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虫ん坊 2013年8月号 特集3:日本生まれのロボット、宇宙へ!

虫ん坊 2013年8月号 特集3:日本生まれのロボット、宇宙へ!

左から、株式会社電通 西嶋頼親さん、東京大学 先端科学技術研究センター・株式会社ロボ・ガレージ 高橋智隆さん、トヨタ自動車株式会社 片岡史憲さん 高橋さんが持っているのがKIROBO、片岡さんが持っているのがMIRATAです。

 手塚治虫がマンガの中で描いてきた夢を実現したい、そう考えた日本の会社4社(株式会社電通、東京大学 先端科学技術研究センター、株式会社ロボ・ガレージ、トヨタ自動車株式会社)の共同プロジェクト「KIBO ROBO PROJECT」。人間と会話し、時にはその仕事を手伝ったり、心の癒しになったりするような、アトムのような存在を目指すロボット“KIROBO”が、いよいよ8月6日に、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられる「こうのとり4号」に乗って宇宙に飛び出します! 国際宇宙ステーション内に長期間滞在する若田光一宇宙飛行士の助手ロボットとして活躍する予定のKIROBOと、地球上からそのサポートを担うMIRATAは、某日の記者会見で初めて姿を見せました。
 今月の虫ん坊では、この「KIBO ROBOT PROJECT」の記者会見のもようをご紹介します。





 関連情報:

きぼうロボットプロジェクト WEBサイト




●株式会社電通 西嶋頼親さん

虫ん坊 2013年8月号 特集3:日本生まれのロボット、宇宙へ!

 「KIBO ROBOT PROJECT」とは、日本のものづくりと、子どもたちの未来に希望を与えたい、という趣旨で始まったプロジェクトです。JAXAの協力のもと、今夏、種子島宇宙センターから国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられ、若田光一宇宙飛行士との会話実験を行う予定です。
 このプロジェクトは2010年に私と高橋先生との間で構想していたもので、JAXAによる試験を経て、実現に至りました。
 今、子どもたちが手放しで喜ぶような夢を、提供することができているでしょうか? 私たちは自分が子どもの時に描いた、手塚治虫さんが描いたような未来に対する夢を、日本の今の技術で実現したい、と思い集まりました。世界ではじめて、宇宙で活躍するロボットを開発した国として、日本の子どもたちが宇宙を見上げてワクワクするような夢を提供したい、と考えています。

 ロボットの名前は「KIROBO」。8月4日に種子島宇宙センターから、「こうのとり4号」に搭載されて打ち上げられ、予定によれば12月には、実際に若田宇宙飛行士との会話実験が行われるそうです。
 会話実験は自立的にロボットが発話する実験以外にも、地上からの遠隔操作で情報を送る実験も予定。そのため、ロボットは宇宙にいる「KIROBO」の他、その相棒とも呼べる地上で活躍する「MIRATA」というロボットも開発されました。


