代役専門役者にして泥棒の七色いんこが織りなす演劇スペクタクル、舞台化が決定!
いんこ役に乃木坂46の伊藤純奈さん、いんこを追う刑事でありヒロインの千里万里子役にけやき坂46の松田好花さんを迎え、女性キャストのみで構成される舞台「七色いんこ」。
演出を手掛けるのは、ミュージカル「Dance with Devils」シリーズや『最遊記歌劇伝』など多くの2.5次元舞台を担当している三浦 香さん。
今回は、稽古おわりの三浦さんに直撃インタビューし、舞台「七色いんこ」について色々とお聞きしました!
主演のお二人からのコメントもありますので、最後までお見逃しなく!
三浦 香 Kaori Miura
玉川大学芸術学科演劇舞踊コース卒業。自身の劇団FuncAScamperS009にて脚本&演出を担当。若手演出家コンクール2003、優秀賞受賞など。
「Club SLAZY」シリーズ脚本&演出
「最遊記歌劇伝」脚本&演出
「終わりのセラフ」The Musical脚本
ミュージカル「Dance with Devils」脚本&演出
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-」脚本
「サウンドシアター TENCHU 天誅〜闇の仕置き人」演出
フジテレビ系列「乙男」スピンオフ「湿男」脚本
NHK BSプレミアム「彼女のこんだて帖」(角田光代 原作)脚本
―――『七色いんこ』は演劇を題材にしたお話ですが、三浦さんは読んだことはありましたか?
三浦 香さん (以降、三浦)
2.5次元の仕事が多いので仕事関連の作品は読むのですが、そこまで頻繁に漫画を読むというわけではなくて……『七色いんこ』も、申し訳ないのですが、知りませんでした。
今回、舞台化のお話をいただいてから読ませてもらって、すっごく面白かったです。それと同時に、漫画家というイメージしかなかった手塚先生がとても演劇に詳しくてびっくりしました。
ストーリーはもちろんですが、“役者とは”という根本的なところが描かれていて、演劇人にとってスタンダードで大切なことを再確認するような気持ちで読みました。ズキズキくる言葉がたくさん出てくるんですよね……演劇人は皆読むべき作品だと思います。
私が読んだもの(秋田文庫版)には俳優の寺脇康文さんの巻末インタビューが載っていたのですが、そこに「絶対舞台化してほしくない」って書かれてあって、ヤバイ、抗ってしまった……と思いました(笑)。
たしかに、舞台をテーマにした芝居というのはむずかしい題材ではあります。
―――舞台「七色いんこ」はキャストが全員女性で、ミュージカル仕立てとうかがっています。むずかしい題材ということですが、どう演出されるのでしょうか?
三浦
ミュージカルというよりもショーのような形でみせようと思っています。劇中には歌やダンスもあって、たとえば「ハムレット」を演じるシーンでは、「ハムレット」の台詞を喋るというより、音楽とダンスの力を借りて表現します。いんこが芝居をしてお客さんから喝采をもらえるシーンも、ダンスで盛り上げるような。
―――音楽とダンスが肝になりそうですね。
三浦
今、楽曲も作っていただいているんですが、ブラスバンドやスカのような曲調でお願いしているんですよ。ダンスもファンキーで、けっこう激しめで。
悲しいシーンだから悲しい曲を流すのではなく、あえて盛り上げてしまうような、そういう手塚作品のもつアイロニーを出せるような演出も考えています。
手塚作品の中でも、『七色いんこ』は色使いがレトロでビビッドなイメージがあるので、そういう世界観を舞台で観せたいと考えています。連載されていた70年代当時の劇場の雰囲気を出すために、あえて電球そのものの色が出るような古い照明を使用するとか、衣裳も現代に寄せるのではなく、60年代・70年代のフレンチポップのような雰囲気を目指しています。
―――いんこの髪型がレトロでおしゃれなボブにアレンジされていましたね! 舞台にも、何か仕掛けがあるのでしょうか?
三浦
舞台上には、大きなクローゼットが2つ並んでいて、楽屋のように見立てています。クローゼットに衣裳がすべてかかっている状態で始まって、いんこたちの着替えや髪形を変えるところも舞台上で全部見せようっていう感じで……。
―――な、生着替えですか!?
三浦
すべては脱ぎませんけどね(笑)。
『七色いんこ』の世界を、裏側から見ているような感覚をお客さんに楽しんでもらえるような演出を考えています。
場面のテーマによって使う色を変えていき、いんこと千里の織りなす人間ドラマを7色で表現していきます。
―――まさに、タイトルを体現するかのような演出ですね! 色使いにも注目したいところです。
(取材時は)稽古がはじまったばかりですが、感触はいかがですか?
