2019年に結成20周年を迎えるロックバンドwyseと手塚治虫生誕90、双方の周年を記念したプロジェクト「wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力」が始動!
9月26日にコラボシングル『ヒカリ』が発売され、9月29日から12月8日にかけてコラボツアーを実施。
今回のインタビューでは、コラボレーションについてのお話や結成20年目を迎えたバンドについてのあれこれを、大いに語っていただきます!
wyse(ワイズ)
1999年2月14日結成、2001年12月にメジャーデビュー。2005年2月13日渋谷公会堂にて解散したが、2011年に再結成。2017年8月23日にALBUM「Breathe」で16年ぶりのメジャーデビュー。オリコンロックALBUM部門の11位にランクイン。ツインボーカルが特徴とされるメロディアスな楽曲が定評を受けている。9月26日に手塚プロダクションとのコラボレーション作品「ヒカリ」(鉄腕アトムDisc/ジャングル大帝Disc/リボンの騎士Disc)をリリースし、現在ツアー中。
―――「wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力」コラボ記念ということで、wyseの皆さんにお話をうかがいたいと思います。
(右から) HIRO(G)、TAKUMA(Vo&B)、月森(Vo)、MORI(G)
月森 はじめまして。wyseのボーカル、月森です。
TAKUMA wyseのベース&ボーカルのTAKUMAです。
MORI ギターのMORIです。
HIRO ギターのHIROです。きっと、手塚作品のファンの皆さんはwyseって誰や? となってると思うので、この機会に僕らのことを知っていただければ嬉しいです。
―――「wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力」はwyseの結成20周年プロジェクトの一環として始動しましたが、いまの心境はいかがですか?
月森 wyseは1999年に結成してから一度解散を経て再結成しているので、20周年まで早かった気がするというのは他のバンドの方と比べれば当たり前なんでしょうけれど、それでもこうしてもう一度メンバーが集まって到達できた20周年なので、純粋に嬉しいです。
TAKUMA 僕ら、いろいろ紆余曲折がありまして(笑)。ちょうど1年半前に、ずっと所属していた事務所を離れて、独立したんですよね。 自分たちで色々なことにチャレンジしたい、劇的な変化や刺激を作っていきたいと思っての選択だったのですが、その結果今まで出会えることのなかった人たちとの繋がりができ、こうして手塚プロダクションさんとコラボレーションの機会もいただけて。
―――音楽業界以外とのコラボレーションは、今回が初めてなんですよね。やはり、元々手塚治虫の漫画がお好きだったのでしょうか?
TAKUMA いや、もう、コラボしていただく相手を選べる立場にないというのがもちろんなんですけれども(笑)、手塚プロダクションさんが手塚先生の生誕90周年イヤーということで幅広いコラボをされているのを知り、ぜひ僕らともご一緒していただけないかと思ってお声掛けしました。みんな幼い頃に手塚アニメを観ていて、中でもMORIと月森はディープな話ができるくらい手塚作品が好きなんですよ。
月森 手塚先生の作品は幼い頃からあるのが当たり前みたいなものなので、いつ最初に触れたのかはもはや分からないです(笑)。 意識をして作品を読みだしたのは、結構大きくなってからかもしれない。中学から高校の時かな。当時流行っているものを読むのとは違う、自分から漫画を探しに行く時期ってあるじゃないですか。ちょっとオタクっぽくなり始めて、自分の好みが出来はじめる頃。
僕は片っ端からいろんなジャンルの作品を読んでいて、その中で手塚先生の作品も読んでいましたね。中でも『きりひと讃歌』が好きです。
月森 劇画タッチでこういうタブーじみた題材が描かれているのがショックだったんですよね。それがここ最近描かれた作品ではないというのもまた衝撃で。ここまで斬新なものを70年代に描いている手塚先生は本当にすごいと思います。
手塚作品は、音楽に近いのかもしれない。好きな音楽って、親の影響で聞いたりするじゃないですか。いつのまにか刷り込まれているような、手塚作品はそういうものに近いと思いますね。