●東京大学 先端科学技術研究センター・株式会社ロボ・ガレージ 高橋智隆さん

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 ロボットに対する期待というものは現在非常に大きいのですが、その中でも、物理的な作業をさせたい、という点にばかり今までは注目が集まっていました。しかし、ヒューマノイド・ロボットが可能な事としては、コミュニケーションによって人と繋がることで、その先に新しいロボットと人との関係・サービスがあるのではないか、と考えています。
 今までもロボットのスムーズな動きや外観、コミュニケーションに焦点を絞って、さまざまなロボットを開発して参りました。
 このようなロボットを開発してきた背景には、近年のスマートフォンの普及があります。
 スマートフォンを使って、皆さんは友人と話す他、いろいろなアプリケーションを使ったり、家電などを動かしたりできるようになりました。特に最新機種では、音声認識が可能になり、音声のコミュニケーションでの操作も可能となりましたが、周囲を見るところでは、なかなかその機能を使っている方は少ないように思います。やはり、四角い箱に向かって話しかけることに抵抗感があるのでは、と考えています。もちろん、バーチャルなキャラクターも登場していますが、やはり親しみやすさの点では不満を感じます。これからは、リアルな身体性が求められるような方向に回帰していくのでは、と思っています。
 また、現在では家電の機能が複雑化し、人間がそれを操作しきれないという状況が生まれています。そういった家電を操作するための情報ハブとして、ロボットが有効ではないか、とも思います。日頃からロボットとコミュニケーションを取ることで、オーナーのパーソナリティを蓄積し、よきパートナーとなるような存在を模索しています。
 今回のプロジェクトでは、ロボットの外観や動きなどを、どのようにしたら親しみやすく、会話しやすいものになるのか、というところを研究し、開発しました。動きはもちろん、例えば会話における間などもデザインしています。
 今回のプロジェクトで、実際に人とロボットが会話をするところを世界に発信していきたいと考えています。日本ではすでにマンガにおいて、人がロボットと自然に会話をする、ということが描かれており、違和感なく受け入れられる土壌がありますが、海外においてはまだ
 プロジェクトの成果を踏まえて、15年以内には、一人一台、相棒のようなロボットを持っている、というような近未来の実現が出来れば、と思っています。


●トヨタ自動車株式会社 片岡史憲さん

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 私達トヨタ自動車では、ロボットの音声認識技術や、自然言語による知能化を担当しました。
 弊社が当プロジェクトに参加した狙いは、弊社にはパートナーロボット部という部署がもうけられ、人とロボットが共生する未来社会を目指しています。その点で高橋先生と共鳴するところがありました。また、今回の実験で得られる成果が、私達にとっても有意義なものとなる、と考えています。
 当プロジェクトで活躍するロボット、「KIROBO」と「MIRATA」が背負ったミッションは、国際宇宙ステーションでの若田宇宙飛行士との会話実証実験です。「KIROBO」が実際に宇宙に旅立ち、宇宙という夢のあるフィールドで、人とロボットが共生する未来社会を想像してもらい、そんな社会の実現に希望を感じていただきたい、と思っています。
 「MIRATA」は地上にとどまり、「KIROBO」のバックアップクルーとして、また本プロジェクトの広報として地上のいろいろな場所で会話デモンストレーションを行うなどの活動を予定しています。
 人とロボットが交流する際に大切なのは、古来より日本で大切にされてきた「和」の心だと思います。その中でも、おもてなしの心と、思いやりの心が大切だと考えています。「KIROBO」と「MIRATA」にも、そんな「和」の心を宿したいと考えて開発しました。
 そんな和の心の具体的な例として、「KIROBO」には「話し上手」「聞き上手」「覚え上手」という3つのファクターを重視して搭載しています。
 対する「MIRATA」は「KIROBO」の能力に加えて、さらに色々な経験を蓄積して成長する能力が備わっています。これからいろいろな出会いを通して、知識を習得して成長していきます。
 人と共生するには、賢さとともに優しさも必要です。KIROBOとMIRATAが成長してゆくことによって、賢い頭と優しい心を持った、未来のロボットが実現するのでは、と考えています。
 私達プロジェクトチームも、「和」の心を大切に、チームワークと思いやり、調和を持って取り組むことで夢の実現に向けて更に大きな成果に繋がっていけるのではいか、と考えております。



 記者会見では、実際にKIROBOとMIRATAがお披露目され、登壇者と会話をするシーンもありました。


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お披露目されたMIRATA(左)とKIROBO(右)

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高橋さんの声に反応して立ち上がったりもできます(MIRATA)


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 MIRATA・KIROBOともに顔認識機能がついています。こうして目を覗きこんで話しているところを見ると、本当に小さな子どもに話しかけているみたいな感じがします。


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 8月4日にはいよいよ宇宙に旅立つKIROBO。今後の展開が楽しみです!






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