三浦
実は、女性のみのカンパニーを演出するのは今回が初めてなんです。ついこの前まで上演されていた『最遊記歌劇伝-異聞-』もそうですけど、いつもは男性のみのカンパニーばかりで。
―――やはり、それぞれ違うものなのでしょうか。
三浦
全然違います! 男性の役者には男性の持つパワーがありますが、女性の役者は精神面から湧きあがってくるものを体で表現できるんですよね。それに、指示をすると飲み込みが早くて、求めているものをすぐにくれて、それが新鮮で楽しいです。
―――いんこ役の伊藤さん(乃木坂46)、千里役の松田さん(けやき坂46)はいかがですか?
三浦
いんこはずっと喋り続けているわけではなくて、ニヒルに佇んでいる時が結構あるじゃないですか。伊藤さんはそういうシーンでも存在感を出せる子ですね。いんこの持つミステリアスな雰囲気を表現しようとしているのが、演技を見ていて伝わってきます。
松田さんは、屈託のない、混じりけのない感じが千里っぽいんです。じゃじゃ馬で、気付かないうちにいんこに恋をしてしまっていたり……そういうちょっと天然な部分も備わっていて、ナチュラルに演じられていますね。これから、稽古でさらに引きだしたいと思います。
―――三浦さんは、多くの2.5次元舞台を手掛けていますが、原作のある作品を舞台化するにあたり心がけていることはありますか?
三浦
役者自身の呼吸を引き出すことです。アニメなどがすでにある作品だと、どうしても役者が声優さんの真似をして綺麗に喋ろうとか、声を寄せようとしてしまうんです。そうすると、演技中も役者本人の呼吸を止めた芝居になってしまうので、「そんなに格好つけてどうするの?」と毎回ツッコんでしまいます。
キャラクターとしては美しくても、劇場に来てくれるお客さんは格好いい姿だけを求めているわけではないと思うんです。泥臭さを感じるような、リアルな芝居をしてこそ、お客さんに響く。
なので、「鼻水を出せ!」とか、「もっと汚い顔を見せろ!」とかつい言ってしまいますね。
「七色いんこ」でも、これからの稽古で激が飛ぶかもしれない (笑)。きれいに演じるな、と。乃木坂46、けやき坂46の子たちが汗ダラッダラで演じる姿、それを見せられるのが生もののいいところですし、彼女たちのそういう部分を引き出したいです。
『七色いんこ』を読んでいてこれと同じようなシーンが描かれてあって、ハッとしたんですよね。私が一番好きな、「シラノ・ド・ベルジュラック」なんですけど……。
三浦
「天才的にうまい役者だが 個性がないのだ」「自分のものがないんだ」……。私もそれ言ってるーー! わかるーー! って。
実際、私は演技の練習よりも、キャラクター作りのエチュードばかりやっています。稽古やエチュードで不条理なことばかりさせると、だんだん皆の顔つきが変わっていくんですよね。役の凄味が出てくる。私はそういうのが大事だと思っているので、「七色いんこ」ではどういうエチュードをさせようか考え中です。
「シラノ・ド・ベルジュラック」で、あのいんこが最後のカットで泣いているのがすごく印象的だったんですよね。最後までクールでミステリアスなキャラクターでいくのかと思いきや、胡月さんという演劇の神様を前に急に人間味が出はじめて……。
もしいんこが完璧な役者だったら、演じるのがすごく難しかったんじゃないかと思います。胡月さんにもトミーにも怒られた過去があって、泥臭い一面を見せてくれたから、いんこという人物を掴めたというか。
三浦
もう一つ、とても好きなシーンがあるんです。おでん屋のおじさんが筋金入りの演劇ファンで、胡月さんと屋台で飲み交わすシーン。これって、理想だと思うんですよ。
2.5次元舞台って、男性のお客さんがとても少ないんです。ブロードウェイは、超ラフな格好したおじさんがたくさん観劇しに来ているのに。
―――たしかに、とくに2.5次元は女性ファンが多いですよね。
三浦
なので、おでん屋のおじさんに観てもらえるような2.5次元舞台を作りたい!(笑)。
「あんたが演出やるなら、アッシがおごるよ!」なんて、言ってもらいたいですね。
―――演劇話とおでんを肴に一杯……最高じゃないですか!
それでは、最後に舞台への意気込みをお願いします!
三浦
この白黒の世界にちゃんと色彩をつけて、私たちのカンパニーでやる「七色いんこ」はこういう形です、というのを責任をもってお届けしたいと思います。ぜひ、見に来てください!