MORI 僕も『きりひと讃歌』が一番好きなんですが、月森も好きだって今知りました(笑)。 ああいったタブー視されるような題材を、娯楽対象である漫画で描いたということが、学生の時に読んで衝撃だったんです。 僕が『きりひと讃歌』にハマった1990年代はとくにセンセーショナルな作品が注目されていて、たとえば野島伸司さんが脚本を手掛けたドラマ作品ですとか、ドギツイところまで切り込んでいくような作風が求められていたんですよね。
HIRO 小学校のときに、学校に『ブッダ』や『アドルフに告ぐ』、『火の鳥』が置いてありました。え、ここ学校だけど漫画読んで大丈夫なのかな? って思いながら読んでましたけど(笑)。
TAKUMA 漫画という概念で置いていないところがすごいよね。
HIRO 読書の一環みたいな。感受性が高い時期に読ませることによって、何を感じるかということを教育として取り入れているんだろうなって。そこまでになれる漫画ってすごいですよね。
僕は『アドルフに告ぐ』が一番好きなのですが、自分が生まれる前に描かれたものなんだっていう衝撃もありましたね。しかも、手塚先生は生誕90周年でこんなに盛り上がっていて、国民的な作品なんだなと改めて感じました。
そんな方とコラボって......いいんですか!?(笑)
―――今回のコラボでは、ニューシングル「ヒカリ」のカップリングとして、手塚作品から『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』をイメージした3曲を作っていただきました。
TAKUMA 最初に手塚プロダクションさんと一緒に音楽を作れる、となったときに、表題曲がこれしかないと思ったのがこの「ヒカリ」という曲なんです。
僕の中で「光」というのは、単純に輝かしいものだけではなくて、光が存在する時は必ず影が存在する。
誰かが影だとしたら、その人のために光になる努力をして、導いてあげる......いわば、究極の自己犠牲だとも思うんです。
―――手塚作品でも、光や影、自己犠牲というのは普遍的に描かれているテーマでもあります。
TAKUMA そうですよね。自分たちのなかでは、「光」や「希望」や「勇気」といったイメージが手塚先生の作品にはありました。それをテーマとして曲にしたい思いがあり、「ヒカリ」が出来上がりました。
月森 音楽でコラボレーションさせてもらうとなると、wyseファンはもちろん、手塚先生のファンも、そしてどちらもよく知らないという方の眼に触れる機会も多くなると思うんです。誰もが知っていて、面白そうだな、楽しそうだなと思ってくれるような作品ということでこの3作品を選びました。 僕が『きりひと讃歌』が好きだからって曲にしても、そうはいかないと思うので(笑)。
鉄腕アトム Disc「ヒカリ / 僕のヒーロー」ジャケットイラスト
TAKUMA 実は、『鉄腕アトム』のイメージ曲である「僕のヒーロー」の構想が一番初めに思いついて、テーマも明確にありました。
ポップでキャッチーな曲調で聴きやすい反面、歌詞に込めたメッセージ性は、逆にもの悲しいものにしました。よく聞いたらあれ? と、なにか引っかかるものがあるような。
―――『鉄腕アトム』も、可愛らしい絵柄で描かれてはいますが、題材は人間とロボットの共存が引き起こす問題が描かれていて、メッセージ性が込められた作品です。
TAKUMA 僕がこの曲を作るなかで大事にしていたテーマがあって。たとえば、幼い頃に『鉄腕アトム』を観て、アトムのオモチャで遊んでいたとしても、年月が経って大人になればオモチャで遊ばなくなるし、当然生活も変わっていく。
それでも、思い出となったアトムはいつまでも心にいて、「いくつになっても僕のヒーローはアトムだよ」と言えるような存在でもある。アトムも「いつまでも僕がついているよ」と言ってくれるような、そういう関係性が永久に続けばいいなという思いを込めたのが「僕のヒーロー」なんです。
アトムって、誰もが知っていますよね。手塚作品についてはまだまだ未熟な僕でもこれだけアトムを知っているってすごいことだと思うんです。誰にとっても、アトムってそういう存在になり得るんじゃないでしょうか。
リボンの騎士 Disc「ヒカリ / Blue Moon」ジャケットイラスト
TAKUMA 一番苦労したのが、この「Blue Moon」なんですよね~。
―――「Blue Moon」は『リボンの騎士』が題材となっており、女性目線の曲となっていますが、そういう意味で難しかったのでしょうか?
