると途端に格好悪くなってしまうから、精密機械のような感じですね。そのぶん、稽古にすごく時間が掛かるんです。ほかの作品に比べたら倍は掛かってるかと......()

だから俳優たちもスタッフもすごく大変なんですけど、手塚先生の『どろろ』を、世界に出して恥ずかしくない舞台作品にしようというのは、顔合わせの時から制作陣の皆さんと話していたことでもあります。

――現在、稽古をしていて、手ごたえはありますか?

西田 もう、手ごたえしかありません! ......こんなこと言って大丈夫かな()。でも、本当にそうなんです。ひとつひとつシーンにこだわっているという自負があるので、これが完成したときにはきっと良いものになっているんじゃないかと思います。

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張りつめた緊張感のあるなか、たまにユーモアを交えたアドバイスを出し、場を和ませていた。

――過去にもタッグを組まれたことのある西田さんと鈴木さんですが、今回、百鬼丸を演じられての印象はいかがでしょうか。

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アニメ・舞台ともに百鬼丸を演じる鈴木拡樹さん

西田 そうですね、彼に関しては話すことがたくさんあるんですけど、彼はちょっと特殊なんですよね。俳優だけれども、彼はまったく自己主張をしないんですよ。

たとえば、人は得意なジャンルの話になったときに、「それ知ってる〜」って、自分の持っている知識をひけらかしたくなるでしょう。

――なります。

西田 鈴木くんは、そういうのがまったくない。彼は昨今の俳優の中でもナンバーワンの位置にいると思うのですが、彼を慕っている後輩たちの前で大きくなることも全くなくて、そういうところで自分を主張するという感覚が、おそらく、もともと全くないんでしょうね。だからこそ、誰にも出し得ない独特の品があるというか。

あと、人間っぽくないところがあるんですよね、鈴木君は。ある意味百鬼丸と似ていますよ()

――たとえば、どういったところでしょうか。

西田 すぐそこにいるのに、「拡樹どこいった?」って、一瞬わからなくなる時があるんですよ。そのぐらい自分の気配を消しているというか、自ら前に出ることをしないんですよね。


彼は作品のことも役のこともすごく考えてくれていて、面白いアイディアを生み出してくれることもあるんですが、皆から面白いと褒められたとしても「はい。ありがとうございます。」と、多くを語らず終わらせてしまうんです。僕はそこが彼の持つセンスだと思っているんですが、本人はそれを美徳とも思っていないんでしょうね。その謙虚さに、彼が舞台上で光り輝く理由があるんじゃないかなと思います。

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普段は柔らかい雰囲気をまとう鈴木さんだが、稽古中の眼差しには鬼気迫るものがあった。

――どろろ役の北原さんについてはどうですか。

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どろろ役の北原里英さん

西田 どろろがいることでこの物語はずっと希望を保つことができて、物語を深くまで掘り下げることができる。つまり、どろろがいなければこの物語は成立しないですよね。

そういう存在であるどろろのように、北原さんは座組みにおいてみんなの希望になっていますね。彼女の持つ明るさが、作品とリンクしているというか。日々の稽古を通して、彼女のふるまいや芝居に対しての姿勢でチームがひとつになっていっているように感じます。

僕は、本当に明るい人はこの世にいないと思っていて、明るく振舞うことができるというのは人に対する優しさだと思うんです。だから、彼女の持つ明るさは、北原さんの人間性を語るうえで重要な部分なんじゃないかと稽古を通して感じました。

――西田さんは、ご自身の劇団で精力的に活躍しつつも、近年は2.5次元の舞台も多く手掛けていますよね。マンガやアニメの原作を舞台化するにあたり、心がけていることはありますか?

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演出の指示を出す西田さん。視線ひとつとってもキャラクターの感情を拾い上げ、即時に細やかなイメージを伝えていく。

西田 その作品の世界観を表現することが第一だというのは常に考えています。『どろろ』に関しては、物語やキャラクター、世界観という視点を超えて、手塚先生が『どろろ』を描いていた時代そのものの空気はどうだったのだろう、というのも考えました。もし『どろろ』が連載されていた時代に僕が生きていたら、この作品をどう受け取っていたかな、手塚先生はなにを考えて『どろろ』を生み出したのかなと。

――妖怪ブームがあったから描きはじめたという話など、諸説ありますが()

西田 いやぁ、どうでしょう。わからないですよね、そればっかりは()。ただ、ひとえに妖怪ものだとしても、物語の角度がほかと違っているじゃないですか。今や無数のマンガ作品が生まれているわけですけれど、1960年代からこんなストーリーを考えた人なんて他に誰もいなかった。そういう点では、やっぱり手塚先生はとんでもない人だったんじゃないかと。

たとえば、舞台において最初に照明を当てた人がいるわけです。一番初めから舞台照明というものは絶対になかっただろうに、「ここで光を当ててみたら良くない?」って誰かが画期的な発見をして、0から1を生み出した。それと同じで、手塚先生はまちがいなくストーリーマンガのパイオニアですよね。そんな手塚先生のマンガを舞台にするということに対する恐れと緊張は、ひしひしと感じています。

――最後に、舞台『どろろ』の上演にあたり意気込みをお願いします!

西田 『どろろ』という作品に対して、とにかく真摯に、誠意を持ってスタッフ一丸となって挑戦していますので、どうか楽しみにしていてください。手塚ファンの方でもそうでなくても、たくさんの方にご覧いただけたら嬉しいです。

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稽古場にあるホワイトボードに描かれた、スタッフさんによるラクガキをキャッチ。こんなところにも作品愛を感じた。



舞台『どろろ』

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公式HP:https://www.dororo-stage.com/

原作:手塚治虫

脚本・演出:西田大輔

企画・制作:エイベックス・エンタテインメント/Office ENDLESS

【出演】

鈴木拡樹/北原里英/有澤樟太郎

/健人 影山達也 田村升吾 赤塚篤紀 児島功一

/唐橋充 大湖せしる

【公演期間】

大阪公演

期間:201932日(土)~33日(日)

公演会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

東京公演

期間:201937日(木)~317日(日)

会場:サンシャイン劇場

福岡公演

期間:2019320日(水)

会場:ももちパレス

三重公演

期間:2019323日(土)

会場:三重県文化会館大ホール

※当日券は各回開演の1時間前から劇場窓口にて抽選開始いたします。

◆3/17(日)17:00公演【東京公演・千穐楽】

ライブビューイング・CSテレ朝チャンネル1にて同時生中継が決定!!


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