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『どろろと百鬼丸伝』連載スタート! 士貴智志さんインタビュー【後編】

2018/12/19

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『どろろ』のリメイク作品、『どろろと百鬼丸伝』の連載が「チャンピオンRED」でスタート!!
手掛けるのは現在『進撃の巨人』のスピンオフ作品『進撃の巨人 Before the fall』の作画を担当し、海外で個展を開催するなど国内外で活躍する士貴智志さん。
そのインタビュー内容を前編・後編に分けてお届け!

後編では、いよいよ『どろろと百鬼丸伝』について迫ります!



士貴智志(しきさとし)

漫画家、イラストレーター

1970年生まれ。愛知県出身。代表作に『神・風』『光と水のダフネ』『XBLADE』など。
現在、「チャンピオンRED」(秋田書店)にて『どろろと百鬼丸伝』(原作/手塚治虫)
「月刊少年シリウス」(講談社発行)にて『進撃の巨人 Before the fall』(原作/諫山 創『進撃の巨人』 小説原作/涼風 涼)
をそれぞれ連載中。



―――今回、『どろろ』のリメイク作品、『どろろと百鬼丸伝』を担当されるきっかけを教えてください。


士貴智志さん(以下、士貴) 実は2年程前から、「チャンピオンRED」で連載をしませんかというお話はいただいて。いざ、何を描こうという段階になって、秋田書店の担当編集者さんと打ち合わせをしたときに、お互い好きなマンガや映画を出し合ってみたんです。共通の作品であがったタイトルが『どろろ』でした。『どろろ』みたいに雰囲気がバイオレンスで格好良い作品がいいよねという話になり、いっそのこと『どろろ』のリメイクを描いてみたいと僕の方から提案したのがきっかけです。


―――士貴先生からお願いされたんですね!


士貴  担当編集さんにそのお話をしてから、3か月後にOKの返事が来たんですけど、その間、ひょっとしたら身辺調査でも行われているじゃないかと思いながら仕事をこなしていました(笑)。
好きな作品というのもありますが、自分の作風や絵柄に一番合う漫画作品だというのも大きな要素でした。
昔から日本刀が登場する漫画を描いていますし、更に妖怪をたくさん描けると言うのは、僕という作家の"武器"の見せどころでもあるんじゃないかと。


―――持ち前の"武器"を存分に使えると。手塚作品は以前から読まれていましたか?


士貴  初めて読んだのは、中学・高校生の頃でしょうか。やはり、『火の鳥』と『ブラック・ジャック』、あとは『きりひと讃歌』が好きでした。
ただ、手塚先生の凄さを実感したのは、自分がマンガ家という立場になってその大変さを知ってからですね。手塚プロの方から、生涯描かれた枚数を聞いて驚愕しました。それだけ支えてくれた方もいたんでしょうけど、考えられない。同時進行で連載しつつ、いろんな作風の作品を描かれていたじゃないですか。そんな作家さんって、いまいらっしゃらないですよね。


―――原作の『どろろ』で好きなエピソードはありますか。具体的にどういったところが好きですか。


士貴  「万代の巻」と「人面瘡の巻」が好きです。あの話のなかには百鬼丸とどろろの立ち位置をしっかり描きつつも、すごく悲しい部分がつまっていると思うんです。
妖怪を倒さんとする百鬼丸とそんな百鬼丸を助けるどろろ。妖怪に操られ、害をこうむる村人たち。最終的に妖怪を倒して自分の身体を取り戻し、村人たちも解放するんだけど、救ったはずの彼らから拒否される......。非常に描きごたえのある話だと思いますし、自分自身、描けるのを楽しみにしています。


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村人たちに拒絶され、瀕死のどろろを抱えながら村を去る百鬼丸。無情にも雨が降りしきる。


―――ストーリー展開も気になるところですが、現時点ではどのように考えていますか。


士貴  基本的に手塚プロからは、自由に描いて構わないと言われています。 手塚先生の『どろろ』を現代の読者に対して読みやすい形にどう落とし込むかというところにも繋がるかと思うのですが、いまの段階では大きくストーリーを変えることなく、どろろと百鬼丸というキャラクターの核はブレない形で、新しい妖怪を登場させる方向でいこうと思っています。


―――新しい妖怪......!


士貴  原作では、48匹いるすべての妖怪は登場していないですよね。そこは最後までしっかり描いていきたいなと思っています。妖怪以外にも、新しいキャラクターを出さなきゃいけないところも出てくると思うので、都度、担当さんと相談しながら柔軟に行きたいですね。
あとは、琵琶法師というキャラクター。百鬼丸とは過去に会っていて、後半の頃、百鬼丸とどろろの二人に絡んでくるんですが、『どろろと百鬼丸伝』では早い段階で登場させて、語り部として配置したいと考えています。
琵琶法師を語り部で出すということは、琵琶法師からみた世界があるということで、第三者の目からみた百鬼丸やどろろの悲しさが描写できると思ったところが大きい。そこは早い段階で琵琶法師を出すべきだと思いました。


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要所要所で登場する琵琶法師。百鬼丸に対し、どんな境遇だろうと生きるべきだと諭す。


―――いろいろな角度から観るというのは、高校生時代に同人活動をされていたときに敵側の立場に立って描いたりしていた経験が生かされているのかも知れませんね。


士貴  ネームを描く上でもそうですが、いろいろな見方をするというのは、自分のなかですごく重要で。
対人関係も一緒なんですよ。喧嘩をしていたら片方の意見だけではどちらが正しいか分からないじゃないですか。両方の意見を聞いて初めて判断できる。
マンガだけではなく、普通の生活においても俯瞰して見たり考えたりするよう意識しています。


―――ご自身の絵に落とし込んで行く際、描きやすい・描きにくいのはどのキャラクターですか?