TAKUMA というよりは、時代背景の表現だとか、どんな音が聞こえたらその世界を一瞬で感じられるのかを見極めるのが難しかったです。ピアノの音色なのか、弦楽器なのか、フルートなのか......。自分の中での『リボンの騎士』のイメージは、繊細で、きれいで、ロマンティックな物語だけれど、そこにはサファイアの男性の心と女性の心で揺れる感情が渦巻いている。そういう意味で一番難しいなと思ったんです。
―――手塚るみ子は、「Blue Moon」は原作の雰囲気をうまく曲に表わしていて素晴らしい、ぜひ現代で『リボンの騎士』がアニメ化されたらぜひ主題歌に! と絶賛していました。
TAKUMA もう、光栄です。ありがとうございます。
サファイアの持つ二面性は、男性と女性の心が共存しているというよりも、ふたつの心は相容れないものというか、自分のなかにはどちらの心もあって、それは理解しているけれども認められない......。そういうもどかしさがあるんじゃないかなと思うんです。
歌っている僕らも、Aメロでは月森、Bメロでは僕、と入れ替わって歌うようにしているんです。そしてサビは2人で歌うことでサファイアの共存するふたつの心を表現しています。一方は女性言葉の歌詞なので、そこも注目してほしいですね。
―――歌い分けで女性の心と男性の心を表現しているのは、ツインボーカルならではですよね。
月森 2人ボーカルがいてラッキーだったよね。
TAKUMA ブルームーンって、見ると幸せになれる、願いが叶う、なんて昨今言われていますよね。そこにもあやかって、叶う夜だからこそ自分のホントの自分の気持ちがこぼれてしまう、そんなサファイアの心の内を曲に込めました。
ジャングル大帝 Disc「ヒカリ / Link」ジャケットイラスト
TAKUMA 「Link」は、曲がはじまった瞬間に、レオたちが草原を力強く走り、駆け回っている絵が浮かぶような曲調を目指しました。イントロのリズムがジャングル・ビートでパーカッションを入れ、3曲のなかでは一番ギターのタッチを強くしています。
過去と現在そして未来へとリンクしていくものがあるというテーマがあって、
この曲の中で「君は僕だ」と歌っているのは、今生きている僕たちはこの先の未来を作るわけですから、自分の行いが未来の自分を担っていくんだよ、という意味を込めています。
―――曲名の「Link」というのも、そういう意味が込められているんですね。
TAKUMA 手塚治虫先生とwyseが寄り添って出来上がった曲が、皆さんにどういうふうに聴こえて、印象に残るんだろうかというのがとても気になります。
―――曲はもちろん、手塚キャラとwyseメンバーが共演するジャケットイラストも注目ポイントですよね。
「ヒカリ」は全国のCDショップにて発売中! 3形態ともに価格は2500円+税。絵本のようなジャケットが目を引きます。
月森 企画が決まってから、MORIと手塚プロダクションさんの本社へ打ち合わせに行ったんです。思い切って僕たちを描いていただけませんかと相談したところ快くお返事をいただきまして。嘘でしょ!? って、ねえ。
TAKUMA メンバーみんなびっくりですよ(笑)。
月森 手塚キャラクターと自分たちが同じ世界で遊んでいるようなイメージでラフを描いたら、そのまま採用していただけました。怒られるかなと思ったんですけど......。(笑)
僕の主観が入ってしまわないように、ラフの段階ではあえてメンバーの顔を描かずに提出したら、そっくりの似顔絵を描いていただけて嬉しかったです。
MORI 特徴を捉えていただいてますよね。楽器も実際に使用しているものと同じで、描くの大変だったのではないかなと。僕たちの音楽やライブ映像を調べながら描いていただいたみたいで。本当にありがとうございます。
コラボイラストは、コンドルタクシーの提供による「wyse TAXI」にもラッピングされ、東京都内を運行中。
白い車体に白いタイヤホイールは、今回のコラボのための特別仕様だそう。運行期間は、約1年を予定とのこと。
―――ロゴとパッケージのデザインはMORIさんが担当されたんですよね。
MORI そうですね。普段から、僕と月森はデザイン担当なんですよ。普段CDジャケットやグッズをデザインするのとはまた違って、コラボレーションという前提があって、そこにどうwyseの要素をプラスするかを考えながら、ひとつひとつ手塚作品に寄り添ってデザインさせていただきました。
月森 バンド名も曲名も書いてないCDジャケットなんて、何事って感じですよね(笑)。コラボイラストを大きく見せたかったので、この形態にすることは最初から決めていました。
―――皆さんそれぞれ、クリエイティブな一面があるんですね。
MORI 月森とは高校の先輩後輩という間柄なんですけど、デザイン学科のある学校に通っていました。デザインの道にも行こうと考えていた時期もあったので、今こうして音楽とデザインが両立できる環境があるというのは、夢が2つ叶っているようで、ありがたいことです。
月森 デザインの仕事一本でやっていたら、こうして手塚先生とのコラボレーションなんて絶対できなかったでしょうから(笑)。音楽やっていてよかったなと思います。
TAKUMA 僕は15,6歳の頃から音楽しかやってきませんでした。その中で出会ったのがHIROで。彼は彼で、IT関連の会社で働きながらバンドをやっていますしね。
―――そうなんですか! 職場の人にはバンドのことは言っているんですか?