―――けやき坂46の松田好花さんと共演ということで、はやくもファンの間では話題になっていますね。
伊藤
最初は、『七色いんこ』という作品名だけ聞いていて、手塚治虫先生の原作というとても大きな作品ですし、しかも初めての主演なので、作品が大きいがゆえに不安が大きかったし、本番まで時間もあまりなく、できるかな……と思っていました。でも、後日、けやき坂46の松田さんとの共演で、キャストの方には何人も知っている方がいましたし、演出の三浦さんの作品も大好きなので、皆さんのお名前を見て、大丈夫だなと自信がついたというか、安心しました。
―――三浦さんをご存知だったんですね!
伊藤
はい! わたし、三浦さんの『Like A(ライカ)』という作品が本当に好きなんです。
―――今回は初主演で、初の男役ですが、実際に稽古がはじまってからの感触はいかがですか?
伊藤
この前、ビジュアル撮影をしたんですが、普段は女性らしく決めるポージングばかりなので、腰をくねらせないで、とか男らしい立ち方をして、とか言われても全然わからなくて……。
―――普段のポージングの癖が出ちゃうんですね。
伊藤
そうなんです(笑)。 前回は「三人姉妹」という舞台に出させていただいたのですが、それも作中で女性が男性役をやっていて。キャストに元宝塚の方もたくさんいらしたので、その時の稽古の動画を見返して、研究をしています。
今はダンスや歌を練習しているのですが、男らしさを意識しつつ、三浦さんにもご指導していただいています。
―――ダンスも歌も、アイドルの時とは全然違うものなんじゃないかと思うのですが……。
伊藤
全然違います! 声の出し方も意識して低くしているので、腹筋に効きます(笑)。
いんこは、ミステリアスに演じたいと思っているんです。アンニュイでミステリアスな人って、目をカッと開いていなくて、眠たげな表情をしているイメージなので、最近はずっと、そういう表情を意識するようにしています。
―――『七色いんこ』、読んでみてどうでしたか?
伊藤
わたし、漫画を読むのがあまりうまくなくて、コマをどう追えばいいのかわからなくなるんです。でも、『七色いんこ』はすんなり読めました。内容が面白いのはもちろんですけど、絵が見やすくて食い入るように読んでしまいました。
いんこって、クールぶっているくせに茶目っ気が出る時があるじゃないですか。そういうところにキュンとしますよね。
―――最後に、舞台への意気込みをお願いします!
伊藤
初の主演、初の男役、『七色いんこ』という大きな作品ですが、キャストさんそれぞれの持つ色がとても強いので、私もそれに負けないように、自分の色をだしつつ、カンパニーをまとめられるように頑張ります!
―――今回、『七色いんこ』への出演が決まった時の感想はいかがでしたか?
松田
まず、舞台への出演が決まったことにも驚きましたし、(伊藤)純奈さんに次ぐヒロイン役と聞いて、舞台はまだ1度しか経験がなかったので不安でした。
以前、けやき坂46のメンバー全員で「あゆみ」という舞台作品をやったんですけれど、そのときに犬の役とか、いろんな役をやらせていただいて、演技って楽しいなと思ったんです。こうやって再び演技の機会をいただいたからには頑張りたいと思います!
原作も役が決まってから読んだのですが、すごく面白くて。連載当時はもちろんのこと、時代が変わった今でも楽しめる色褪せない作品ですよね。
―――の役どころについては、いかがですか?
松田
元スケバンで、口調も荒々しい感じで……普段はそういう言葉づかいをしないので、脚本にあるような荒っぽいセリフを言えるのは楽しそうだなと思いました。
―――京都生まれの松田さんのはんなりした雰囲気からは想像しにくいです……!
松田
え~、本当ですか? 性格的には、さばさばしている方ですよ(笑)。
けやき坂46にいる時とはまた違う姿を、ファンの皆さんにも楽しんでもらえると思います。
―――演じるにあたり、気を付けていること、こだわっている点はありますか。
松田
刑事なので、動きの機敏さだったり、ダンスや歌もあるので、そこでもキャラクターの色を出せるようにしたいです。
原作ファンの方にも喜んでもらえるように、舞台を観て私のファンになってもらえるような、そういう舞台にしたいと思います! キャストが女性のみなので、女性ならではの力強さや表現も体感してほしいです。
舞台「七色いんこ」
期間:2018年10月4日(木)~10月8日(月・祝)
会場:AiiA 2.5 Theater Tokyo
原作:手塚治虫
脚本:畑 雅文
演出:三浦 香
主催:ネルケプランニング、Y&N Brothers
公式サイト:https://www.nelke.co.jp/stage/nanairo-inko/
(C)舞台「七色いんこ」製作委員会