士貴  大変だけど絵的に描きやすいのは百鬼丸ですね。百鬼丸は生まれたときから業を背負って、自分を取り戻すために過酷な運命に立ち向かわなくてはいけないのに、時折見せるチャーミングな表情が非常に魅力的だと思うんです。そこも外さずに描いていきたい部分です。
1話の原稿を描き上げて、もっともっと、魅力的に描けるはずだなと思ったのがどろろ。絵的にはもちろん、表情や動きも魅力的に描きたいという欲求が強くあります。


―――百鬼丸に関しては、原作ではまだ14歳という設定なんですよね。


士貴  メディアによって、設定が違うんですよね。1969年のアニメ版だと百鬼丸は20歳くらいなんですよ。確かに、昔のアニメの百鬼丸はすごく男臭い。14歳ではないだろうって(笑)。


―――『どろろと百鬼丸伝』ではそのあたりどうなんでしょうか。


士貴  百鬼丸は16、17歳くらいを想定して描いています。どろろについても、原作ではおそらく11、12歳くらいで描いていると思うんです。作中、どろろが自分の過去を話しているときに、10歳の頃というセリフもあったので。『どろろと百鬼丸伝』の作中で時代背景をどろろに語らせているシーンがあるんですけど、それって、10歳くらいじゃないと、説得力がないというか。7、8歳くらいが話す社会情勢と10歳より上の子が話す社会情勢って、説得力が全然違うと思うので、どろろに関しては11歳くらいの子どものイメージで描こうと思っています。


―――『どろろ』は室町時代が舞台となっていますが、時代背景など作品を描くにあたり参考にしたものはありますか。


士貴  江戸時代の資料や立体物は結構残されているんですけど、室町時代だとほとんどが絵巻物になってしまうんです。調べたら地方の歴史博物館に残されているとわかって足を運んだんですが、お寺のお堂など街並みの一角がしっかりと再現されていて、とても参考になりました。
他にもいろいろな場所へ取材させていただき、撮った写真が背景作りに活かされています。基本、実際に目にしないと気が済まない(笑)。絵を描く立場としては実際観てみないと分かりにくいし、深くイメージが出来ないので、取材に行ったら様々な角度から撮影しています。


―――もともとはオリジナルを描かれていたわけですが、最近は原作物を多く手掛けられています。


士貴  原作物を手掛けている理由として、文字や文章、写真から受けるインスピレーションの方がいまは大きいというのがあります。既存の作品を読み込んで、僕のなかで湧き出るものを表現したほうが合っているなって感じるんです。
オリジナルを描く気はないのかといったらそうではないので、どこかでやりたいなとは思うんですけど。


―――新座にある手塚プロのスタジオにも訪れたそうですが、いかがでしたか。


士貴  旧アニメ版『どろろ』のシナリオを拝見したんですが、当時のお話などもお聞きしながら、手塚先生の『どろろ』とアニメ版のシナリオを見比べることが出来て、非常に有意義でしたね。
絵コンテも見せていただけるという話だったんですが、やめました(笑)。


―――え、どうしてですか。あえてシナリオにこだわるのは、なにか理由があったのでしょうか。


士貴  『どろろと百鬼丸伝』はリメイクなんだけれども、自分自身、僕という作家の中から湧き出てきたものを描きたいという思いがまずあって。
映画などを観ていても、この演出はマンガに使えるという見方をしてしまう人間なので、絵コンテを見ちゃうと影響されちゃうかな、と。

ディテイルにこだわらずにもっと質より量の方向へ行ってもよいのかも知れないんですけど、そのこだわりをなくしたら、「士貴智志」という作家ではなくなってしまう。作家としての"個性"や"武器"を失うのではないかと本能的に感じるんです。作家活動を続ける以上、取材であったり、なにかを観に行ったり、自ら積極的にインスピレーションを受けにいくということを可能な限りやっていこうと思っています。


―――最後に今回の作品の意気込みなどをお願いします!


士貴  今回のお話が決まったときは驚きました。同時に手塚先生の作品に携わる仕事を任せていただける立場にいるということが、光栄でした。
その反面、任せてもらった責任も強く感じます。ツイッターでの反響の大きさからも、日々感じる緊張感は大きくなる一方なんですけど、それらを全てのみ込むような意気込みで作品を描いていきたいと思いますので、是非、読んでいただけたら嬉しいです。



■プレゼントのお知らせ

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前編でもたくさんのご応募、ありがとうございます!

いただいたコメントは士貴先生にお伝え致します!

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■前回のインタビュー 『どろろと百鬼丸伝』連載スタート! 士貴智志さんインタビュー【前編】


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