HIRO もちろん言ってますよ! 今回のコラボもソッコー会社の人たちに伝えました(笑)。みんな驚いてましたよ。
TAKUMA こんな感じでメンバー4人4色それぞれ個性が強すぎるので一度解散したんですよね。
全員 (爆笑)
月森 そういうことにしておきます(笑)。
―――バンドの今後の話をお聞きしたいと思います。
手塚治虫は生涯、漫画家という道を全うしましたが、みなさんは今後、wyseとしてどう活動していきたいですか。
TAKUMA バンドとしてのビジョンは、wyseがこれからもwyseであることですね。
今回コラボをやらせていただいて改めて思ったのは、ロックバンドというカテゴリーには入りますが、それよりも、僕らはどんな音楽を作れるのか、表現方法の可能性というか、チャレンジすることで自分たちの経験がどれだけ試せるのかを身を持って体験できました。それは音楽家冥利に尽きるというか、今までにないやりがいを感じられました。またそういう挑戦ができるように、しっかりwyseとして活動していきたいと思います。
HIRO たしかに、一度解散はして空白の時間がありましたけれど、ずっとこのメンバーとの距離感は変わっていませんし、この4人でやっている時間が、wyseなのかなと思います。
20周年を迎える時にあたってコラボのお話が実現しまして、それもこれから僕たちが先に進むためのひとつの良いきっかけになればなと思います。
MORI 僕らなりに、純粋に音楽を突き詰めたくてやってきた20周年でした。再結成したこともきっと何か意味があってのことだとも思っています。解散後に、それぞれが別々で進んでいる間も経験値となっていますし、その時間があったから今がある。
手塚ファンの皆さんには、これから僕らを知っていただくことが多いと思いますが、今回コラボしたことで21年目に向けての新しいwyseの形ができたと思います。これからも、純粋に音楽を楽しんで行きたいですね。
月森 僕はもう40歳なんですけど、なくなったら困るものが、僕の場合は歌だなと思うんです。生涯、漫画家を全うした手塚先生の魂みたいなものには到底及ばないとは思うのですが......。
今日もちょっと、取材の前に「Blue Moon」を聴いていて思ったことがあって。
今までのwyseの中で、こういうジャンルの曲ってなかったんですよね。わりとどんな曲でもやるバンドではありますが、それでもこうやって新しい音楽性が広がったのはとても嬉しいことです。こういうニュアンスの曲が、この歳になってからでも歌うことができるんだなって、しみじみと思いました。
手塚先生は、生涯漫画家であり続けたというお話を聞いて、俺もそういうふうになりたいと思いました。生涯、ボーカリストでいましたと言えるようになれたらいいなと思えたコラボレーションでした。
2018年9月29日、wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION TOUR『ヒカリ』の初日には、手塚るみ子が特別ゲストとして登場。
wyseと手塚るみこによるスペシャルトークの時間もあり、ステージ上でのテープカットからライブがスタートされました。
今回のツアーのために用意されコラボグッズも、充実なラインナップ!
MORIさんが手掛けた、黒を基調としたシンプルでかっこいいデザインとなっています。wyseファンも手塚ファンも、要チェックです。
コラボグッズは、公式オンラインショップとライブ会場にて販売しています。限定商品のため、売り切れの場合はご了承ください。